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君主論

"ともかく、君主は、たとえ愛されなくてもいいが、人から恨みを受けることがなく、しかも恐れられる存在でなければならない。"1532年に失脚した外交官により発刊された本書は、安易な理想主義とは違う現実主義的な政治学の古典として、今を生きる私達にとっても教訓を与えてくれている。


個人的には、中学生くらいの時から何十年ぶりに再読してみようかな?と手にとったのですが、昔読んだ時はいわゆる【目的の為に手段を選ばない】マキャベリズムが書かれている。と著者に対して冷酷的、暴力的な印象を勝手に持っていたのですが。あらためて再読してみて(そうではなくて)叩き上げの官僚としての【熱い愛国心溢れる】リアリズムの書であると印象を新たにしました。

さて本書では、現場経験豊富な外交官としての著者の立場から政治にとって【もっとも必要なのは国を守ること】その為には自前の軍隊と法を土台にしつつ、市民と同盟国の支持を受けること。またその上で、例え最終的に運命に左右されたとしても【君主として現実的な力量を高める必要性】をドラマチックに描いているわけですが。失脚した田舎暮らしの中で、夜間にあえて官服に着替えて執筆されたと言われる著者の心情を想像しながら、独裁者気取りの政治リーダーが世界中で存在感を増す中、辺境の島国に生きる1人として今でも充分に通じる、考えさせられる内容だと感じました。

また、大人になって、流石に以前と違って世界史や美術史の知識も増えていることから、宗教一辺倒から人間重視のイタリアルネサンスへ。レオナルドやボッティチェッリ、ミケランジェロたちが同時代的に活躍し【素晴らしい芸術作品がメディチ家をパトロンとして次々と誕生した】一方で、軍事大国フランスやスペインに狙われては、しばしば酷い扱いを受けていた事が、著者の文書から伝わってきて、何だか歴史の知識をバランスよく補完してくれる様な楽しみもありました。

安易な理想主義ではない、現実的なマネジメント知識を学びたい誰かに、また支配者層が【どのような視点を持つ可能性があるか】を逆説的に警戒したい誰かにもオススメ。

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