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#14Copenhagenize Index2019を読む6ドイツ・ベルリン自転車政策とドイツの自転車道

 Plat Fukuoka cyclingは福岡がbicycle friendlyな都市(まち)となるための様々な提案を行っていきます。
bicycle frendlyというと「自転車にやさしい都市」となると思いますが、私は「自転車がやさしい都市」になってほしいと考えています。それは歩行者に対しても、バイクやバス、自家用車…つまりは都市に対して自転車がやさしくできる都市でありたいと思うのです。

 Plat Fukuoka cyclingの目次は下記よりリンクしていますので、ご覧ください。(随時更新)
0.Plat Fukuoka cyclingの描く未来
1.Copenhagenize Index2019を読む
2.Plat Fukuoka books&cycling guide
3.Plat Fukuoka cargobike style
4.Fecebook ページ――――――――――――――――――――――――――――――――――
「bicycle friendly」の指標として、Copenhagenize Indexというものがあります。Plat Fukuoka cyclingでは「Fukuoka books&cycling guide」と交互で最新版Copenhagenize Index2019の読解を通りして、福岡がbicycle friendlyな都市となるためのヒントを探っていきます。第6回は前回のPlat Fukuoka cargobike styleにて欧州のカーゴバイク市場でも、その規模から期待されているドイツ、その首都・ベルリンについて、紹介します。
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(以下はリンクサイト:https://copenhagenizeindex.eu/cities/berlinの内容を知人で国際経験豊富な横田美香さんの協力の上で意訳しております。転載等する場合は本サイトのプライポリシーを参照ください)

◆コペンハーゲナイズインデックス2019 第15位 ベルリン
・トータルスコア 56.3%(90.2)
・ランキング履歴 2011年 4位
         2013年 10位
         2015年 18位
         2017年 10位
         2019年 15位
・ストリートスコア 2.2(4.0)
・文化スコア    2.1(3.8)
・野心スコア    2.8(4.0)
()は2019年1位コペンハーゲンのスコア

◇スコアについて
 国民投票(ベルリン自転車投票)の直後,ベルリン市議会はより自転車に優しい都市を計画することを余儀なくされ,ベルリンは最新の自転車計画を通して野心的な決定の実践に着手しました。
James Thoem氏、Copenhagenize Design Coのディレクター

◇得点の裏付け
 2015年のVolksentcheid Fahrrad(ベルリン自転車投票)は、ドイツ首都(ベルリン)が都市モビリティに取り組むための、非常に重要なきっかけとなりました。 10万人以上の署名と2015年のこの投票はベルリン市議会に対して、「より自転車に優しい都市」を建設することを法的に求めました。 そして投票直後である今,ベルリンは更新された自転車政策プランを通じて野心的な決定の実施に着手しました。

 2018年に発表された自転車政策(計画)は、自転車政策に精通する団体との協力したことで、ベルリンにとって重要で野心的なステップとなっています。この政策プランは、特に10万もの新しい駐輪場の整備、周辺地域を結ぶ自転車専用道路の拡張、主要な大通りに沿った2メートル幅の保護された自転車レーンの構築を目指すなど、視野を広げました。

一方,カーゴバイクは路上でより日常的な光景になりつつあります。 オスロやウィーンのように、ベルリンもカーゴバイク向けに販売価格の1/3をカバーする補助金の提供を開始しました。 そして、配達用の新しい小型流通ステーションの試験運用を開始したプレンツラウアーベルク地区に住んでいる人々にとって、カーゴバイクは、益々一般的になっています。 大手国際物流企業と協力して,今や半径5 km圏内に住む85万人がカーゴバイクによる配達を期待できるようになりました。

「車に優しい都市という古いモビリティコンセプトは限界に達している...人々が車を処分すること(車無しで生活をすること)を望んでいます」

Refine Gunther ベルリン市交通評議員

◇補足
 いろんな意味で私たちは、投票結果が実を結ぶのを今かと待っています。 自転車政策プランで定められた野心的な目標の数々は、比較的曖昧なタイムラインに従っており、より詳細な戦略を必要としています。 何年にもわたってプランナーが自転車を車中心のパラダイムに押し込もうとした結果生じた、つぎはぎだらけの自転車インフラ設計は、一貫性のある直感的で使いやすい設計基準で再整備する必要があります。 そうすることで、急成長中の無敵なカーゴバイクにも十分に適応できる幅の自転車レーンを備えることができます。

(意訳はここまで)
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 ここで登場する「Volksentcheid Fahrrad」(1)では、傷んだ自転車レーンの舗装の修復や自転車と自動車などの他の車線との接続部の改善などが一向に実現されず、ただ一方で人々は自転車の利便性に気づき、急速に自転車利用者も増加している。また自動車利用も同時に増えており、サスティナブルな交通体系が一向に進まない現状に対して、住民投票で行政や議会に改善を迫ろうとする取り組みです。

 COVID-19対策で自転車利用を促進する動きは活発で、欧米各都市で暫定の自転車レーン「ポップアップ自転車レーン」が設置され、物理上分離した自転車レーンの設置が進んでいました。ベルリンでも設置が進み、自転車利用は加速してかに見えました。しかし一方で死亡事故も増加している事態のようです(2)。

 一方で、cargobike styleでお伝えしたように、ドイツは欧州市場最大のカーゴバイク市場です。それを証明するように、ベルリンではカーゴバイクが日常の風景となってきていることが評価されています。補助制度があるなど、今後物流面でのカーゴバイクの魅力はますます高まるものと思います。

 試行錯誤中のドイツの現状について、ドイツの自転車走行環境の考え方を前回のPlat Fukuoka books&cycling guideにて、紹介しきれなかったため、整理したいと思います。

