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競争原理を捨てて、公共の価値を生み出すことを求める【本:オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る】

およそ3か月、20時間以上の取材を受けながら、日本とオンラインでつないでディスカッションをしながら作られた著書。

前回、台湾のデジタル担当大臣オードリー・タン氏が出演される前に、こちらの著書も同時に読み進めていた。そして、ようやく、全てを読むことができた。

・部門間を横断する問題をデジタル技術をつかってクリアにしていくことが、デジタル担当政務委員としての私の仕事

・AIは、人類がどういう方向に進みたいのかを問いかけている

・科学を理解したからといって、それで「物事のすべてを理解した」という傲慢さを持ってはいけない

・台湾における新型コロナウイルス対策の「3つのF」
Fast, Fair and Fun 

・Humor over Rumor 

・ただし、海外の人たちに台湾のコロナ対策について説明する場合、いきなり「トイレットペーパー不足という噂が流れ始めて」などと言っても、彼らはなんのことだか理解できない

・概念と事実をつなぐ必要がある

・競争原理を捨てて、公共の価値を生み出すことを求める

・「創造力」の定義というものは、状況に応じて常に変化するということ

・私が政治的問題とは離れた事柄に関心を寄せるのは、単純な興味から出てくるものです。
1.「自分自身の生活という角度から物事を見る」という制限を取り払えること
2.相手の個人的な経験や背景から述べられたことを通じて「世界はこのような視点でも解釈できると理解できる」こと

相手が経験したことが将来自分にも起きたとき、私は相手とはまた違う方法を選択するかもしれません。つまり、未来を学習することができるのです。相手の経験を知ることから自分の視点を学ぶことで、未来に同じようなことが起きたら、きっと自分なりの新しい話し方ができるでしょう。

・重要なのは「どうすれば、各世代が一緒に政策を作っていくことができるか」を考えること

・情報格差を埋めるためには、何か一つ二つだけを行えば良いということではありません。誰も置き去りにしないインクルージョンの力を確保しなければならないのです。そして、インクルージョンが確立された後は、「持続可能性」、さらには「環境」という二つの価値観を確立するべきです。

・台湾社会の利点は「社会そのものが強い」ということ。地域の発展を支えているのは、共同組合やコミュニティカレッジ、あるいは数多くあるNPO(非営利組織)の存在

・起業したり自分が追求したいことを行おうとすれば、当然リスクを伴いますし、必ずうまくいくという保証はありません。ただ、たとえ失敗したとしても、少なくとも自分の健康や子供の教育が犠牲になることは絶対にないというのが、現在の台湾社会です。何事もそうですが、強いプレッシャーの下で競争を強いられると、相手に丁寧に接する余裕がなくなります。つまり、自分の精神の安定が失われてしまうのです。それは資本主義社会における競争原理の弊害とも言えるでしょう。

・両親はともに、「子供の探求心を抑えつけはいけない」という強いポリシーを持って、私を育ててくれました。新しい考え方を得るには、周りの人の気持ちにもっと注意を払うべきなのです。

・プロジェクト・グーテンベルク
著者の私語一定期間が経過して著作権の切れた名作などを全文電子化してインターネット上で公開するというプロジェクト

「どの作品のどこに誤字脱字がありましたよ」と伝えるためのメールを書くのもプロジェクトに対する貢献の一つ、このプロジェクトの存在を宣伝することも同じく貢献の一つ

みんなでプログラムをより良いものにしていくという面白さを学ぶ

・14歳で学校を離れ、ネットで自主学習を始め、15歳で起業、18歳で米国へ

・どのようにして知らない人と信頼を担保するか、を解決しなければならない

・デジタル空間とは、そのような「未来のあらゆる可能性を考えるための実験場所」ではないかと私は思っている

・「ひまわり運動」で初めて政治活動に参加、以後、権力や強制といったものをどのように平和的に転換させればいいのか、皆がお互いを理解し合った新しいイデオロギーに持っていくにはどうするのがいいのか、といったことに関心を持っている

・新台湾人
「就業ゴールドカード制度」台湾政府が実施しているビザ優遇措置で、特定の専門技術を持っている外国人にはビザが優遇して発行される制度。このゴールドカードを取得すれば、3年間台湾に住むことができる。また、ゴールドカードを取得した人は、雇用主を探す必要が無い。自営業を始めるのもよし、外資系企業で働くもよし、と非常に自由な制度になっている。さらに、自分のもともとの国籍を放棄せずに台湾の国籍を取得できるという制度も設けている。

・デジタル担当政務委員の候補者の要請を受けた際の3つの条件
1.行政院に限らず、他の場所でも仕事をすることを認める
2.出席する全ての会議、イベント、メディア、納税者とのやりとりは、録音や録画をして公開する
3.誰かに命じることも命じられることもなく、フラットな立場からアドバイスを行う

・インターネットは少数者の声をすくい上げる重要なツール
vTaiwan, Join 
国民はこのプラットフォームを利用して、自らが考えた実施可能な政策アイデアを出すことができる

