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#03Plat Fukuoka books&cycling guideフランスの都市交通政策を読む@ボンジュール食堂

plat Fukuoka cyclingは福岡がbicycle friendlyな都市(まち)となるための様々な提案を行っていきます。
bicycle frendlyというと「自転車にやさしい都市」となると思いますが、私は「自転車がやさしい都市」になってほしいと考えています。それは歩行者に対しても、バイクやバス、自家用車…つまりは都市に対して自転車がやさしくできる都市でありたいと思うのです。

plat Fukuoka cyclingの目次は下記よりリンクしていますので、ご覧ください。(随時更新)

0. plat Fukuoka cyclingの描く未来
1. 自転車都市ランキングコペンハーゲナイズインデックス2019を読む
2. Plat Fukuoka books&cycling guide
3. Fecebook ページ

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「Plat Fukuoka books&cycling guide」では自転車や交通、都市政策など様々なジャンルの本と福岡をサイクリングする際に寄りたいスポットを紹介する連載になります。
第1回はフランスの地方都市の交通を含めた都市政策の本と福岡のフランス料理のお店の紹介です。

〇車社会でも居心地のよい市街地空間を形成するために都市が打つべき戦略とはーヴァンソン藤井由実 (著), 宇都宮浄人 (著)『フランスの地方都市にはなぜシャッター通りがないのか』(学芸出版社,)

 本書はフランスの地方都市の中心市街地の都市政策、交通政策に関する本ですが、現状の日本の地方都市のあり方に対する問題定義としても読むことができます。
序章より

今の日本の地方都市の多くは、自家用車を使わずに快適な生活を送るという選択肢がなくなっている。その結果、買い物でも外食でも選択肢の幅が狭くなっている。「ほどほどの楽しみ」を享受する人が多いとしても、「クルマなしでは暮らせない」とされる都市は、全体としてみれば、十分な満足度ではない。

 欧州の都市の特徴として、大中小都市でも中心市街地が居心地のよい街路空間が形成されておりとても魅力的です。
それは前回の#01で紹介した「交通という場所」をつくることで、居心地のよい都市空間が形成されているからにほかなりません。

 フランスは日本のように世界の自動車産業を有する国です(1)。そのため決して脱クルマ社会というわけではなく、日本と同レベルの所有率や移動のシェアがあります。また郊外には大型ショッピングモールもありながらも、中心市街地の魅力向上に創意工夫を行うことで「歩いて暮らせるまち」を実現しています(2)。

 「歩いて暮らせるまち」には安全な歩行者空間が必須条件です(3)。
日本以外の国では自転車は車道走行が原則です。本書で紹介されているストラスブールでは、歩行者中心の街路の歩行者空間でのクルマ、自転車に対する細かい走行規制が道路の投球で規定されていますので、紹介します。

第1「ゾーン30」:自動車と自転車は時速30キロ以下で走行する
第2「出会い空間(Zone de Rencontre)」:車に対して完全な「歩行者優先空間」で車道を歩いても横断しても歩行者が優先される。自動車は時速20キロ以下で走行する。
第3完全な「歩行者専用空間(Aire Pietonne)」:自転車は歩行者専用空間に侵入できるが、時速6キロを超えてはならず、歩行者が必ず自転車に対しても優先権をもつ。

 第3は日本でも商店街の中でもアーケード街などが相当すると思いますが、日本ではあくまで徐行、すぐに止まれる速度となると思いますが、ここは押し歩き区間を適用させることが自然と思います。
さて、第2の「出会い空間」はストラスブールでは比較的狭い街路の商店が並ぶ空間になりますが、日本でのイメージが難しいと思います。というのも第2空間はというのは日本ではクルマの走行空間が優先され、わずかな歩道があるばかりの場所になっているからと思います。また第1の「ゾーン30」は日本でも小学校周辺などで同じ名称が使われていますが、全国各地での交通事故のニュースを聞く限り、規制が守られていないのが現状と思われます。

〇Copenhagenize index2019で第5位のストラスブールの自転車政策
 前回から紹介を始めたコペンハーゲナイズインデックス2019において、ストラスブールは第5位(2017年は第4位)と上位を維持しています。
ここでCopenhagenize index2019のストラスブールの報告を紹介します。
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(以下はリンクサイト:https://copenhagenizeindex.eu/cities/stasbourgの内容を知人で国際経験豊富な横田美香さんの協力の上で意訳しております。転載等する場合は本サイトのプライポリシーを参照ください)

◆コペンハーゲナイズインデックス2019 第5位 ストラスブール
・トータルスコア 70.5%
・ランキング履歴 2011年 ランク圏外
         2013年 ランク圏外
         2015年 8位
         2017年 4位
         2019年 5位
・ストリートスコア 3.3
・文化スコア    2.8
・野心スコア    2.9

