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#09Copenhagenize Index2019を読む4 アムステルダムの自転車政策

 Plat Fukuoka cyclingは福岡がbicycle friendlyな都市(まち)となるための様々な提案を行っていきます。
 bicycle frendlyというと「自転車にやさしい都市」となると思いますが、私は「自転車がやさしい都市」になってほしいと考えています。それは歩行者に対しても、バイクやバス、自家用車…つまりは都市に対して自転車がやさしくできる都市でありたいと思うのです。

Plat Fukuoka cyclingの目次は下記よりリンクしていますので、ご覧ください。(随時更新)

0.Plat Fukuoka cyclingの描く未来
1.自転車都市ランキングコペンハーゲナイズインデックス2019を読む
2.Plat Fukuoka books&cycling guide
3.Plat Fukuoka cargobike style
4.Fecebook ページ

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 「bicycle friendly」の指標として、Copenhagenize Indexというものがあります。Plat Fukuoka cyclingでは「Fukuoka books&cycling guide」と交互で最新版Copenhagenize Index2019の読解を通りして、福岡がbicycle friendlyな都市となるためのヒントを探っていきます。第4回はこのインデックスの第1回(2011年)から2回(2013年)までのコペンハーゲンを差し置いてナンバーワンであり、トップ3であり続けているネーデルラント(オランダ)のアムステルダムを紹介します。

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(以下はリンクサイト:https://copenhagenizeindex.eu/cities/amsterdamの内容を知人で国際経験豊富な横田美香さんの協力の上で意訳しております。転載等する場合は本サイトのプライポリシーを参照ください)

◆コペンハーゲナイズインデックス2019 第2位 アムステルダム
・トータルスコア 89.3%(90.2)
・ランキング履歴 2011年 1位
         2013年 1位
         2015年 2位(1位コペンハーゲン)
         2017年 3位(1位コペンハーゲン、2位ユトレヒト)
         2019年 2位(1位コペンハーゲン、3位ユトレヒト)
・ストリートスコア 3.7(4.0)
・文化スコア    3.8(3.8)
・野心スコア    3.8(4.0)
()は1位コペンハーゲンのスコア

◇スコアについて
 アムステルダムは膨大な数の自転車ユーザーに対応すべく,多くの都市が夢見る自転車空間の更なる拡大と街路における快適性と安全性の向上という課題に決着をつけようとしています。
– Clotilde Imbert氏,Copenhagenize Franceディレクター

◇ 得点の裏付け
 2019年,アムステルダムが再び舞台に戻ってきました。 前回3位まで順位を下げたましたが,自転車に優しい都市として世界的に有名なオランダ首都は自転車政策を立て直すことで,自らのランキング引き上げを体現しました。
 前回のインデックス(ランキング)以降、アムステルダムは駐輪場や既存の自転車インフラの改善に注力した野心的な新自転車計画2022を発表しました。
 毎年11,000人もの新しい住民が街に詰め込まれるアムステルダムは,より多くの自転車を収容するため新たな「ロイヤルルート」(理想的な自転車専用道)を整備しています。
 これらの自転車通路には、ラッシュアワー中の走行ストレスを軽減のための対策が含まれています。対策の一部には収容力を上げるために既存の自転車レーンの幅員を最大2.5メートルまで広げ,低速自転車用のレーンを整備し,主要な交差点を再設計することで自転車スペースの更なる確保などが含まれます。

 アムステルダムは市内中心部の駐車場を年1500台、2025年までに11,000台を撤去し、自転車駐輪場と街路樹、より良い歩行空間へと置き換える予定です。ささらに、市は待ち望まれていた取組みとして、川をまたぐ自転車と歩行者専用橋を建設し,アムステルダムの北部と南部を繋げる計画をしています。また市内中心部において、最終的には自転車レーンへの原付バイクの乗り入れを禁止する予定である。これはここ数年,地元の自転車ユーザーを大いに苦しめた悩みの種であり,この取組みによって今後原付バイクは他の乗用車と一緒に道路を走行する必要があります。これらの取り組みはここ数年、地元の自転車利用者から最高の評価を得ています。

「自転車は2輪のシンプルものだけではなく、多様な形態がある。それらをスマートに活用するためには、行政は機敏で柔軟であるべきです。」
Pieter Litjens市,アムステルダム市交通局長


◇補足
 アムステルダムがその栄冠(ランキング2位)に酔うことなく,進化し続ける姿は我々にインスピレーションを与えます。2020年代のアムステルダムのために,これらすべての計画と政治的再編により,市がビジョンに基づき実行に移す時が来ました。

