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#06Copenhagenize Index2019を読む3 コペンハーゲンの自転車政策と新しい観光

Plat Fukuoka cyclingは福岡がbicycle friendlyな都市(まち)となるための様々な提案を行っていきます。
bicycle friendlyというと「自転車にやさしい都市」となると思いますが、私は「自転車がやさしい都市」になってほしいと考えています。それは歩行者に対しても、バイクやバス、自家用車…つまりは都市に対して自転車がやさしくできる都市でありたいと思うのです。

Plat Fukuoka cyclingの目次は下記よりリンクしていますので、ご覧ください。(随時更新)

0.Plat Fukuoka cyclingの描く未来
1.自転車都市ランキングコペンハーゲナイズインデックス2019を読む
2.Plat Fukuoka books&cycling guide
3.Fecebook ページ

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「bicycle friendly」の指標として、Copenhagenize Indexというものがあります。Plat Fukuoka cyclingでは「Fukuoka books&cycling guide」と交互で最新版Copenhagenize Index2019の読解を通りして、福岡がbicycle friendlyな都市となるためのヒントを探っていきます。第3回は報告書を作成するCopenhagen Design Coがあり、2019年の第1位であるデンマーク王国の首都コペンハーゲンの報告ページを紹介します。
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(以下はリンクサイト:https://copenhagenizeindex.eu/cities/copenhagenの内容を知人で国際経験豊富な横田美香さんの協力の上で意訳しております。転載等する場合は本サイトのプライポリシーを参照ください)

◆コペンハーゲナイズインデックス2019 第1位 コペンハーゲン
・トータルスコア 90.2%
・ランキング履歴 2011年 2位(1位アムステルダム)
         2013年 2位(1位アムステルダム)
         2015年 1位
         2017年 1位
         2019年 1位
・ストリートスコア 4.0
・文化スコア    3.8
・野心スコア    4.0

◇スコアについて
 コペンハーゲンは、世界で最も自転車に優しい都市として世界にインスピレーションを与え,そしてリードし続けています。それは私たちによるものではなく- まさに 平日にクイーン・ルイーズ橋に沿ってサイクリングする41,900人もの自転車ユーザーによってもたらされた結果です。カーボンニュートラル(排出ゼロ)な未来に焦点を当てながら,コペンハーゲンは自転車の時を越えても変わらぬ有効性を活用し続け、持続的な投資と,他の追随を許さない統計データで今年も首位をキープしました。
James Thoem氏、Copenhagenize Design Coのディレクター

◇得点の裏付け
 コペンハーゲンは、2015年にアムステルダムから世界で最も自転車に優しい都市としての地位を奪還しました。そして、デンマークの首都(コペンハーゲン)は2019年も首位を維持していますが、今回は非常に僅差です。アムステルダムとユトレヒトの猛烈な追い上げにより,表彰台での1位争奪戦は激しさを増しているが,コペンハーゲンは持続的な投資と無敵な統計データで今年は決着をつけました。
 過去2年間に観測された数値が、コペンハーゲンが無敵であることを物語っています:
・住民の62%は自転車での通勤または通学する
・コペンハーゲンの人々は毎日144万キロを自転車で移動します
・一人当たり40ユーロ以上の自転車インフラ投資。
・建設された(または建設中の)4つの自転車専用橋。
・167kmにおよぶ新しい地域全体の自転車ハイウェイ。
そして、2018年の地方選挙で分かったように、自動車プラットフォームを推進している政党では首位キープの可能性はありません。ただし今、私たちには(前)市長を彷彿させる誰かが必要です。

 過去10年間、コペンハーゲンは12の新たな自転車・歩行者専用橋で整備し縫い合わせ、つなげ続けてきました。
 2017年以降だけでも、市は新しいシダハウン地区とを繋ぐアルフレッドノーベル橋を開設し 、リール、ランジェブロ、そしてディボルスブロなど3つ主要な橋を新たらしく着工しました。 それら3つの橋はのちに、各方向に5.5メートル幅の自転車レーンを設け,毎日22,000人以上のライダーに対応します。また、地域レベルでは、合計2,060万ユーロの投資により、合計167km以上に及ぶ8つの新しいルート作成が可能となりました。これらのルートは改良された経路案内(サイネージ)や照明,幅広レーン,修理ステーション,およびタイマー式交差点などの快適なインフラを都心から20キロの範囲までネットワークを拡大させています。

