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消えたイワシからの暗号

"本書の内容は、魚類の資源に関わる、もっともドラマチックでもっともミステリアスな現象といわれる『魚種交代』への、研究者の挑戦のドラマを描いた物語りである。その魚種交替についての二一世紀における予測に、七人の研究者が挑んだ"1999年発刊の本書はスケール大きく水産資源を科学した刺激的な一冊。

個人的には世界的な人口増加や温暖化などで、あらためて食、中でも水産資源について考えたいと思って本書を手にとりました。

さて、そんな本書は自称『行動派』として定年退官後の著作が多数ある一方、『21世紀の水産を考える会』会長や社会活動にも取り組んでいた著者も含めた7人の学者が【水産庁の資源確定の為にシュミレーションを重ねていくのですが】マイワシ他の大衆魚に着目して展開する、著者の持論。自然界には【ある種が異常繁殖することで、魚類全体が安定的にバランスよく繁栄する合理性がある】とする『魚種交替』論は恥ずかしながら初めて知ったこともあり、目から鱗的な新鮮さでした。

また、本書は基本的には水産海洋学に分類されるアカデミックな本だと思うのですが、全編【軽いユーモア、シンポジウム他の言葉の語源にこだわった雑学を交えながら飄々と展開しており】まるでエッセイのような読みやすさで最後まで楽しませていただいたのですが。【2020年代には(再びピークを迎えると予想する)マイワシの刺身を肴に】と終わりに述べている著者が、2006年に家庭内トラブルで長男に刺殺されたことを別に知って(本書とは直接関係ありませんが)何とも残念に思ってしまいました。

イワシやサンマといった日常から馴染みの深い魚たちで科学したい誰か、また日本の漁業、水産資源の未来を考えたい人にもオススメ。

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