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一瞬にかける情熱|おじさんトリオのJAZZ
私が好きだなと思うもの、例えば映画や漫画や小説、エッセイには、長い人生の物語ではなくて、日常のほんの一部分が切り取ってあるものが多い。
何かを成し遂げることではなくて、ほんのひとときにかける情熱や、何気ない日常の何気ない人とのやりとりとか。
そういうものが持つ輝きを感じ取れるように、感じやすい心をいつも準備しておきたいなと思う。
休日の午後みないた音楽
わたしには籍は入れていないけれど、4年間同棲しているパートナーがいて、趣味嗜好がわたしとよく似ている部分がある。
彼はジャズが好きで、最近の流行りの曲はあまり好みじゃないらしい。
「休日の午後みたいな音楽が好き」
言いたいことがとてもわかるし、そう言う彼が好きだとわたしは思う。
半年に1度のJAZZイベント
わたしの住んでいる街は、半年に1度、全国のジャズバンドが集まるイベントをやっている。
彼は昔からジャズが好きだったけど、ジャズのイベントがあるのを知ったのは、私に会ってかららしく、ここ数年は毎回参加している。
大収容のイベントホールだけでなく、ジャズバーや、いつもは喫茶店をやっているところなど、いろんなところが会場になっていて、たくさんのバンドが各会場で演奏をする。
チケットを購入すれば、一日中、いろんな会場をまわることができる。
熱いおじさんトリオのJAZZ
わたしも彼も、大きなホールで聴く演奏よりも、小さな喫茶店でトリオとか少人数の演奏を聴くのが好きだ。完全に好みの問題。
特におじさん達が”一生懸命”って感じの演奏をするのが好き。生の音楽を感じるままに感じてよくて、意識しなくても、その瞬間わたしのからだの中は音楽だけで満たされる。
「おじさん達がここまで熱く自分をさらけ出すのはなんでだろう」「すごいなぁ」「かっこいいなぁ」と思う。
今までかけてきたもの、今感じていることが、たった数分の音楽に流されていく。演奏が終われば音は消えるけど、演奏していた人、聞いていた人の中に、何かが残る。
はじめてのJAZZイベントの印象
はじめてこのジャズイベントに彼を連れて行ったとき、生で演奏を聴いたのは初めてみたいで、彼のうれしさを隠し切れないような横顔を見て、演奏よりそっちの方に感動してしまった。
「いいな。何か一生懸命になれるものがある人は。」そんなことを言っている彼が、うれしさを隠し切れずに自然に口角が上がっていて、ほんとうに「ニコニコ」の表現がぴったりのように目を細めて、演奏を聴いている。
なんだか「すごいすごい」と思って、演奏中に何度も彼の横顔を見た。最初のジャズイベントの印象は、彼の横顔に持っていかれた。
一瞬のきらめきの先
普段、自分から人に話しかけたりしない彼だが、おじさんトリオの演奏がすべて終わった後、特に気に入っていたピアノのおじさんのところに行って「ありがとうございました」っておじぎした。
そんな光景を見れたことに、わたしはそのピアノのおじさんに「ありがとうございました」って伝えたいと思いながら、わたしもお礼を言った。
誰かがつくった一瞬のきらめきは、思いがけない方向にも届いていて、なにかをひっそり動かしているんだと思った。
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