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戦国と宗教

"本書では宗派ではなく『天道』の観念にあえて注目したい(中略)一向一揆で知られる真宗本願寺派や、広域な展開をみせた曹洞宗など在来宗教の特質も、外来のキリスト教が急速に広まっていった理由も見えてくると思われるからである"2016年発刊の本書は研究者が宗教から戦国社会を考察した刺激的一冊。

個人的には、コロナ禍で京都の寺社仏閣巡りばかりをしている事もあり、サブテキスト的に手にとってみました。

さて、そんな本書は中世後期の宗教社会史、中でも一向一揆や京都を中心とする戦国期の「天下」と織田政権・諸大名の関わりについてを専門にしている著者が、タイトル通りに【戦国社会の様相を宗教や信仰から眺めた一冊】として、川中島決戦、一向一揆(と織田信長)キリスト教の広がり(と豊臣秀吉による弾圧)などを事例に取り上げ【信仰の果たした役割の大きさを確認】した上で。それぞれの【内面の信心、諸宗派・諸信仰を横断し包括する超越概念】として、当時の日本人には『天道』という共通観念があったのではないか?(=対立を避けた)と述べているわけですが。

まず、教科書的な歴史では教えてもらえないであろう戦国時代の武田信玄vs上杉謙信、織田信長vs本願寺(一向一揆)といった大名たちの合戦の背景にあった【当時の宗教的背景】を流石に専門家として、資料をもとに丁寧に解説を加えてくれていて。特に2次創作、時代劇や漫画やアニメで【悪虐非道の仏敵、第六天魔王】として、どちらかと言えば悪役然として描かれがちな織田信長が【本願寺に何度も配慮し、苦心を重ねていたか】がわかって、とても興味深かった。

また同じく、キリスト教的視点からは弾圧者として、悪く描かれがちな豊臣秀吉が、なぜ禁止、弾圧する判断をくだしたのか。その説明として日本固有の宗派の違いがあっても【統一的な天道概念のもとで相手を排斥しない】共通思想があり、またその流れで【キリスト教による伊勢神宮攻撃、あるいは豊臣秀吉への虚偽申告】が問題となったとの説明は(キリスト教信者の方には申し訳なく思いますが)個人的には納得でした。

日本の戦国時代好き、また織田信長や豊臣秀吉ファンの方にもオススメ。

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