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『世界に学ぶ自転車都市のつくりかたー人と暮らしが中心のまちとみちのデザイン』刊行記念トークイベント@福岡開催-自転車都市・福岡のみらい

 Plat Fukuoka cyclingは福岡のまちがBicycle Friendlyなまちになるために活動しています。この度自転車アーバニストの方々による『世界に学ぶ自転車都市のつくりかたー人と暮らしが中心のまちとみちのデザイン』が2023年11月に学芸出版社より刊行されます。

 今回刊行記念トークイベントを福岡で行うことが実現し、Plat Fukuoka cyclingはモデレーターとして関わらせていただくことになりました。

【刊行記念トークイベント】
「世界の自転車都市からみる自転車都市・福岡のみらい」について

主 催:Plat Fukuoka cycling 安樂駿作
共 催:那珂川みらい会議
日 時:2023年11月24日(金)19時~20時半
    (会場は18時頃予定)
会 場:九州大学芸術工学部 大橋キャンパス デザインコモン2階
参 加:現地参加もしくはオンライン視聴。いずれも無料。
申 込:現地参加の方は必須ではありませんが、参加者把握のため任意で申込ください。オンライン視聴の方は下記フォームより登録ください。開催2日前頃にZOOMのURLをお送りいたします。

内 容:
「世界の自転車都市からみる福岡の自転車都市の未来」と題して世界の自転車都市の動向から、自転車都市・福岡のみらいを共有します。
 著者からは宮田さんと小畑さん(オンライン)に参加いただきます。
 福岡からは福岡の自転車シーンの日常となったチャリチャリの運営会社neuet株式会社にて公共政策室長の小柴大河さん、会場である九州大学芸術K工学部で近くを流れる那珂川河川敷のまちづくりに取り組む那珂川みらい会議のメンバーである稲村徳洲さん、高取千佳さんをお迎えして世界の自転車都市と福岡市の現在地、そして目指す未来を考えます。

登壇者(本イベントでの聴き所)
宮田浩介:

日本自転車大使館(Cycling Embassy of Japan)バイシクルエコロジージャパン自転車活用推進研究会所属。ニューヨークの街路改革に関わってきた市民団体が発行するビジョン・ゼロ・シティーズ・ジャーナルに “The Unique Safety of Cycling in Tokyo”(東京における自転車利用の安全面の特性)を寄稿するなど、国内外の自転車政策について発信されています。宮田さんとは安樂を含めた数名でオランダの自転車ドキュメンタリー映画「together we cycle」の字幕作業など自転車まちづくりの活動に関わらせてもらいました。世界の自転車まちづくりについて本書で書ききれなかった内容についてお伺いできればと思っています。

小畑和香子:
ドイツ在住。移住以来、会社勤めの傍ら持続可能な交通転換を目指す市民活動に参加。3件の自転車市民決議(州民/市民請求)に携わり署名活動キャンペーンやSNSなどを担当。ADFC(ドイツ自転車クラブ)、VCD(ドイツ交通クラブ)会員。カーゴバイクシェアシステム運営スタッフ。自転車カーゴトレーラー企業勤務されています。ドイツではいまカーフリーゾーンや自転車レーンに対する自動車利用側との対立が深まっている都市がいくつかあるようです。そんななかで日本人として市民決議などの運動に関わってくることで日本の社会運動との違いなどを肌身で感じている民主主義や住民運動についてお伺いできればと思います。※オンラインで参加予定。

小柴大河:
:国土交通省11年勤務等の経て、現在neuet株式会社公共政策室長。シェアサイクル事業者として公共政策、公民連携に取組まれている最前線を伺い、福岡の既に風景の1つになったシェアサイクルのもう一歩先の将来像を伺いたいと思ってます。

稲村徳洲
九州大学芸術工学部准教授。専門はデザインエンジニアリングで、Plat Fukuoka cyclingの安樂が関わった自転車100人カイギに稲村さんが来ていただいたことが那珂川みらい会議に関わるきっかけとなりました。「人間中心・ヒューマニズム」を超えた「ポスト人間中心」や「技術の生態系化」という分野を研究されている中で、都市と交通、そして那珂川というグリーンインフラを含めた観点から、これからのソーシャルイノベーションの姿を自転車を通してお聞きしたいと思っています。

高取千佳
九州大学芸術工学部准教授。景観生態学・都市計画・緑地計画・土地利用計画が専門。福岡県や福岡県久留米市の景観審議会委員等景観や生態系などの様々な視点から都市や景観を研究されています。那珂川みらい会議のセミナーにおいても那珂川エリアの人の行動履歴からの分析などデータや生態系の観点からこれからの福岡市における那珂川というグリーンインフラの可能性についてお話しを伺えればと思います。

