見出し画像

看護師の女優さん

今日は4人ものナースが配置されていたのだが、定期診療の先生たちが4人も来る日。
ここが特養と違うところなのだなあ。特養だと配置医の先生は基本一人なのだが、この有料老人ホームは、ご入居者さんたちが富裕層のせいなのだろうか。それぞれ違うお抱えのドクター的な人々がやって来る。これは大変だ。対応する方も忙しい。

しかも、今日から新しく入ったナースさんの教育係につかされた。私だってまだ一か月なのに、いったい何故。

そうして自分より身体が大きな新人ナースさんとカルガモ親子のように行動を共にしていたのだが、この子鴨の方が後ろからあれこれ指導しているという図。

そんな時、フロアのテーブルの向こう側で、訪問診療のドクターのお付きのナースさんが「Ohzaさん!!!」と声をかけて来る。

え?何?誰?と思ったら、前の施設の配置医の先生のところのナースさんだった。出産してからは、そのクリニックを退職されていたが、何と、今は訪問診療に勤めていらしたのね。

東京都は広いので、この偶然には驚いて立ち止まってしまった。「お久しぶり。お子さんはもう何歳になりました?」と訊くと「40です!」と答えて来るので大爆笑。
「あんたの歳やない!」

「え?なんでここに居るの?え?じゃあ、あそこに行っても、もうOhzaさんは居ないってこと?嘘でしょ?残念だ。(←もしかして、そこに転職しようと思っていらしたのかも知れない。)」等色々訊いて下さったので簡単に答えたのだが、何せそうそう話し込んでもいられない。
また再会できるということを喜んで、とりあえずはバイバイ。

ところが、そのナースさんと先生が立ち去った後、今度はうちの主任ナースが色々訊いて来られるので色々答えていたのだが、どうやら主任さんは、先ほどのナース、Tさんのことが大好きらしい。

Tさんについて色々訊いて来られるので「出産なさってからは多分辞めていると思うけど、あの方は舞台女優なんですよ。オーラがありますでしょ?」という話をしたのだが。

「観たい!Ohzaさん、一緒に連れて行って下さい!」と仰る。

いや・・・、それが、以前にも何度か招待いただいたんですが一度も行けてなくて。
それに先ほども言いましたけど、今は子育てで舞台に立てないと思いますよ。もし再会なさったら一緒に行きましょうねと約束。

そうだった。この主任さんは舞台好きで、一人で観に行ってしまうくらいだと、いつぞや話して下さった。
舞台が好き、Tさんが好き。それでTさんがやっている舞台と来た日にゃー、絶対行きたいですよね。
また再開してくれると良いのですが、今度訊いてみましょう。

***

そう言えば、つい数日前、訪問入浴をやっていた頃に知り合ったナースさんからもラインが来た。

こちらも舞台女優をやっていらっしゃる方で、その講演は海外でも絶賛されているという。←こちらも何度もご案内いただいたのに、一度も行けていない。
当時、白衣姿なのに坊主頭で出勤して来たナースさんで、目が釘付けになったのを覚えている。

「なんで、坊主?」

「舞台やっているんです。役作りのために今はこの頭です。」と言うのが初めての会話だった。

その方が来月吉祥寺のとあるホールで主役を張るという。そのご案内だった。

そんな話をしていたら、目の前の主任ナースさんが「行きたい!観てみたい!一緒に行きましょう!連れて行って下さい!」とのこと。

「・・・・・。Tさんのようなタイプの美人さんではないし、劇の内容が小難しいですけど大丈夫ですか?」と思わず訊いてしまう。(これは、彼女の舞台を見に行った介護ヘルパーの子の感想から得た印象に過ぎないけど。)

それでも行きたいと仰るので「じゃあ、チケット取っておきますね。」と約束した。
その途端、すぐに施設長に勤務希望を出していらした。私の分まで。

***

舞台を観に行くというのは、映画を観に行くのとは少し違う。何となくだけど、しっかりと立ち止まり中に入って行くという印象がある。

ナースという仕事をしながら、舞台を演じるというのは凄い熱量だなあと思うのだが、たまたま別々の場所でそんな人々に二人も三人も知り合えて面白いなあと思う。
今まで誘って貰ったのに一つも行っていないというも不思議だが、急にうちの主任と行くことになったというのもまた不思議。

少し楽しみだなと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?