・見えにくい問題を顕在化し、解決に導く
PDIS(Public Digital Innovation Space)
1.何らかの被害を受けていて、立法委員に知り合いもいない人や何のツテもない人に、問題を解決できるポストにいる人間との接点を作ることができる
2.発起人が提唱する考えをより多くの人に知ってもらうこと。またその中から志願者を募り、彼らに私たちがまとめたマインドマップ(キーワードやイメージを中心に置いて、思考の過程を整理したもの)を見てもらい、事実と感情を分け、実現可能なアドバイスを行いながら、具体的な構成を一緒に考えて報告書を作成する。「問題の核心がどこにあるか」を誰でもすぐに知ることができる

・鶏婆(ジーボー):「母鶏のように、おせっかいでうるさい」という意味。これは、自分に直接関係することではなくても、能動的に貢献したいという心持を表す。このような精神こそが、民主主義では非常に重要な要素の一つになると思う。

・オープン・ガバメントは、政府と人々の間に信頼関係があってこそ、成り立つ。政府が人々を全く理解せず、政治に参加する必要もないと感じたならば、人々は最終的に政治に対する関心を失う

・このストーリーの状況かにおいては何が重要であるか、どの価値であれば、よりクオリティの高い精度で実現できるか、について言語化しながら考え続ける

・大事なのは、マイノリティかどうかに関係なく、その人の貢献を社会が認めるかどうか

・デジタルには2つのメリットがある
1.企画段階で未来がどうなっているかをモデル化できる
2.現実世界のロジックによって行われた結果よりも良くなる。すぐに違った方法を新たに選択することが可能。

・持続可能な発展
・イノベーション
・インクルージョン

・他湾の人たちが素晴らしいと思うのは、政府が着手するのを待つのではなく、必要だと判断すれば民間で始めてしまうスピードとパワーを持っていること

・高校へ行く意義は、「自分がどんな問題を解決したいのか」という関心を探ること。今の高校制度では、学ぶ科目が選択制になっているので、自分が直面している状況や問題意識、関心の対象をすべて高校で学ぶ科目に落とし込むことができる。それによって、「自分が社会の何に関心を持っているのか」「社会の要求をどう受け止めるのか」「どのようにして共通の価値観を生み出すのか」などを考えながら、学ぶことができる。

・様々な学習ツールを利用して学ぶ、生涯にわたる「学習能力」が重要になる、様々な分野を学ぶことに楽しみを見出すことができれば、人生の幅はもっと広がる。

・現在では、EMBA(Executive MBA)の学位をネットで取得することも可能になっている。大人にそうした経験があれば、おのずとネット教育の良さも理解されてくるでしょう。

・デジタルに関する「スキル」よりも「素養」を重視する
・プログラミング思考

これらのツールを利用して、物事を見る方法や複雑な問題を分析する方法を訓練すること。このアプローチを習得する人が増えることで、気候変動など、より大規模な共通の問題をより多くの人の力で解決できるようになる。大きな数字や統計データを見たり、地球規模的な問題に直面すると「人間はなんと小さな存在か」と感じ、「こんな大問題に対処するのは不可能だ」と感じることがありますが、それはプログラミング思考ができていないからなのです。一人で解決しようとするのではなく、「共同で考えればいい」と考えれば、対処しなければいけない問題が大きすぎるとか、手に負えないとはなりません。そのような複雑かつ大規模な問題を把握する能力を養うことは、社会に対する大きな貢献を行うことになると私は考えています。

・デジタル社会で求められる3つの要素
自発性、相互理解、共好

・相互理解とは、お互いの立場あるいは人生の経験がまったく異なる私たちが、いかにして相手との共通の価値を見つけ出して、それを共有できるかどうかということ。そのため、持続可能であるかどうかが非常に重要となる

・アート教育を重視するのは、既存の可能性な未来のある部分を他の人に見せることで、それにより未来の可能性を開こうとするもの。サイエンスとテクノロジーのみで社会の構造的な問題を変えようとするのは極めて難しい。

・普遍的価値を見つけるために、異なる考え方をする人たちと交わる
自分とはまったく異なる文化、異なる世代、異なる場所にいる人の話を聞き続けることで、おのずと「世界共通の普遍的な真実、普遍的な意見というものがある」ことを発見する

・日本のRESAS(地域経済分析システム)から学んだこと
優れているのは、エビデンスに基づいた政策立案を行っている点。また、面白いのは、それぞれの地方で行われた政策が必ずしも成功しているとは限らないということ。たとえ失敗したとしても、その試みが人口の還流に役立ったか、雇用率の上昇に役立ったかなど、どんな良い影響や悪い影響を与えたのかを知ることができる

・デジタル化成功の鍵は、デジタルネイティブ世代が握っている
若い人たちが意見を表明したり、政治に参加できる機会を積極的に設けて頂きたい。日本では、「政治の新しい方向性を導き出すのは若者たちである」ということについて、国民的なコンセンサスが十分に得られていないようです。また、若者の側にも「公益の実現に対して積極的に行動する」という意識がまだ足りないように見えます。

・タン氏が好きなカナダのシンガーソングライターの詩人
「すべてのものにはヒビがある。そして、そこから光が差し込む」Anthem

・この世界は完璧ではありません。欠陥や問題点を見つけ、それに対して真摯に取り組むことこそが、今私たちがここに存在している理由なのです。

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