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バベル 少女は言葉の旅に出る

"『この世界はね、異国語って言ったら文字のことだけを指すんだ。発音は全部一緒だけど、文字や記述の文法は多少差異がある。だから君の世界もそうだと思ってたんだけど』"2020年発刊の本書は、異世界転移した女子大生と魔法文字研究の魔法士エリクが大陸を旅する言葉にまつわる物語。

個人的には同じ著者のWEB連載から書籍化され『このライトノベルがすごい!2020』に輝いた『Unnamed Memory』に次いで、若い人にすすめられて手にとりました。

さて、そんな本書は最早、異世界ものあるあるというか、冒頭からの2ページで突然、現代日本から剣と魔法の異世界に迷い込むも【割とマイペースに落ち着いている】女子大生の水瀬雫。彼女が魔法文字を研究する風変わりな魔法士の青年・エリクに自分の世界の言葉を教えるのと引き換えに一緒に日本に帰還する術を探る旅に出かけるのですが。

まず。『Unnamed Memory』と同様に、主人公二人のノリツッコミ的なユーモア溢れる『短いセリフのやりとり』でテキパキと進む展開はWEB連載らしいというか。お約束的な設定も相まって違和感なく【アニメ化された映像がすぐに浮かんでくるようで】とても読みやすく、この著者のテキストの持つ魅力だと感じました。

一方で、シリーズ一作目。導入部という事で仕方がないのかもしれませんが。せっかく『異世界の言葉のお話』をテーマにしながらも、まだ本書では各エピソードの幕間で二人が互いの世界の言語について【語り合っているだけに留まり】あまり本筋に絡んでこないのはちょっと残念でしたが、まあ割と結末までしっかりと構想して書いている印象のある著者なので【そこはこれからに期待!】といったところでしょうか。

主人公達が『俺つええ系』ではないので、派手ではありませんが。逆に殺伐としない丁寧な展開を見せる異世界ものが好きな人にオススメ。

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