◇スコアについて
ストラスブールはフランスの自転車政策のトップとして長らく認められてきました。そして、他のフランス都市が注目し、追随してきたように、ストラスブールは、単なる一元化された都市自転車ネットワークを超える目標設定をすることによって、そのトップの座を維持しています。(コペンハーゲナイズフランス ディレクター Clotilde Lmbert氏)

◇第5位のストラスブール
ストラスブールの新しい自転車戦略は野心的であると歓迎されています。
その新しい戦略とは新規の自転車利用者のサポート政策、既存組織の連携強化、郊外と都心を結ぶ自転車ハイウェイの整備、カーゴバイクの活用などである。これらの取り組みでストラスブールはフランスでの自転車政策(bicycle friendly)な都市の地位を確立している。

現在取り組んでいる新しい野心的な戦略は自転車通勤をすでにしている層(地元住民の16%)の基盤の上になりなっています。また市全体において自治体職員、運送会社および市民の間で日常用途でカーゴバイクの利用するのは珍しいことではありません。

自転車のインフラ整備によってストラスブールのグラン・ディルの歴史的な地区において、自動車のスペースを取り戻しました。The citizen-led Rue du Jeu-des-Enfantsは通りに自動車が入らなくし、住民や来街者があ社交性と創造性を発揮できる場こそが本来のストリートであることを示しました(4)。より永続的な動きとして、市はドック”les quais”(埠頭)の一部を再設計して、より快適な空間にすることを目指していくことになるでしょう。

ストラスブール副市長Jean-Baptiste Gernet氏のコメント
”フランスでの自転車の問題について、その政策内容で競争があることはよいことだが、ストラスブールは幸先のよいスタートをしている″

◇補足
上記で述べた真新しい自転車戦略は、次の10年間で都市を前進させることができるのか? –そのネックとなっているのは,資金不足と論争です。 政治家は、自転車の重要性と、街全体に自転車を普及させるために必要な投資を認識する必要があります。 ストラスブールが目標を達成し、フランスの他都市に刺激を与え続けたいのであれば、栄光にあぐらをかいている場合じゃないのです。
(意訳はここまで)
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フランスの自転車政策でトップを走るストラスブールですが、COVID-19によりヨーロッパ全土で自転車政策の推進の情報が耳によく入ってくるようになっています。各都市で今以上の自転車政策推進の成果がみられると思います。
本書において、ストラスブール市長が2015年にナント市で開催された自転車世界都市大会での発表された自転車推進に成功した要素を3つあげております。

第1「道路行政の見直し」:自転車交通安全の保証は当然で、クルマの走行速度制限、十字路における自転車動線の確保などの新しい道路のあり方に投資する。道路空間の再配分に歩行者と自転車を最初からカウントする。
第2「駐輪対策」:フランスでは盗難が多い。自転車置場の整備を自治体が業者にマンション建設の建築許可を与える際の条件にしたり、企業を対象に駐輪場の整備を推進するモビリティマネジメントを行なっている。
第3「文化的な戦い」:自転車は貧乏人の乗り物だとみなされていて、その社会的な固定観念から脱出できていない人口層がまだ残っている。
そして、自転車利用を進めるには「あくまでもプロモートすること」と「交通政策全体のガバナンス」の工夫が大切。「長期的展望を持ち、時間がたっても整合性を失わない自転車政策を行政がきっちり打ち出す。そのためには現在の自転車利用状況をまず分析して、どうすれば現状に適応した推進策がとれるか、どこを改善すれば自転車利用者が増えるかを考えてゆき、また自治体警察とも協力する必要がある。

と述べています。
日本・福岡において、第1「道路行政の見直し」されることを期待しつつ、福岡で整備された自転車走行空間はかなりクレイジーなものばかりが現状です(5)。この点に関しては私たち市民レベルからのボトムアップが必要と考えています。
第2「駐輪対策」は福岡においては、比較的駐輪場の整備は進んでいると思います。ただ、博多駅などでは利用率の低い駐輪場もあり、マネジメント不足が否めません。盗難の多さも課題です。(6)
第3「文化的な戦い」的な見方は日本ではそれほどありませんが、クルマ優位な社会で形成されているところがあると思います。
つまり、日本では第1「道路行政の見直し」のため自転車の交通や都市政策の置かれている地位が欧米各国と比べ比較にならないほど低いことが課題であると思います。前回記事で書きましたとおり早急な道路の再配分による政策を行っていくべきことも求めていきたい時期ですが、Plat Fukuoka cyclingではじっくりCopenhagenize Indexや本書のような事例を読み込んでいき、その実践方法のための思想を積みあげていきたいと考えています。
 今回のストラスブールは地方都市での成功している都市・交通政策の紹介でしたが、フランスも様々な課題を抱えていることは事実です(7)。ただ、自転車の利用促進は社会にとってその課題を解決する重要なツールであることは本書が示してくれていることに変わりはないと考えています。

