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農業と観光はデザインで繋げられるのかもしれない

ベトナム南部、どこの省のどの街を訪れても、何かに導かれるように直観で決めたカフェに入り、お気に入りの席を見つける。キッズスペースが設けられているカフェであったり、船の形をしたテーブルがあったり、ブランコやハンモックがあったり、共通しているのは、壁にカラフルな街並みや自然が描かれているのと周りに緑が多いこと。もちろん、外のカフェは自然の生命力たっぷりで虫達もセットでついてくるのだが、パソコンに近づいてくるアリたちをたまに息で吹き飛ばしながら、考える時間が好きだ。

この2週間、カントーのカイラン水上マーケットにブース出展し、他のブースの商品を試したり、オーガニック飲料を飲んでみたり、タイの水上マーケットとは異なりBtoBの市場の現状を知ったり、日本から友人がカントーを訪れてくれて個人旅行でカントーへ来る際の初めての印象や課題、観光地としての魅力、街の雰囲気を共有したり、農業観光セミナーに招待いただき、メコンデルタエリアの今後の観光開発についてのアウトラインを学んだ。そして、現在ドンタップ省の省都であるカオラインにてベトナムの各省都が参加する観光ウィークにブース出展を行っている。

「農業と観光はデザインで繋げられるのかもしれない」

そう思ったのは、ホイアンを紹介しているブースで、今や世界で「一番訪れたい都市」に選ばれたベトナム・ホイアンの観光パンフレットに出会った瞬間だった。すぐに手に取りたくなるデザインだったのだ。

一目みて、かわいい!そして文章を読みたくなる。ベトナム語と英語さえ「デザイン」になる。ポストカードにもなっている。

しかもそのホイアンがあるクアンナム省は今回ドンタップ省と共同主催で観光ウィークを行っている。理由は、クアンナム省も古くから地元の手工芸品や農業を主力産業としており、環境が類似している為であり、今後の互いの観光振興のために今回の開催に至ったと記事で読んだ。

クアンナム省のパンフレット。場所や名前を聞いたことがなくても、まず「知りたい」という人々の好奇心を喚起することが大事。

ちなみにこちらはホーチミンのガイドブック。ホーチミンに来る人々へのThe Code of Conduct(行動規範)が書かれている。

さて、今回のイベント主催のドンタップ省の観光パンフレットは、英語はあるが申し訳ないが写真の質が低く、そもそも写真の選別が「なぜ、この写真?」と思うような、瞬時に良さが伝わらない。どの観光地も場所も、魅力はあるはずなのだが、バイクを基本の交通手段としているため、あえてそこまで行こうとも思えない。情報がない。

ボヤけている…。そして、右下には、ゆるキャラ。

これは…何を伝えたいのだろうか。

ただ、実際に訪れたXeo Quitでは、英語を話せる方もおり、現地の詳細を教えてくれた。素敵なボート体験もできた。(このXeo Quitに関しては別の記事で紹介する)

行くまでの道中では、手作りの竹細工やカーペットなどを製作している地元の人々をバスの窓から眺めていた。パンフレットを読むだけでは伝わらない魅力が多すぎる。

あと、持ち運ぶ人のことを全く考えていない、三葉の形のソクチャン省の観光情報ペーパー…。まぁ、かわいいけど。

これはソクチャン省の、ローカル食専用ガイドブック。食べたい…とは思わない。

デザインというと、何かの商品があって、その魅力を伝えるためのパッケージデザインや、家のインテリアを考えるインテリアデザインなどを想像することは簡単にできるが、「街をデザイン」するということは、今後の観光振興にとても重要になってくる。世界中の街には、地元の人々の生活があって、外から来る人々は、地域の街に数日であったとしても住むことになる。観光客としての旅のルートを考えていたのは過去の観光ツアーであり、これからは環境汚染や大気汚染、海洋のプラごみ問題も含めて、地域の魅力を発掘しながらも同じ人間として「共に生活の仕方をデザイン」していかなければならない。もはや、観光の意義はそれしかないのではないかと思う。

メコンデルタの主要産業は農業だ。私たちが生きていく上で欠かせない、大切なエネルギーがこの地に溢れている。そんな農業を、より「オシャレ」に見せることが、デザインにはできるかもしれない。

そんなことを考えていて、ふと「農業 デザイン」で検索していたらfarmsteadという「農業をデザインで変える」ビジョンのデザイン・ブランディングカンパニーのサイトに出会った。JICA北海道にてJICA日系研修も行っていた。まだまだ自分には、このメコンデルタの巨大な地域の中で、1%しかこの土地の魅力や人々を知ることができていないのかもしれない。けど、すごくオシャレなカフェを見つけたとき、「ベトナム語ができないかもしれない」「行くときに道に迷うかもしれない」という不安を忘れ、ただ訪れてみたい、人々の話を聞きに行きたい、という好奇心は、やはりデザインから来るものだと、自分の無意識の行動を実感した瞬間、

「農業と観光はデザインで繋げることができる」

と改めて思った。

どでかく1枚ボヤけている写真!最初の見開きのページ。

この料理の写真もボヤけている…。美味しいのだろうが、美味しそうではない。

同僚に、このパンフレットの写真、どう思う?と聞いたとき、「うーーん、どうって?」と浮かない顔をされたが、「ベトナム人は、自分のセルフィー写真を撮影するとき、高画質アプリを使ったり、ホワイトライトの設定したり、どう写るか、どう発信していくかすごく大事にしてるでしょ!魅力ある土地や食を魅力ある写真で撮影して発信していくのは、それくらい大事!」と、例えて伝えていくことにした。

メコンデルタは「Boring Delta」(退屈なデルタ)と揶揄している人々にも出会った。「食べ物しかない」と。「平地で、高い山もなく、海もない」観光業に関わってきている人々でさえ、そう言葉に出す。

「メコンデルタは、特にカントーは美食の街としてデザインできる潜在能力がある!というか、そもそもこれだけ世界中の食とカフェ巡りが大好きな日本人が、これだけ太鼓判を押せる土地はなかなか無い!無いものを嘆いても仕方がない。あるものを強化していく!」と半ば強引に、強さの魅力を伝える。

ホイアン市人民委員会の方も言っていた。

「私たち(地域)の強さは、私たちが持っているものからしか作られない。今あるものを発掘し、強化していく。」

観光開発センターの今ある地図やガイドブックで、主要観光地が紹介されているように、「この建物は〇〇年に建設されて、〇〇に利用され、訪れる観光客を魅了している。行き方はこうで、何時に閉まって、入場料はいくらで・・・」と文章で述べるのだとしたら、それはそれは長文で、この土地の場所情報を書くことができるのかもしれない。でも、私たちは、今の時代どこでも得られる情報を、わざわざその土地に行っても得たいと思うのだろうか。知りたいのは、その土地の人々の言葉であり、ライフスタイルであり、目に見えるモノの背景(物語)である。

現在進行形であり、伝えていくしかない。

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