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#05Plat Fukuoka books&cycling guideアメリカ最大の自転車都市ポートランドと街の本屋@やず本や

 Plat Fukuoka cyclingは福岡がbicycle friendlyな都市(まち)となるための様々な提案を行っていきます。
 bicycle frendlyというと「自転車にやさしい都市」となると思いますが、私は「自転車がやさしい都市」になってほしいと考えています。それは歩行者に対しても、バイクやバス、自家用車…つまりは都市に対して自転車がやさしくできる都市でありたいと思うのです。

Plat Fukuoka cyclingの目次は下記よりリンクしています。(随時更新)

0. Plat Fukuoka cyclingの描く未来
1. Copenhagenize index2019を読む
2. Plat fukuoka books&cycling guide
3. Fecebook ページ

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 「Plat fukuoka cycling guide」では本とサイクリングで寄りたいスポットをご紹介する連載になります。
 その第2回はアメリカで最もの自転車政策が進んでいるといわれる都市 ポートランドの本と福岡の本屋の紹介です。

〇モータリゼーションから一足早い脱却がどうしてできたのか 保坂展人著『〈暮らしやすさ〉の都市戦略 ポートランドと世田谷をつなぐ』(岩波書店、2018,8)

 ポートランドはアメリカ・オレゴン州の都市で、アメリカにおける環境先進都市であり、また新規起業(スタートアップ)も盛んな都市から全米の住みたい都市ランキング常に上位にのる都市です。環境先進都市として、車中心の都市構造から先取りするように公共交通や自転車政策などの交通政策と「徒歩20分の生活圏」のためのストリートデザインを都市計画で実施しています。
 そのきっかけについて本書で下記のように紹介されています。

1970年代のポートランドは、環境都市にむけた都市戦略の転換が大きく進んだ。金銭的利益と産業優先の社会から、精神的価値と人間優先の社会への歩みは交通政策にも色濃く反映する。1972年に32歳で登場したニール・ゴールドシュミット市長は「ドーナツの逆を行こう」と宣言し、自動車交通によって郊外へとスプロールするドーナツ現象の反転を呼びかける。ポートランドが目指したのは、「徒歩20分の生活圏」をつくりあげることだった。1969年には市議会で、ポートランド都市圏全体の公共交通を運営するトライメットが設立された。(1)

 市民の声とその声を聴く州知事(政治家)により、1972年に議会にて高速道路の撤去が決まりました(2)。1970年代は世界中で高速道路が建設され、「自動車中心の街づくり」が推し進められた時期です。ポートランドは先んじて、脱自動車中心のまちづくりへ転換していったことになります。そして脱自動車中心のまちづくりではトライメットによる公共交通の充実(新設や増強)と合わせて自転車道の整備が推進されていきます。

○ポートランドの自転車政策について 古倉宗治(著)『実践する自転車まちづくり』(学芸出版社)
 ポートランドの自転車政策に関してはポートランド市が2010年に公開している『PORTLAND BICYCLE PLAN FOR 2030』があり、その内容について、本書、古倉氏が研究されていますので、そちらから引用します。
ポートランドの自転車政策は大きく4つのコンセプトがあります。

①近隣住区などのまちづくりコンセプトとの連携
②自転車と高齢者、子ども、歩行者などの特定の層に対する配慮
③自転車への興味の度合いにより住民を4つのタイプに分けて広報啓発する
④市の他分野の施策に自転車の活用を入れ込むようにする

 ①は先に紹介したとおり、ポートランドは「徒歩20分の生活圏」の市民生活の実現のため、徒歩や自転車でその生活圏まで車に頼らず移動を行えるよう都市計画・住宅政策・交通計画がきちんと連携しています。この「徒歩20分の生活圏」は車に頼ることなく、基本的な生活が確保できることとなり、世界の各都市のコンパクトシティの方法として取り組みが活発です(3)。

 ②は「bicycle friendly」のための政策になります。老若男女が安全に自転車に乗れるような環境をつくる。高齢者が自転車を運転しやすい広幅員の走行環境、わかりやすい標識デザインなど、子ども達への安全教育などさまざまな層へのアプローチを行っています。今後高齢化の進む日本にとっては自動車の運転ができなくなる層が増えます。いかに生活の足を確保できるのか、自転車ができる社会問題解決力が必要と思っています。

 ③は行政の自転車の広報活動において、自転車に対する興味の度合いにより、テーマや題材をきちんと選ぶことです。通勤通学でおいても、ロードバイクからママチャリまで様々な利用形態が存在しています。きめ細やかな自転車啓発活動は一方的なマナー啓発でない、きちんとした利用促進につながるものと思います。

 ④は行政政策での自転車の位置づけになります。自転車は観光、健康施策、環境施策などに活用できる多機能性を有しています。あらゆる計画に自転車の位置づけることで、行政のあらゆる可能性のある施策に自転車の滑油を働きかけ、取り入れるように仕向けることや、既存の行政計画に新たに追加することで、様々な分野で自転車が活用されていくような行政内の環境が形成されている。
 福岡市でも自転車に関する行政施策計画はもっています。行政計画においての自転車の位置づけについては別途じっくり研究をする予定です。

○よく福岡が似ているといわれるポートランドとの違い
 福岡市はコンパクトシティ(4)といわれることが多いことやスタートアップも盛んであること、東京などの大都市圏からの移住者が多いことなど、ポートランドとよく似ているといわれ、ポートランドを意識した施策も行ってます(5)。
 一方で、昨年の福岡市早良区の藤崎で起きたご高齢者の夫婦の車による事故のように、車なくして高齢者の社会活動が成り立たないような都市構造を抱えていることが現実となってきました(6)。