安樂駿作
Plat Fukuoka cycling主宰。都市空間における自転車の可能性を欧米の都市を訪ね歩く中で見出し、福岡市が自転車にやさしい都市になるべく活動をしています。那珂川の河川敷は福岡市の南北を走るグリーンインフラであり、のんびりした自転車利用やランニングに最適の都市空間と感じています。今回のトークイベントでは、世界の自転車まちづくりを聞きつつ、日本の自転車利用の未来像を世界の様子、そして福岡でいますでに動き出している未来について期待感をもって語れる場としたいと思っております。

以下は開催に先立ち、Plat Fukuoka cyclingの安樂より11月24日の議論のフレームワークをお示しし、参加者の方々と共有・展開できればと考えています。

自転車都市・福岡へのマイルストーン

 Plat Fukuoka cyclingは今回のモデレーターを行うにあたり、これまでも数多くの自転車まちづくりに関するトークイベントが日本で開催されてきましたが、いかに走行空間を確保できるか、走行ルールの問題などに議論の収束として行ってしまう場面に幾度も遭遇してきました。
 当然、自転車インフラの整備は民間では行うことができない、行政が整備するもののためその議論は必要性は理解しますが、その議論はこの場では行いません。より自転車まちづくりの方向性を思想的な引いた目線からクローズアップしていくことで、今後の自転車まちづくりを共有・展開し、具体的な議論を呼び起こしていきたい
と考えています。その点をここで整理して、掲載したいと思います。

日本の自転車まちづくりのモチベーションはどこに帰結するのか

 自転車から少し離れて、私たちの生活環境がどのように形作られてきたかを振り返ってみたいと思います。歩道を歩くと公共施設や商業施設の近くではほとんどに点字ブロックが目に入ることと思います。また歩道と車道の間には縁石があり、日本の多くの場所では2センチ程度の段差があると思います。この段差は視聴覚障がいのある方が外出できるよう道路の設計がなされています。これは視聴覚障がい者の方々の長年の努力によるものに他なりません。このように障がいを乗り越えるための活動は日本だけでなく海外でも行われていますが、その思想が大きく異なることを紹介し、考えていきたいと思います。

 ジュリア・カセム氏の著書『「インクルーシブデザイン」という発想』で戦争で障がい者を負った人々が西欧とアメリカにおいて社会的な不当に対して彼らが行動主義的な立場をとる強い動機として「怒り」があったと述べています。「障がいを持つ人が住みやすい街」で知られるアメリカのバークレーでの車イス団体「ミッドナイト・ライダーズ」を例にこう述べています。

彼らは夜中、ハンマーを片手に車椅子で道路を走り、彼らの通行を妨げる歩道の縁石を手持ちのハンマーで砕く。そして歩道を通行し易くするのだった。
 彼らは、日本の障がい者の運動家とは明らかに異なる。日本の障がい者問題における運動家はデモやロビー活動による政治的、社会的圧力を働かせることで、身体環境における施設利用のしやすさや自立した生活をするための能力訓練、自立生活センターを増やす努力をしてきた。日本において、西洋モデルにみられるような怒りや市民的不服従といった行為は、よりインクルーシブな社会に向けて何か役割を果たすということはほとんどなかった。

ジュリア・カセム:『「インクルーシブデザイン」という発想』pp76-77

 オランダの都市がモータリゼーションの中、自転車都市への変わっていった時も子どもの交通事故死に対する市民の怒りがモチベーションになっています。今回の編著者である宮田浩介さんたちと字幕翻訳を行なった自転車都市であるオランダのドキュメンタリー映画「together we cycle」でも市民の抗議活動のシーンがあります。日本語字幕付きは下記のリンクでご覧いただけます。

これからの社会に自転車というモビリティーが人びとの日常にどうのように置かれるべきか

 日本の今の自転車を含む交通の状況は、高度経済成長期からの約半世紀の日本社会で制度化され、人びとの慣習として根づいていまここに存在しています。高度経済成長期に豊かになった日本社会で自動車が普及したライフスタイルが浸透し、社会や都市、経済が自動車をベースとした基盤でこれまでつくられ、今の社会をつくったことは事実です。
 しかし、エネルギーや脱炭素社会という世界の変化に対して、自動車に依存する社会は持続可能でないことがエネルギー面では経済的に、欧米と中国との対立の中で脱炭素社会の要請が政治的にも及んできています。
 また都市経営の視点でおいても、団塊の世代の方々が2025年には後期高齢者となり、自身での車の運転が困難となっていきます。また2050年には団塊ジュニア世代の方々も車の運転が困難となってくる時代に入ろうとしています。同時並行で人口減少と人口の極端な移動により、人のいる地域とほとんどいない地域での差もより顕在化してくることになると考えられます。
 その中で、人口が比較的今後も集まり続ける福岡市は自転車や徒歩、公共交通の役割がまだまだ求められる地域になると予想しています。
 だからこそ、福岡市のまちに自転車というモビリティーがどのように人びとの日常に寄り添ってどのような存在であるのか。その将来像を本書の副題である「人と暮らしが中心のまちとみちのデザイン」と共に考えたいと思います。

 イベント開催後にレポートと動画配信を予定しています。多数の参加をお待ちしております。


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