 そして2018年の評価によると、これらのルートの状況改善が車通勤から自転車通勤への乗り換え組14%を含む,自転車通行量を最大68%まで増やしました。この他にも7つのルートが既に資金提供されており、今後数年間で構築されるため、引き続き市の自転車政策に注目してください。コペンハーゲンが特にここ20年間で築き上げてきた勢いによって集団の先頭を維持できています。
 しかし、数値からも明白であるように、コペンハーゲン、アムステルダム、ユトレヒトの間では常に接戦になるでしょう。

 「コペンハーゲンのような主要都市では自らの健康のためなのか、環境への責任から渋滞、大気汚染、CO2排出を減らすためなのかに関わらず,自転車を選択することは当然です。より多くの通勤者が自転車を選択して下さって本当に嬉しいです しかし、私たちはこれまでの様式を打ち破り、車でのレジャーを自転車や公共交通機関へと移行する必要があります。」
Karina Vestergaard Madsen氏、市長代理 (技術及び環境問題担当)

◇補足
 あらゆる規模の一連の政治決定は、将来のコペンハーゲンの自転車政策の信望に疑問を投げかけています。政府が課すコペンハーゲンへの支出制限は、インフラ拡大に影響を与えており、これからも影響を及ぼし続けます。
一方で,今回の選挙以降、持続可能なモビリティに関する強力な政治的リーダーシップは欠如しており、自転車政策への投資の優先度が低くなっています。なんと駐車場よりも優先度は低いのです。コペンハーゲンがもし今後も世界にインスピレーションを与え続けたいのであれば,この窮地から抜け出す方法を見つける必要があります。

(意訳はここまで)
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 圧倒的なインフラ整備とイノベーションで1位になっているコペンハーゲンコペンハーゲンですが、この補足にあるようにこれまでの自転車政策を揺るがすような動きがあるところが、大変気になるところです。

 コペンハーゲン市の人口は約60万人(都市圏としては約180万人)で今後も増加する予測です。COVID-19によるこれまでの都市のあり方の変化と都市の成長とともに都市政策や交通政策は対応変化していくところですが、この時の自転車の立ち位置がどのように変わってしまうのかは注目されるところです。

 コペンハーゲンの自転車政策は最初の2002‐2012年戦略が更新され、現在2025年までの戦略集として『GOOD,BETTER,BEST』が発行されています。得点の裏付けに記載されていたように、約20年をかけて、コペンハーゲンの自転車インフラなどが積み上げられていったことになります。自転車政策を含む都市・交通政策は中長期の将来像や目標を明確にして取り組んでいく必要があります。コペンハーゲンの自転車政策は単なる自転車推進政策ではなく、カーボンニュートラルやよりよい市民生活の創出などの要素が組み合うことで、都市の魅力の向上に結び付けています。こちらは次々回に集中して紹介します。

○コペンハーゲンDMOから学ぶ福岡の楽しみ方
 コペンハーゲン市DMO(1)は2017年『THE END OF TOURISM AS WE KNOW IT』日本語で「知っているとおりの観光の終焉 LOCALHOODの新たな始まりに向けて」という2020年までの戦略を発表しました。

 この戦略について、日本とポートランド、コペンハーゲンに活動拠点をもつ宇田川裕喜氏がコラム記事「観光の終焉を宣言したコペンハーゲンの歩き方 #3 一時的市民として体験するコペンハーゲン」で紹介していますので引用をいたします。

