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ほしのこえ

"一度では内容がうまく理解できなかった。うつろな気分で流れる文面を眺め、表示を先頭に戻して、つぶやくように声に出して読んだ。"ねえ、わたしたちは、宇宙と地上にひきさかれる、恋人みたいだね""2006年発刊の本書は、新海誠の商業デビュー作『ほしのこえ』の映像を補完している一冊。

『君の名は』の大ヒットで時の人となった印象もある新海誠ですが。個人的には監督はもちろん【脚本・演出・作画・美術・編集】をほぼ1人で行なって完成させた『ほしのこえ』の時から注目していて。また自分も最近、映像を撮っている事から懐かしみつつ、あらためて参考に手にとりました。

さて、そんな本書は突然現れた地球外知的生命体タルシアンの脅威に対抗するために出撃した国連宇宙軍のタルシアン調査隊―リシテア艦隊の一員となったミカコ、そして地球に残ったノボルがお互いにほのかな恋愛感情を抱きながら行うメールのやりとりが、艦隊が地球から離れていくにつれて次第に遠く、ずれていくわけですが。

映像作品のノベライズとして、本書はほぼ忠実に前半150ページを『あいのことば』としてミカコの視点で描きつつ、後半150ページは映像では断片的だったノボルの心境や姿が『ほしをこえる』として描かれていて、映像では説明されなかった部分、例えば何故ミカコがいつまでも制服を着ているのか?などが明らかになっていて補完的に楽しめました。

また本書のタルシアンとのコンタクトに物語設定としてワイドスクリーン・バロック作品というべき物語の大きさを感じさせるも、あえて【そこは仄めかすだけに留まり説明せず】あくまで日常的なミカコとノボルのピュアなやりとりに終始するあたりは『君の名は』『天気の子』にも共通する部分であり【原点を確認するような】そんな魅力が本書にはあるように思えました。

新開誠ファンの誰かへ。また映像作品とテキストの違いを楽しみたい人にもオススメ。

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