 おそらく,それらにはさらなる自転車道の延長,より広いレーン,分かりやすいサイネージ,そしてモペットの自転車レーン乗り入れに対するより厳格な規制などにより,アムステルダムは2021年にコペンハーゲンからその王座を奪還することでしょう。
(意訳はここまで)
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 コペンハーゲナイズインデックスが最初に発表された2011年からその次の2013年までランキング1位であったのがネーデルラントの経済的な首都アムステルダム(政治・行政はハーグ)です。
 筆者が自転車交通に関心を持ったのも、アムステルダムを訪れた際にみた自転車道を疾走する多くの自転車と、子どもを乗せて街なかを縦横無尽に走るカーゴバイクが行きかう風景でした(1)。一方で、市内には駐輪場以外のあらゆるところ(運河を超える橋に欄干はほとんど自転車だらけ)に自転車がとめられており、それはアムステルダムらしい風景とも思った反面、駐輪場が意外と不足しているのかなとも思われました。自転車は自転車道をかなりのスピードで疾走するので、自転車道を渡るときも注意が必要です。ただ、歩道ときちんと分離された自転車道がどこの街路でも整備されているので、日本のように後ろから突然すり抜けていかれるようなことはありません。きちんと分離された自転車道を各国よりいち早く整備していったことは、先見の明だったのだと思います。

 現在の日本の道路は基本的に歩道と車道の2種類の道路しかありません(2)。自転車の速度は徒歩以上自動車以下の中速になります。中速のものが走るエリアを設けない限りは、近年話題の電動キックボードも含め高速の自動車に交じって走る以外の方法はありません(3)。


 かつての自転車が主要な移動、物流手段であった時代は、極まれな自動車などの高速道、自転車やリヤカーなどの緩速道、そして歩道の3種類の道路があり、中速の移動するための走行環境が整備されていました。しかし、自動車の増加に対応することを選択した日本は、緩速道をすべて高速道とし、自転車は歩道通行を許可し、中速の走る走行環境をなくしてしまいました。
 COVID-19対策で通勤・通学での人との接触機会を減らす方法として、自転車は注目を集めつつあります。国土交通省も新しい施策に取り組み始めています(4)。
 Plat Fukuoka cyclingはこの変化の時代を包括的なアプローチでもって、取り組んでいく考えです。

〇アムステルダムが自転車都市になった理由
 欧州の都市の中で、ネーデルラントがどのようにして、自転車都市となることができたのか。様々な文献がありますが、ここではネーデルラントの自転車組織Dutch Cycling Embassyの戦略冊子から、紹介いたします。
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(以下はリンクサイト:https://www.dutchcycling.nl/images/downloads/Dutch_Cycling_Vision_EN.pdfの内容を知人で国際経験豊富な横田美香さんの協力の上で意訳しております。転載等する場合は本サイトのプライポリシーを参照ください)

◆Dutch CyclingVision. 2018
Dutch Cycling EmbassyHow come the Dutch cycle so much

(どうしてネーデルラント人はそんなに自転車に乗るの?)
 ネーデルラントにおける自転車は当然のように認められていたものではありません。ネーデルラントは自動車の高速道路を比較的早い段階で取り入れていました。1950年代終わりから、自動車は率先して交通の主役として扱われるようになり、道路上の自動車は日に日に増加していきました。この時期に整備された自転車道は自転車の快適な走行のためではなく、自転車の走るところを移動させて、あくまで、より自動車が走りやすくするためを意図したものでした。

 では、何が変わったのか。何が起こって、いま、人々がサイクリングのパラダイスと称するような変化が起こったのか?それは1970年代半ばから後半にかけて、いくつかの要因が合わさたことによりもたらされました。1つは交通事故の死傷者のうち、特に子どもの割合が高かったことが、市民の怒りとデモの引き金となりました。またオイルショックにより、多くの人々が原油価格の高騰と、社会的な原油依存のリスクについて、考えるようになったこと。その結果、いくつかの草の根運動が繰り広げられ、抗議の声があげられました。
 草の根運動は、より安全な都市と自転車環境を訴える動きも強まりました。しかし、サイクリングに関する国の政策はまだなく,都市によって差が大きかったのです。

 市民運動の結果、都市計画は徐々に発展し、自転車をモビリティの一部としての検討を始めました。 自転車は都市計画の中で重要なポジションを取り戻し、都心部の開発を促進させ、無秩序な都市の拡大を封じ込めることにつながりました。

 自転車インフラが整備されるにつれ、都市計画家はインフラを個別に検討することから、都市の自転車ネットワーク全体を設計することへと考えをシフトし始めました。デルフト市(ネーデルラント南の都市)は最も早く自転車道のネットワークを作り上げた都市の1つである。これらの取組みは、子供から高齢者、金持ちから貧乏人、そして女王さえも自転車にのるような都市へと変化をもたらしました。その結果、サイクリング人口は再び増加し始めました。

 そこから早送りすること、1990年代には国の自転車政策が採用され、現在、オランダのほぼすべての都市に自転車ネットワークが整備されています。これにより、交通事故で死亡するサイクリストの数が大幅に減少しました。