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「観光の終焉」を宣言
 2年前、大胆な言葉選びで新しい戦略を発表したデンマークのコペンハーゲン市のDMO(Destination Management Organization)。英語で45ページにわたる宣言は、「"観光時代"に別れを告げて新たな時代を築きます。2020年、その先に向けて」の一文からはじまり、観光マーケティング担当であるはずの彼ら自己批判的な内容を交えてリズミカルに展開される。
・観光客として扱われたい観光客は激減した
・観光客は一時的な市民として接するべき、コミュニティに貢献できるはずであり、それがきっと魅力になる
・コペンハーゲン市民の生活こそが観光資源
・リトルマーメイドはなにも気持ち的なつながりを生まないが、市民は生んでいる
・マスメディアでキャッチコピーを届けることより、市民ひとりひとりからストーリーが伝わっていくことが大切
・ひとりひとりの体験が伝わっていくことがコペンハーゲンのブランディングの成功指標となる
 内容としてはSNS時代を前提としたブランディング理論に基づいていて、先進的な街では他でも語られていそうな内容であるものの、メッセージ性が強く、これ自体がしっかりと目的地としてのブランディングになっている。小さすぎる人魚像、高すぎる物価、休業期の長いチボリ公園、単調な料理といった10年ほど前までにデンマーク観光をした人なら誰しも抱いた印象は変わりつつある。Nomaをはじめ世界をリードするレストランが次々登場し、街には若い人がはじめた気の利いたカフェや雑貨店がどんどん増えている。
 しかし、いわゆる「観光」の視点で見たときに競争力のある街であるかと言われると、やはりロンドンやパリには見劣りしてしまう。ショッピングをしようにも市内のデパートとショッピングモールをあわせても大きな施設は4~5軒しかなく、話題の先進的なレストランを除くと旧態依然とした食環境であり、観光名所も少ない。冒頭で紹介している宣言はつまり、「その軸では、もう競争しません」という宣言でもあるはずだ。(2)
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 福岡もいわゆる観光地のような名所や旧跡に恵まれている都市ではありません。それは戦災であったり、都市の開発によって失われてしまった物がないだけです。一方で福岡は人(市民)が最大の資産であると思うのです。人によって豊かな食生活や育まれ市民生活があると思います(3)。
 それを示す最もわかりやすいのが「屋台」と思います。地元の人も観光客も同じテーブルで交わって楽しむことができる空間がそこにあります。
他にも福岡には市民生活が観光資産になるものがたくさんあります。

 宇田川裕喜氏は上記のコラム記事の続きとして、新しい観光のあり方として、一時的な市民な感覚での観光の手段として、自転車を紹介しています。ここにコペンハーゲンが整備した快適な自転車走行環境が使われています。誰もが安心して手軽に自転車で散策できることは、一市民のように街を走ることであり、そこに住んだような感覚を味わうことで得られる体験が新しい観光なのだと思います。

 福岡では近年はアジアからの旅行者が増加してきましたが、これまではその人数のみに視線が注がれてきましたが、今後はどのように滞在してもらうかの質を考えるときと思います。COVID-19により海外からの観光客は激減しているこの時期にこそ、これからの観光のあり方もコペンハーゲンから学ぶべきところが多いと思います(4)。
 Plat Fukuoka cyclingでは「Plat Fukuoka books&cycling guide」を通じて、観光名所ではない、市民生活に根付いた場所を自転車で訪れることができるよう、紹介を続けていきます。そして、「自転車都市ランキングコペンハーゲナイズインデックス2019を読む」から、これからの福岡の自転車政策のあり方を一歩ずつ見聞を積み重ねていきます。

 次々回になる「コペンハーゲナイズ・インデックス2019を読む」は先のとおり、コペンハーゲンの自転車政策を深堀りするかたちで、コペンハーゲン市の自転車政策集の意訳『GOOD,BETTER,BEST』の内容を紹介いたします。

 そして次回は「Plat Fukuoka books&cycling guide」の第3回として、サイクリングのお供に最適なドーナッツ屋の紹介と今回紹介のコペンハーゲンを含む、デンマークの交通政策を含むまちづくりに関する本を紹介します○

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〈参考文献等〉
(1)DMOとはDestination Management Organizationの略で観光庁が観光産業振興を目的に認定する法人といわれるものです。
(2)大丸有 サスティナブルポータル 宇田川裕喜 「シリーズ【Inside/Outside】観光の終焉を宣言したコペンハーゲンの歩き方」https://www.ecozzeria.jp/series/column/column190625.html
(3)福岡の人の魅力を言葉として表現するのがむつかしいですが、福岡移住計画代表の須賀大介氏のnote「持続する社会を、どうやって本気でつくるのか?」にて、東京から福岡に移住を決めたときの本当のエピソードがとても適格に表現されています。
(4)『THE END OF TOURISM AS WE KNOW IT』についてより詳しい分析を国土交通省国土交通政策研究所発行『PRI Review 国土交通政策研究所報 第72号~2019年春季』(敬称略)井上夏穂里、中村卓央、奥井健太、林正尚、藤崎耕一(著)「持続可能な観光政策のあり方に関する調査研究(2018 年度海外調査分)」にて行われています。観光と自転車の関係については、また別途取り上げていきます。

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