ホッとしたら毎日が楽しいそうだ
最近、長い付き合いの大御所ナースさんが、しきりに『本当にありがとうございます。』を連発する。
何か特別親切なことをした後ならば理解できるけれど、ただ無言でPCに向かって記録を書いている最中に、背後に回って『いやあ、ありがとうございます。』などと言う。
しかも、最近使い方を教えて差し上げたラインにもしょっちゅう『いつもありがとうございます。』と。
かつては激しい喧嘩相手だったために、背後からそんなことを言われた暁には「何ですか?!ビックリした!」と怒鳴ってしまう。「なんか、急に良い人にならないで!召されてしまうんじゃないか?!って思うから。」
そうそう、持病を患っておられるというのもあって、柄にもないことを言われるのが真剣に嫌なのだ。長生きして欲しいし。
しかし、その日の午後、3年ほど前に入職した、これまた目上のナースさんと3人で居る時に、大御所様が昔話をして彼女を笑わせていた。私の鬼ぶりをネタにしておられた。
それで私もPCに向かったまま、「あなたも、人のことは言えないよおぉう~。」と突っ込みを入れた。「あの頃のあなたの言動は、スタッフ全員を震撼させていたよー。」
てっきり、このまま、どちらが鬼か?合戦が始まるのか?と思っていたら、急に、しみじみ優しい声で話し出す。「あの頃・・・いや、ついこの間まで、あたしは、すごーく気を張って生きて来たんだと思う。」と。
「舐められちゃいけない、舐められちゃいけない・・・。酷い目に合わされる・・・と焦っていたと思うんだよ。あたし。」
何か、しんみりしたムードになって来たので、これはいけない!と思い、「それでホントに私に酷い目に合わされたとか言う落ちなんでしょ?」と突っ込みを入れた。
しかし、そのペースのまま「まあ、それはあるけど、違うよ。もうずっと前から気が付いていたんだけど、あたしって守られているなあ・・・と実感したんですよ。凄く強い人に。」と言う。
どうしたもんかな、これ。このまま褒められ始めたらますます嫌だなと思っていたその時、介護の人に呼ばれて立ち去った。
そして、この場にいたパートナースさんが「私、Sさんのことは前から好きですが、最近、凄く良い顔をなさっていますね。」と言う。
”気が張っていた。”という言葉を聴いて、しみじみ、そうかあ・・・と思った。最近の彼女は、リラックスしていて、冗談ばかり言っていて、皆が愛する可愛らしい婆バになった。
そう言えば、キャッチボール仲間のIちゃんが退職する時に描いてくれた大御所様の似顔絵があったはず。どこ行ったかな、あれ。
あった、あった。猫婆ちゃん。
これを描いてくれた時期は、最初に手術をした直後で痩せていたことを思い出した。
今は丸々&ふっくらに戻ってホッとしている。
何が言いたいのだろう。私。
要するに、人と人が出会って一緒に働くなんて、生涯から見ればほんのひと時だ。その貴重さを、早くに気が付けて良かったなと思う。
だから、私も、言うことにした。口に出して、”いつも、感謝しています。”と。
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