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ザリガニの鳴くところ

"『どういう意味なの?"ザリガニが鳴くところ"って。母さんもよく言ってたけど』(中略)『そんなに難しい意味はないよ。茂みの奥深く、生き物たちが自然のままの姿で生きてる場所ってことさ。』2018年発刊の本書は69歳の動物学者の小説デビュー作にして全米ベストセラー、国内でも2021年本屋大賞 翻訳小説部門 第1​位なった傑作。

個人的には帯に寄せられた絶賛の数々を眺めながら手にとったのですが。【ハックルベリーフィンの冒険女性版+タイタニック?】とにかく面白くて一気読みしてしまいました。

さて、そんな本書はノース・カロライナ州の湿地で死体が発見されるところから始まり、親や兄弟に捨てられ、村からも迫害されながら一人で生きる"湿地の少女"の成長を【時代を行きつ戻りつしながら描いている】のですが。

やはり研究者として論文をいくつも発表している著者による【繊細かつ強度のある自然描写】が説得力があって、表紙イラストのような小舟が行き交うかってのアメリカ南東部の緑溢れる世界に連れて行ってくれます。

また物語としても、フーダニットのミステリであると同時に、少女の成長物語、環境問題を扱う社会派小説と様々な魅力が込められているのですが。いずれにしろ、そういった要素を【魅力的な主人公である野性味溢れる少女】そして彼女を巡る人間関係でシンプルに描いているのがとても良かったです。

爽やかで甘酸っぱい成長物語が好きな誰か、アメリカ南東部にショートトリップしたい誰かにオススメ。

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