〇ドイツの標準示方書から読む自転車交通政策 村上 敦(著)『ドイツのコンパクトシティはなぜ成功するのかー近距離移動が地方都市を活性化する』(学芸出版社、2017.3)より

 ここで紹介されているドイツの自転車交通のインフラ整備のための標準示方書「ERA」は公共インフラ整備を行う際に、設計者がどのような技術基準を目安にして設計し、施工者が設計図をどのように施工していくかを取り決めたものです。

 ERAに記載されている自転車レーンは、これまで2回改定されており、その内容が興味深いので紹介します。

【1987年まで】自転車レーンは歩道内に設置となっていた。このときは駐車
       帯なし。
【2009年まで】自転車レーンは歩道内のまま。2車線のうち1車線を駐車帯と
       した。これにより、車道から見て裏側を自転車が通過するこ
       とになり、車から自転車の姿が見えにくくなっていた。
【2009年以降】自転車レーンは歩道から分離され、車道と駐車帯の間に設け
       られた。
(フライブルク中心部の幹線道路エシュホルツ通りの道路断面の移り変り 本書220頁より)

 2009年以降の変更は、ドイツでの自転車が関与する事故分析の結果、車道脇にレーンを設けたほうが、絶対的に安全性が高まるとの分析に基づいた判断とのことです(3)。つまり、ドイツの自転車レーンの考え方は基本的に車道の脇に自転車レーンを設けるというものになり、これは今の日本で採用されている自転車レーンとの類似があります。

 インデックスの記事にあるとおり、ベルリンでは、より自転車利用者を保護するための自転車レーンの整備などを求める動きが起こっています。これは、「標準」に関する技術基準がもつ共通の問題で、「標準」とはあくまでも最低限の安全基準であるということです。一方で安全を優先するあまり、オーバースペックな内容となり、一般的に運用される内容が、例外規定を使っているようなこともあります。
 本書でも標準示方書とは、一方では地域の事情や市民の想いなど独自のアイディアの実現を阻む、ときには法律と同じ効力を持つ厄介な代物である。(4)と言及されています。
 日本でのERAのあたるのが、道路構造令などの基準になり、日本の自転車レーンや自転車道はこの基準をよりどころに設計されてきています。日本の道路構造令については、過去の変遷(5)や現在の運用のあり方など、様々な議論がなされています。

 日本に必要な理想的な自転車レーンの姿はどのような姿なのか。Plat Fukuoka cyclingは今後も、日本や各国の自転車政策を紹介する中で、考えを深めていきます〇

 次回の「コペンハーゲナイズ・インデックス2019を読む」は以前から紹介する予定で、後回しになってしまっていた第3位のユトレヒトとオランダの自転車政策がどのようにして現在の姿になったのか、ネーデルラントの自転車組織Dutch Cycling Embassyの戦略冊子から、紹介いたします。

 次回は「Plat Fukuoka books&cycling guide」の第6回として、世界的にモータリゼーションが進む中で、日本で出版された自動車交通の在り方問うた一冊の紹介と、福岡に残る市場のカフェの紹介です〇

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〈参考文献等〉
(1)Volksentscheid Fahrrad(ベルリン自転車投票) では、2015年11月、30人以上の市民が参加するワークショップを開催し、ベルリンのサイクリング条件を改善するための、最も重要な10の目標を見つけ,12月にはメディア発表しています。この10の目標については、別途特集で取り上げる予定です。2016年1月には、30人の弁護士と自転車専門家が24時間かけて議論を交わし、ベルリン自転車法案の最初のドラフトであるRadGを作成。(ハッシュタグ#BerRGと#RadGの関連ツイートあり)。2016年4月、ベルリンとドイツで初の自転車法(初案)を発表されています。
 一方で、ドイツの道路交通法は2020年4月に改正がなされ、詳報はcyclechangerさん著『ドイツは自転車の国になれるのか』(note,2020.5.4)にて、日本語訳とともに紹介されていますので、ご一読ください。
(2)現在のベルリンの自転車事情について2020年8月24日付「ベルリン自転車事故 死亡者増加の報告 新しい自転車レーンはサイクリストの安全保護に失敗」『The Guardian』https://www.theguardian.com/world/2020/aug/24/berlin-reports-rise-in-fatalities-as-new-bike-lanes-fail-to-keep-cyclists-safe
自転車利用者の死亡事故が増えていることから、一度設置したものを撤去する動きもあるようです。
(3)自転車の車道走行を軸に自転車レーンを整備するのは、今回のドイツ以外の国でも見受けられます。古倉 宗治 著『成功する自転車まちづくり―政策と計画のポイント』(学芸出版社、2010.10)でも、同様の自転車の車道走行の安全性が紹介されています。一方で、世界的な自転車走行空間は、自動車及び歩行者との物理的な分離と、事故リスクの高い交差点部分の安全性向上のための改善がトレンドとは思います。
(4)本書P214より。同様の指摘は刊行されたばかりの元ニューヨーク交通局長ジャネット・サディブ=カーン、セス・ソロモノウ共著『ストリートファイトー人間の街路を取り戻したニューヨーク市交通局長の闘い』(学芸出版社、2020.9)において、道路エンジニアがもつ設計マニュアルの存在であったことも指摘しています。
(5)日本の道路構造令の歴史については、矢島隆 著「特別企画 街路構造令40年の展開(その2)ー緩速車道、自転車道を中心として」(『都市の交通 通巻79号』(社団法人 日本交通計画協会、2010.1))にて、現在の道路構造令以前に存在した街路構造令の歴史にて、自転車を含む低速の交通手段の走行空間がどのように変遷していったかが紹介されています。

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