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静かで強い風

この施設に来てから春が来て梅雨が来て、夏が来た。

春は桜の飾り付け、それが過ぎたら紫陽花やパラソルやデンデンムシや雨の雫。
その次は七夕飾り。

そして今は夏祭りの飾り付けを始めている。

風鈴、提灯、金魚掬い。

皆さん忙しい最中、利用者さんを楽しませようとする人と、『そんなことして何になる。とにかく事故を起こさないようにするだけ。誕生会も中止にすれば良い。』と言う人に分かれているのが今の施設。

結果、後者の人々が原因で事故を起こす。

こういったことは、他の業界や他の世界でもよくある法則だ。

本来の目的を忘れた人は、間違ったところに力を入れるか、もしくは、その両方が可能だということに目を向けない。

自分が楽しくないから世界を灰色に変えないと気が済まないらしい。

妬みや嫉みに生産性も希望も生まれない。

何かをする人の失敗を待つ心しか持っていない人のエネルギーは重い。

そんなエネルギーを打ち破り、今、施設は華やいでいる。

折り紙を折ったり、玩具の金魚や水風船のヨーヨーを水面に浮かべ、バカみたいに忙しい最中、胸の内がわくわくしている。

多分人に喜んで貰いたいと思うシンプルな気持ちが福祉の出発点なのだろう。

汗ダラダラの日に笑っている人と、人の邪魔をしようとばかりする人の明暗が分かれる。

それも丸ごと夏の景色だ。

風鈴が鳴って、車椅子の人々が一斉に顔をあげた。

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