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今 ここ

忙しい一日だったが、とりあえずやるべきことをやり切る。そりゃまあ、人様の健康、下手すると命に関わるので。

それでも昨日から新しいナースさんが入ってくれたので喜んでいた。

週二日しか来ないそうだけど、少しは助かる。

と思ったら、そうではなかった。

どこでも業務のやり方や順番というものは違うものだけど、ある程度の年数、キャリアを重ねたナースたちには、ある程度の共通認識がある。

ところがこの方は、違った。
キャリアが長い割には何も知らない。

あと致命的なことに、とても急がなければならない時に副業の話を始める。いや、そちらが本業でこちらが副業なのかも知れないが、そんなことはどうでも良い私たち。

先輩ナースが”とにかく、これを覚えてくれ。”と言ってもどこ吹く風。

だいたいこういうのって初日で分かる。
案の定、二日目もそんな調子だった。

話を聴いてあげようとするが、誰一人として留まることが出来ない。そう、やるべきタスクがあるから。

最初は女優さんをやっているというような話だったので、休み時間に話してくれる限りは、会話に乗っていた。それで『私の知り合いも二人舞台女優さんをやっている人がいます。』という話をすると
『そういう人たちとは違います。私はもっとこう・・・なんちゃらかんちゃら・・・』と言っていたが、物凄く短く訳すると演技を教える人らしい。

そうですか、それは素晴らしい。

が・・・、もう休み時間は終わったのでその話止めて仕事覚えてー!と、皆は思う。先輩ナースたちも焦り始めている。

が、彼女はもう一つの仕事の話を止めない。

こういう人、職場以外でも見かける。
心が『今ここ』に居ない人々。
おそらくは、もう一つの方の仕事をしているときは『私はナースなので、あなた方とは違う』というニュアンスのことを喋っているんだろうなと容易に想像がつく。

私はダブルワークをやっていた時代も(今の時折セッションやったり、オーダーの天然石アクセサリーを作ったりもしているが)、こういうことはしなかったな。

今目の前にあるやるべきことをやらないと、ある程度その坂の先に登らないと、次の光や場所は見えて来ないものだからだ。

ところがこの手の方々は、冬山に居て乗り越えなければならない時に夏の海の話をし、海で遭難しかけているときに山の極意を語り出すような人だ。(要するに、今、それ、関係ない。)

今この時を大切にしない人は、何がなんだか分からないうちに年老いて行く。年老いて行くのは、ハッキリ言ってとても良いことなのだが、目の前の真実から逃げて付加価値の中だけに自分を置いていると、やがては全てが中途半端で、どの物語にも入っていけなくなる。

それは、趣味を多く持つこととはちょっと違うのだ。

その人がやった支離滅裂な薬の並べ方を、先輩ナースと共に夜遅くまでやり直しをしていた日に、こんなことを思った。

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