 60代,70代の人口が増加する近年も、オランダの自転車人口は変わらず増え続けており,高齢者が自転車で移動する距離は年々増加しています。この増加は主に、高齢層のフィットネスレベルの向上と電動アシスト自転
車の使用増加の両方によるものです。

 ネーデルラントで起こったことは特別であり、成果がありました。 しかし、それはネーデルラントに限ったことではなく,他の場所でも実行できるはずです。る。(意訳はここまで)
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 モータリゼーションは早い遅いあるものの、地球上のあらゆる都市で発生し、これまでの自動車以前の都市を大きく変えていきました。ネーデルラントも同じように当然のように自動車交通が発達し、行政もその需要に応える必要から、道路整備へのインフラ投資を進めたことは時代の流れとして当然発生しました。冊子Dutch CyclingVision2018をご覧いただくと、少し前のネーデルラントの都市風景をみることができます。それはまさに現在の日本の自転車走行空間のように自転車がほとんど考慮されていない環境であったことがわかります。それは当時のネーデルラントの政府や自治体もそうでした。

 しかし、それを変えられたのがネーデルラントだったということです。その転換点については、より深く別途紹介していくつもりです。

 そして、今回のアムステルダムの記事にもある通り、自転車と都市計画の関係が明らかになってきました。アムステルダムは自転車の存在を通して、都市のスプロールを止め、既存市街地の開発の充実、つまりコンパクトシティへと都市政策の転換を実施しているようです(5)。
 COVID-19により、日本では公共交通機関の通勤を避け、自家用車での通勤が増えているという記事がでておりました(6)。公共交通機関で1時間以上通勤しなければならない日本の都市・住宅・交通政策はCOVID-19により、これまでのやり方が事実上難しくなってきたことを顕在化させてきているのではと思います。

 次々回の「コペンハーゲナイズ・インデックス2019を読む」はアムステルダムを一度は追い抜いたユトレヒトについて、意訳とともに紹介いたします。
 そして、次回は「Plat Fukuoka books&cycling guide」の第4回として、アムステルダムの自転車に関する本とサイクリングによりカフェの紹介です〇

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〈参考文献等〉
(1)ネーデルラントの街を走るカーゴバイクの動画は下記がおススメです。https://www.youtube.com/watch?v=huE7M4JQMYk
自動車では得られない自転車都市ならではの楽しい風景です。

(2)よくいわれる自転車の走行ルールは「自転車は車道の左側を走行。歩道は徐行」とありますが、筆者は「自転車は自転車道を走行」が基本となることを目指していきたいと考えています。福岡市は広い幅員の歩道を整備し、その中に自転車通行部分をつくる「自転車歩行者道」としている場合が多くみられます。内容もペイントだけのものから、柵のある分離したものまでいろいろです。問題は交差点やバス停部分はあくまで歩道になるというところです。

(3) ビジネスデザインディレクターの岩嵜博論氏はコペンハーゲンでの中速度、中距離帯の道路インフラの整備が都市の強みになっていることを、自転車レーンを走る電動キックボードの動画とともに紹介しています。
https://twitter.com/hriwsk/status/1155362735422681089

(4)国土交通省2020年6月18日付プレスリリース「新しい日常に対応するための当面の道路施策」
https://www.mlit.go.jp/report/press/road01_hh_001332.html
にて、自転車専用通行帯の整備や、企業・団体への自転車通勤の促進などが取り組みとしてあげられています。ただ、走行環境の整備は路上駐車でほとんど機能不全であることなどがすでに指摘されています。また提言として、道路政策ビジョン「2040年、道路の景色が変わる」という将来的な道路施策のビジョン策定も進められているようです。こちらも別途取り上げて考えていきたいと思います。

(5)谷口守(編著)、片山健介・斉田英子・髙見淳史・松中亮治・氏原岳人・藤井さやか・堤純 (著)『世界のコンパクトシティ 世界を賢く縮退するしくみと効果』(学芸出版社、2019.12)にて、アムステルダム他コペンハーゲン、ポートランドも紹介されています。本書は別途Plat Fukuoka books&cycling guideにて紹介予定です。

(6)「都会のマイカー通勤増える? 3密の満員電車は「苦行」(朝日新聞、2020.6.26)
 首都圏において、1時間以上の満員の電車通勤は、間違いなく「三密」であり、自衛の措置で自家用車を通勤で使う人が増えているという記事です。自家用車通勤の快適さも紹介されていますが、交通問題的な限界と環境問題としても時代に逆行しているといわざる得ません。しかし1時間以上電車通勤はとても自転車通勤に置き換えられるような距離ではありません。問題の本質は、職場へのアクセスがそれだけの通勤のための移動距離となってしまっている都市構造であるように思います。この課題は、非常に長いスパンで都市の構造をどうとらえてくかという問題になります。
※インターネット記事のため、リンク切れする可能性があります。

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