見出し画像

47都道府県 行ってみたい・もう一度行きたい 美術館 【中国・四国地方編】

 「こんな時だからこそチャレンジしてみたい、 《おうちでアートを楽しむ10の方法》」の2つ目。

② 外出できるようになったら行きたい美術館をリストアップしてみる。

今回は【中国・四国地方】(鳥取、島根、岡山、広島、山口、香川、愛媛、徳島、高知)。
【北海道&東北地方編】【関東地方編】 【中部地方編】 【近畿地方編】はこちら)

※ 選んだ美術館・アートスペースのポイント

・「まだ行ったことがないけれど行ってみたい美術館」と「もう一度行きたい美術館」をピックアップ(※ 行ったことがないところを優先)
・ここでしかみられない作品や特徴的なコレクションがある
・建築に特徴がある
・コアなアートファンでない方にもオススメできる

31) 鳥取県: 植田正治写真美術館

画像3

美術館から臨む「逆さ大山」(2019年撮影)

 写真の発祥地フランスでUEDA-CHO(植田調)という言葉でも紹介される作風を作り上げた、鳥取県出身の写真家・故・植田正治さんの作品を常設する美術館。植田さんの写真の変遷を辿ることができる見応えある常設展示。また、建物は建築家・高松伸さんの設計で、建物自体が大きなカメラオブスクラとなっているという仕掛けも。館内からは水面に映る”逆さ大山”が楽しめるなど、作品以外にも様々な見所のある美術館です。

 ほかには、テーマパーク的ですが 世界初の「砂」を素材にした彫刻作品だけを扱う美術館で 毎年テーマを変えて展示を行なっている「鳥取砂丘 砂の美術館」や、鳥取県出身の岡野元房さんの作品を扱う 民宿を改装した小さな美術館「鳥取 モトフサ現代美術館」が気になります。

32) 島根県:足立美術館

 5万坪の日本庭園が 米国の日本庭園専門誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」による庭園ランキングで17年連続日本一に。そして、庭園だけでなく、横山大観の他、竹内栖鳳、橋本関雪、上村松園、榊原紫峰らの近代日本画コレクションも充実している美術館。「日本庭園と日本画の調和」を、当館創設以来の基本方針としているそうです。

 このほか、夕日の名所としても有名で 晩年の菊竹清訓さんによる建築も美しい「島根県立美術館」は、再訪したい美術館です。また、その20年ほど前に同じく菊竹清訓によって設計された美術館で コールテン鋼で葺かれた屋根材が特徴的な「田部美術館、内藤廣さんによる建築で、屋根と壁が赤い石州瓦に包まれた外観が印象的な「島根県立石見美術館」なども気になる美術館です。

画像4

島根県立美術館は、幸せを呼ぶといわれる「宍道湖うさぎ」(籔内佐斗司さん作)も有名ですね。(2019年撮影)

33) 岡山県:奈義町現代美術館

 荒川修作+マドリン・ギンズ、岡崎和郎、宮脇愛子の4人の芸術家に巨大な作品をあらかじめ制作依頼し、全体の空間を作家と建築家が話合って美術館として建築化した、”作品と建物とが半永久的に一体化した”美術館。どの作品もここでしか見ることのできない作品ですね。建築は磯崎新さん。これらのコミッションワークだけでなく、現代アートギャラリーでは年に数回の企画展も行われているそう。岡山と鳥取の県境付近にあり、公共交通機関ではなかなか行くのが難しい場所ですが、行ってみたい美術館です。

 この奈義町現代美術館の設立にも携わられていた花房香さんによる個人美術館で 7アーティストの作品が1年ごとにアップデートされていく「S-HOUSE ミュージアム」は本当に素敵な個人美術館でした。

 また、安藤忠雄さんの設計で、水面に映る抽象画のような建築が美しい「高梁市成羽美術館」、そしてもちろん、エル・グレコ 「受胎告知」をはじめとする 近現代美術中心のコレクションの素晴らしい「大原美術館」も。

 ほかにも、岡山駅周辺には前川國男さんによる「林原美術館」や岡田新一さんによる「岡山市立オリエント美術館」「岡山県立美術館」などの近代名建築の美術館があったり、「岡山芸術交流」の作品が残っていたりと、こちらを歩いて回るのもおすすめです。

