見出し画像

沈黙の春

"人間だけの世界ではない。動物も植物もいっしょにすんでいるのだ。その声は大きくなくても、戦いはいたるところで行われ、やがて勝利がかれらの上に輝くだろう"1962年発刊の本書は、化学物質の利便性ではなく、深刻な環境汚染への警告を最初に発し世界を変えた一冊として読んでおきたい。


個人的には話題になった中国発SF『三体』にて登場人物が言及していたり、またSDGs他、持続可能性に注目が集まる今、世界的な環境問題に取り組む人の古典的バイブルともされる本書をやはりちゃんと読んでおかなければ。と手にとりました。


さて本書は、冒頭に『アメリカの奥深くわけ入ったところに、ある町があった』という印象的な『明日のための寓話』病める世界の印象的な描写から始まり、人間にとって邪魔な一部の生物を排除する為の『殺虫剤』が、結果として【命あるものすべての環境を複合汚染し破壊する】『殺生剤』として深刻な影響を与えている事、また経済的に安価だからと安価に使用されているDDT他の化学物質に依らなくても天敵を輸入するなどで環境は保たれることなどについてを、水や海空、土や川にわけて【何度も強く訴えかけている】のですが。

2019年現在の私たちからすれば、率直に言って、ある意味さほど目新しくない【既成の事実、当たり前の話】と感じてしまうものの、第二次大戦後当時にシラミやマラリア対策、また農業生産の言わば『万能薬』として、もてはやされていたDDT他、安全とされていた化学物質に声を上げた事は【相当の反発と、それに立ち向かう覚悟】が必要であった事を想像すると、どこか文学的な書き方ながら著者の必死な想いが文章から感じ取れて心に響きます。

また、本書執筆後の2年後に著者は癌にてこの世を去るわけですが。多くの賛否を巻き起こしながらも当時のケネディ大統領政権下のアメリカの環境政策に決定的な影響を与え、さらにはクリントン政権下の副大統領であったアル・ゴアが重ねて本書がアメリカの環境政策の基本思想である事を述べているなど。時代を超えて『プランBは存在しない』地球が人間だけではない【多くの生物が住む世界】であるという当然すぎる事に思いを立戻らせてくれます。

環境問題に取り組む、または関心のある人はもちろん、かって【出会ってしまった問題に1人の女性が声を上げた事】に勇気をもらいたい誰かにオススメ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?