 福岡市民にとって「徒歩○分の生活圏」は成立できるようにすることは現在の都市構造では難しいところがあります。それでも自転車が少しでも解決の糸口にならないかを今後の研究を重ねていきます。

〇魅力的な都市には魅力的な本屋がある『HUgE(ヒュージ)2013.2━Go!BOOKSTORE!』(講談社)

 紹介したポートランドは個性的な本屋が集積していることでも知られています。その理由としてポートランドという都市が多様な価値観をもつ人びとを受け入れてきたことなど上げられると思います。様々な価値観を許容し、共に都市に生きる上で、本屋の存在はその知識の入り口になります。

 私自身学生の頃は都内の大型書店にて大学生から大学院までアルバイトでお世話になりました。いまでもそのお店の本棚の並びが他の本屋であっても基準となって、本棚を見る目を楽しませてくれます。街に魅力的な本屋があり、そこを自転車で通うことは健康で文化的な生活と思います。

○Plat Fukuoka cyclingで静かな読書時間を"やず本や"
 健康食品企業のやずや運営の本屋と書斎空間があるのがやず本やです。
カフェスタンドもあり、六本松のcoffee manによるオリジナルブレンド珈琲があります。
 本と珈琲を自転車のバッグに詰め込んでお近くの那珂川の河川敷での読書もよし、上質な書斎空間での読書もよいでしょう。
なお"やず本や"の書斎利用は会員制ですが、会員でなくとも、書籍購入で利用1時間から利用が可能です。
 普段と違う読書空間で、本を読んだり、手書きの手紙を書いたり(やず本や"では福岡のデザイン文房具ハイタイド商品も展開)してはいかがでしょう。

写真のように街に開いたカフェと書店と読書空間と、将来さらに快適なストリートとなるであろう渡辺・日赤通りを夢みて筆者は籠って筆者は月1程度で本サイトのテキスト作成や本の読みこみで使用しております。

◆ホームページ:https://www.yazuhonya.com/

 次々回になる「Plat Fukuoka books&cycling guide」の第3回として、今回紹介のコペンハーゲンを含む、デンマークの交通政策を含むまちづくりに関する本と、サイクリングのお供に最適なドーナツ屋の紹介です○

 そして次回は「コペンハーゲナイズ・インデックス2019を読む」として、インデックストップにいるデンマーク・コペンハーゲンについて意訳と共に紹介いたします。

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〈参考文献等〉
(1)保坂展人著『〈暮らしやすさ〉の都市戦略 ポートランドと世田谷をつなぐ』(岩波書店、2018,8)15頁(一部省略しています)。47項。トライメットとはポートランドの公共交通を担う第三セクター方式のような交通事業者で、ストリートカー(トラム)や鉄道、バスなどを運営している。
(2)高速道路の撤去をした事例は、お隣韓国ソウルの清渓川が成功した事例です。日本もこのような流れがあるとよいですね。朴賛弼著『ソウル清渓川再生 歴史と環境都市への挑戦』(鹿島出版会、2011.12)参照ください。

(3)フランスの首都パリ(中心部のみmで人口200万人)でもアンヌ・イダルゴ市長は、2024年までに誰もが車ナシでも15分で仕事、学校、買い物、公園、そしてあらゆる街の機能にアクセスできる都市を目指すと宣言しています。(『IDEAS FOR GOOD-社会をもっとよくする世界のアイデアマガジン』より)。

(4)コンパクトシティの定義は様々ですが、ポートランドでは都市成長限界線(UGB)を定め、市街地のスプロール化を明確に区切ることで、農地や森林を開発から保護し、都市近郊の豊かな自然を市民が享受できています。福岡市も都市計画法の「線引き」として市街化区域と市街化調整区域を設定し、できる範囲での無秩序な開発抑制に努めています(「市街化区域とは将来的に住宅や商業などの建築を進め、市街化を進める区域」。一方で、「市街化調整区域」は原則市街化をしない。森林や田畑などの環境を維持することとした区域)。ただ日本の都市計画法の限界として、条件により、市街化調整区域での開発は可能であり、それによる市街地の拡大はいまでも続いているのが、現状です。なお筆者の家も実は市街化調整区域にあります。なぜ家を建てられているかというと、「線引き」前からすでにあった祖父母の家に住んでおり、「線引き」前から建っていた場合は、「線引き」後も、存続と建替えなどが可能だからになります。


(5)福岡市の施策の一つ「一人一花」運動は現髙島宗一郎市長がポートランドの街並みにある花壇などをみたのが始めまりです。

(6)2019年6月4日の午後7時福岡市早良区百道2丁目で発生した交通事故。高齢のご夫婦の車が逆走暴走し、交差点に突っ込んだ事故。この車に乗られていたご夫婦はお亡くなりになりました。事故前、自治会活動などで車を手放すことをためらっていたことが新聞等で報道された。村上敦氏は著書『なぜドイツのコンパクトシティが成功するのか』(学芸出版社,2017.3)いおいて団塊の世代が「自身で車に乗れなくなる年」の目安として2025年とし、それまでに高齢者層への新しい交通手段の確立への動きを急ぐよう記しています。本書はドイツの自転車政策も記載されているので、別途読みこみの上、紹介いたします。


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