34) 広島県:広島市現代美術館

 全国初の現代美術を専門に扱う美術館として 現代美術の作品を収集、紹介する美術館。建築は黒川紀章さん。建物の素材は地面から高くなるに従って、自然石、磨き石、タイル、アルミ、と現代的な素材へと軽やかに変わっていくなど、見た目もユニークです。「主として第二次世界大戦以降の現代美術の流れを示すのに重要な作品」、「ヒロシマと現代美術の関連を示す作品」、「将来性ある若手作家の優れた作品」を3つの方針として収蔵し、映像やパフォーマンスなど、その表現方法も様々。独自の企画展も魅力的で、一度訪問してみたい美術館です。

このほか、離島の閉校になった中学校の校舎を活用し 柳 幸典さんらの作品を常設展示する「アートベース百島」や、藤森照信さんによる建築や、名和晃平さん・WOWによるインスタレーションが素敵な「神勝寺 禅と庭のミュージアム」は再訪したい場所です。

 警備員さんと猫の攻防で話題になった「尾道市立美術館」は尾道水道を一望できる見晴らしも素敵な美術館です。また、日本唯一のアウトサイダー・キュレーター櫛野展正さんによるアートスペース「クシノテラス」や、アウトサイダー・アートを扱う美術館で 築150年にもなる古い蔵を改装した「鞆の津ミュージアム」は訪れてみたい美術館です。

画像10

尾道市美術館からの尾道水道のながめ(2019年撮影)

35) 山口県:山口情報芸術センター[YCAM]

 メディア・テクノロジーを用いた新しい表現の探求を軸としたアートセンター。全国でも数少ないメディアアートの拠点で、ユニークでな企画展も魅力的です。設計は磯崎新さん。図書館やギャラリー、スタジオなども備えた複合施設ですが、非常に開放的な空間で、自由度の高い空間になっているようです。

画像11

開放的なスペースが印象的なYCAM(2018年撮影)

 同じく磯崎新さんによる建築で 1964年に手がけた個人住宅「N邸」を再現した建物もそなえる アーティスト・イン・レジデンスのための施設「秋吉台国際芸術村」、丹下健三さんによる設計で 浮世絵・東洋陶磁・陶芸の3つのジャンルを専門とする「山口県立萩美術館」、2年に1度の彫刻の祭典 UBEビエンナーレ の舞台であり、90点の彫刻作品が常設されているという
「緑と花と彫刻の博物館 ときわミュージアム」なども行ってみたい場所です。

36) 徳島県:大塚国際美術館

 大塚製薬などの大塚グループによって設立された、日本最大級の常設展示スペースをもつ「陶板名画美術館」。著名な世界中の名画が、陶器の板に”原寸で”焼き付けられています。ミケランジェロの『最後の審判』をシスティーナ礼拝堂そのものを再現した空間は、過去に米津玄師さんが紅白歌合戦でライヴを披露したことでも話題になりました。レオナルド・ダ・ヴィンチ『最後の晩餐』を修復前後の姿で比較して見ることなどもできます。筆跡なども再現されていて、すべて複製といえど満足度の高い美術館です。作品数も多く、1日がかりでも見切れないぐらいなので、もう一度行きたい美術館です。

 このほか、文化の森総合公園と共に開館した美術館で「20世紀の人間像」をテーマとしたユニークなコレクションをもつ「徳島県立近代美術館」や、徳島県南西部の相生の特徴となっている「木」を素材とした木彫と木版画を主に展示するという「相生森林美術館」も気になる美術館です。

37) 香川県:ベネッセアートサイト直島

 美術館ひとつに選べず まとめる形になってしまいましたが。モネの「睡蓮」やジェームズ・タレルの作品がその作品のためにつくられた空間に常設展示されている「地中美術館」に、アーティスト・内藤礼さんと建築家・西沢立衛さんによる とても静かな空間の中で 周囲の自然そのものを楽しむような「豊島美術館」、銅製錬所の遺構を保存・再生した三分一博志さんの建築の中で やはりこの場所のためにつくられた柳幸典さんの作品を観賞する「犬島精錬所美術館」など。複数回訪問してもまた訪れたい美術館が多数です。芸術祭のシーズン(次は2022年)は非常に混みますが、常設の展示が充実しているのでぜひこの時期を外して訪問してみてください。

