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『アジア半球』が世界を動かす

"今後、歴史で特筆されるであろう新時代には、二つのもっとも顕著な特徴があるのだが、その意味を完全に理解している西欧人はほとんどいない。第一に、われわれは西欧が世界史を支配する時代が終焉を迎える時期に達した(中略)第二に、われわれはアジア社会の壮大な復興を見ることになるだろう"2010年発刊の本書は国連大使としても活躍した現シンガポール大学教授による刺激的な一冊。

個人的には、本を手にとる意味は【自分の知らない世界への扉】だとも思っているのですが。そういった意味で本書は著者の幅広い視野、それを支える深い知性にまず感嘆しました。

さて、そんな本書は(日本を含まない)アジア。中国やインド、その周辺の成長著しい国々を対象にして、21世紀における西欧の衰退およびアジアの必然的な台頭とその根拠について。一生のうちでのアジアの10000%比率の生活水準向上を紹介し、1945年以降のG7による世界秩序の維持に見せかけた西欧の支配体制や矛盾を明らかにしたり、さらにはアメリカの横暴に関して厳しく指摘した上で【世界人口の12%のG7の国々が、残る88%の運命を決めるのはやめるべき】とアジアの復権、そして西欧の実質的な既得権益になっている安保理や常任理事国ではなく、国連憲章に則り【正しく機能する国連、グローバルなガバナンスを構築する必要性】を指摘しているわけですが。

普段、残念ながらアメリカやヨーロッパの一員"とすり寄って"定着している【西欧至上主義、アジア軽視(無視)の報道】にどっぷりと浸かってしまっている日本在住の私にとっては、本書で紹介される【鏡合わせのように逆転するかのような】シンガポールの知識人による【中国やインドの立場から見た世界の捉え方】またイラク侵攻他、今も新型コロナ対応で表出している問題を引き起こしている当事者なのに、原因はいつも他者のせいにする【アメリカの横暴がいかにアジアや世界の人々を傷つけてきたか】をお恥ずかしながら初めてちゃんと認識した感覚があって刺激的でした。

また、明治の近代化、戦後の高度経済成長こそ日本はアジアの国々に影響を与えたものの(これもよく指摘される話ですが)現在のアジア各国からは【衰退する一方の過去の国であり、成長するアジアから孤立してしまった国である】ことをあらためて認識させられて、やはり寂しい気持ちになってしまいます。成長するアジアと衰退する西欧。私たちの国は未来に向けて、どう振る舞うべきか?そんなことも考えてしまいます。

識者による【アジア大陸から眺めた世界】を共有したい誰か、またあまり日本では報道されない(忖度?)アメリカの横暴さを知りたい誰かにもオススメ。

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