○Plat Fukuoka cyclngでフランス料理を "ボンジュール食堂"
天神から渡辺・日赤通りを南下・大橋駅手前。リラックスして楽しめるビストロレストランです。
店頭に鎮座するデンマーク製カーゴバイク・クリスティアーノが目印です。
筆者好みのビール ハートランドビールが飲めるお店でもあります。
(自転車の場合でも飲酒運転は厳禁です。ご注意ください)

自転車でのサイクリング途中でも、目的地でもぜひお立ち寄りください○
※現在COVID-19感染症対策により営業時間等は日々変更されています。下記Facebookページより最新の情報を確認ください。テイクアウトでオープンエアーの那賀川河川敷でのお食事もよいと思います。

◆Facebookページ:https://www.facebook.com/bonjoursyokudou/

次回は「Copenhagnize indexを読む」の連載として、前回の概要に続き、具体的なスコアの算出方法等についての紹介をとおして福岡がbicycle friendlyな都市(まち)となるための考え方を考えていこうと思うます。
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〈参考文献等〉
(1)フランス車といえば、プジョー、ルノー、シトロエンなど欧州車の中でも独特の魅力?をもった自動車会社があります。筆者もフランス車のルノーカングーを所有しています。3人自転車3台を車内に余裕で収納可能なカーサイクリングに適したクルマです。
(2)本書「第4章中心市街地商業が郊外大型店と共存するしくみ」(98項~)にて、ストラスブール市民の大型店舗と中心市街地での行く目的が全く異なるのであることを教えてくれます。つまり大型店舗へはあくまで決まってるものを買うための利用し、中心市街地へは「ぶらぶら歩きに行く」、そのついでに「郊外大型店舗にはない、バラエティに富んだ商品を揃えた小売店舗、一休みできるグリーンスペースやカフェ、映画館などがそろっている、そんな市街地で人々は家族とともに週末に時間を過ごす」のだ。日本では大きなモール内にすべて入れ込んでしまい、そこで完結するような施設が成功しているように見えている。しかし、大きすぎる施設規模に対して、競争激化で共倒れしないか心配である。
(3)今の日本にある商業空間で歩行者の安全が確保された空間はショッピングモールである。車や自転車との衝突の心配がなく、天候にも左右されない快適な空間である。#01で紹介した三浦丈典著『こっそりごっそりまちをかえよう。』(彰国社、2012.7)29項においても、「交通という場所」がないモータリゼーションが発達するとそれを穴埋めするように巨大なショッピングモールの中に人工的な交通の場をつくり上げるようになると指摘している。なお、国土交通省は2020年度より「街路空間の再構築・利活用に向けた取組 ~居心地が良く歩きたくなる街路づくり~」いわゆる「ウォーカブル」な街路づくりの取り組みを始めています。自転車に関する記述はまだまだ少ないですが、今後注目される施策です。
(4)街路を完全に歩行者専用空間とし、アスファルト舗装に住民やアーティストにより、歩いて楽しい街路へ転換する取り組みと思われます。https://www.rue89strasbourg.com/la-nouvelle-rue-du-jeu-des-enfants-pietonne-et-coloree-122546
(5)福岡天神の渡辺通り(西側のみ)の「おしチャリ区間」は車道に自転車走行空間が全くないにも関わらず、一方で歩道への自転車走行可の標識と合わせて押し歩き区間(努力義務)として条例化され、事実上自転車の走行を排除した非常に不名誉な道路もあります。他にもあまたありますが、別テーマでまとめて紹介いたします。
(6)福岡市の駐輪場の整備は暫定的な歩道の一部を使った駐輪場整備もあって、博多駅や天神周辺ではかなりの収容台数を市と民間整備で確保されています。ただ歩道上の駐輪スペースは本来自転車レーン等に使いべきスペースであり、きちんとした駐輪施設の整備が必要です。自転車の盗難は福岡市内の犯罪認知件数の半分を占めています(2013年データ)。
(7)フランスは移民大国でもあり、2005年におけるパリで発生した移民の若者らの暴動は記憶にある方も多いと思います。今回紹介した本では、地方都市の歴史的な街並みの残る中心市街地のまちづくりなどが中心ですが、周辺に広がる郊外住宅地、特にパリなどの大都市近郊には暴動を起こした移民の多く住む郊外団地があることは事実で、郊外が見捨てられる危機に対する反乱ともいえると思います。ジャック・ドンズロ著、宇城輝人訳『都市が壊れるときー都市の危機に対応できるのはどのような政治か』(人文書院,2012.4)も一読の価値があると思います。都市の危機に対して、いかに対応できるか。自転車でできることが多くあると確信しています。
(8)お店の逸話はクイッターズ福岡著『福岡グルメトリビア~ン』(聞平堂,2020.4)にて、紹介されております。本書は福岡の飲食、喫茶店の興味深いお話が満載です。ぜひご一読を。

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