 150点あまりの彫刻作品と展示蔵や住居・イサム家など 全体がひとつの大きな「環境彫刻」となった「イサムノグチ庭園美術館」(予約制)や、
丸亀市ゆかりの画家・猪熊弦一郎さんの作品約2万点を所蔵する美術館で 建築家・谷口吉生さんが猪熊弦一郎との対話から理念を細部に至るまで具現したという建築の「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」も訪問してみたい美術館です。また、「戦後日本の現代美術」「20世紀以降の世界の美術」「香川の美術」の3つの軸で収集が行われ 独自の現代美術の企画展も展開される「高松市美術館」も今後も再訪したいです。

画像5

地中美術館に隣接する モネの睡蓮の庭をイメージした ”地中の庭” も素敵です。(2018年撮影)

38) 愛媛県:伊東豊雄建築ミュージアム

 建築家・伊東豊雄さんの建築作品を展示する個人ミュージアム。都内にあった住宅「シルバーハット」が再生されているのと、幾何学的なユニークな形態の本館「スチールハット」のふたつの建物からなり、庭園にも伊東豊雄さんの建築をモチーフにした彫刻が並びます。建築という枠組みとともに、ワークショップなどを通じて、コミュニティをつくることを実践してきた様子も伺うことができるユニークな美術館です。

画像11

瀬戸内海の見晴らしも素敵な美術館です。(2019年撮影)

 愛媛には、このほかにも伊東豊雄さんによる設計の建築とモニュメントの中間のようなユニークな「今治市岩田健母と子のミュージアム」もあります。また、三浦工業グループによる陶板画作品と彫刻を常設展示する美術館で、建築家・長谷川逸子さんによる建築をもつ「ミウラート・ヴィレッジ」なども気になる美術館です。

画像7

画像8

「今治市岩田健母と子のミュージアム」の隣にある宗方小学校跡は、伊東豊雄さん率いる伊東建築塾の監修で宿泊施設「大三島 憩の家」にリノベーションされています。(2019年撮影)

39) 高知県:砂浜美術館

 「私たちの町には美術館がありません。美しい砂浜が美術館です。」をコンセプトに 年数回のTシャツアート展などを開催するほかは、常設展は”ありのままの砂浜の風景”という建物のない美術館。頭の中で4キロメートルの砂浜を「美術館」にすることで、沖を泳ぐ「ニタリクジラ」、砂浜に沿って広がる美しい「松原」や「らっきょうの花」、あるいは浜辺に流れ着く「漂流物」なども「作品」になるというコンセプチュアルな美術館のようです。
年に数日の間開催されるという「Tシャツアート展」や「漂流物展」などの企画展も会場の景観を生かしていて面白そうな展示です。

砂浜美術館

砂浜美術館 公式webサイトより

 このほか、アール・ブリュットの美術館で 水切り瓦と土佐漆喰塗といった高知特有の建築技法が施された土蔵をつかった「藁工ミュージアムや、高知県ゆかりの写真家・石元泰博さんのプリント・フィルム等を網羅的に所蔵する美術館で 土佐漆喰の土蔵をモチーフとする建物が印象的な「高知県立美術館」高知県立牧野植物園の中にあり サスティナビリティー(持続性)をテーマとした内藤廣さんによる建築の「牧野富太郎記念館」なども気になる場所です。

グレー

 中国・四国地方は 実業家の方が文化に携わっているものが多いと伺ったことがありましたが、調べていくと、大原美術館にはじまり、足立美術館、大塚国際美術館(大塚グループ)、そして直島(ベネッセ)、アートベース百島(テルモ)など、規模の大きなもので企業が関わるものが数多くあるんですね。

 次回はこのシリーズの最後。【九州・沖縄地方】(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)をみていこうと思います。

グレー

そのほかの地方はこちら。


この記事が参加している募集

一度は行きたいあの場所

最後まで読んでいただきありがとうございます。良かったらサポートいただけたら嬉しいです。サポートいただいたお金は 記事を書くための書籍代や工作の材料費に使わせていただきます。