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「対リア充防壁」文体練習

訳者が"このような無謀な翻訳の試みを通して感じたものは『自分の』の無力さではあっても『日本語の』の無力さではなかった"とあとがきで述べている本書は【乏しい(同じ)内容を】を【バラバラな(99の)文体】で書いている。ただそれだけなのに、その創造性のあまりの豊かさに驚かされる。

個人的には、シュールレアリスムの活動を通過した著者が、1942年と第二世界大戦の最中から本書の実験を始め、1973年まで約30年間、編集を繰り返した事に驚きと敬意を。それに加えての訳者の著者の意図を踏まえた"いんちき関西弁""短歌、徘徊、漢文"といった挑戦的な翻訳の数々に感動しました。

豊かな内容や、格調の高さでもなく。はたまた装丁やデザインでもない本の可能性を知りたい誰かに。また【地下鉄のザジ】で著者の作品に触れた方にオススメ。

PS:最近出版された「もし 文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら」の元ネタでもある本書なのですが。とかく凡人と違いを出したい人には「どんな本が好きですか?」との質問にはこの本をあげておけば「内容なんてない本だし」一方で「装丁がお洒落なので」どんなリア充にも対抗できるかと。


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