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先生!

「先生!」

この一言だけを聞いて、あなたはどんな情景を思い浮かべただろうか?

男子学生が遠く離れた教師を呼び止める様子だろうか、はたまた女子高校生が好きな教師に対して告白する前の姿だろうか、または不治の病を宣告された患者が慈悲を求める場面だろうか。

「先生」

この言葉にはそれぞれのストーリーが詰まっていて、それぞれの思いが入り組んでいる言葉だ。

そんな「先生」に関する話を今日はしたい。



自分は今、日本語教師をしている。大学では確かに日本語教育専攻だったのでまさに夢を叶えたような聞こえがするかもしれないが全くそんなことはない。

この選考を選んだのも、田舎から東京に行きたくて手が届く国立大学を選んだからであって将来日本語教師になるなんて一ミリも考えてなかった。

高校生ながら日本語教師の給料を調べたときに「これで生きていけるのか...」と絶望を抱いたことも今でも明確に覚えている。

そう。自分は大学生活を楽しむためにこの学科を選んだのであって、日本語教師になるために勉強を始めたのではない。

そんな僕は大学を留年している。

卒論が書けなかったからだ。

「Youtubeで教える日本語教育」

そんな内容で卒論を書こうとしたものの結局は動画の撮影すらほとんど行えずサンプル数が少なすぎて研究とは言えないとのことでドボンだった。

当時撮影した動画は遺作となるだろう。

ちなみに僕は大学を休学し留学している。

自称、休学、留学、留年のトリプルスリー!

もちろんこのネタが受けることもなく、口から発した時点で白い目線を浴びる。

僕は大学7年生で卒業した。

自称学部マスター。

当然このネタも所謂常識を持った人には笑う要素が全くないようだ。


大学を卒業してからは当然のことながら日本語教師とはかけ離れた生活をしていた。ろくに就職もせずに海外をプラプラと放浪し、結局はアルバイト、所謂フリーターという身に落ち着いていた。

当時はそれなりにその生活も楽しんではいたが、年齢を重ねるごとに将来の焦りというのを感じてきた。

「おれ、このまま生きてていいのだろうか」

そんな矢先、シンガポールに留学していた時に知り合った台湾人の友達から急に連絡が来た。

「How's going with you?」

そして僕は正直に伝えた。

「I'm not enjoying my life at this moment」



そんなやりとりから10日も経たないうちに僕は台湾のワーキングホリデービザを取得していた。

自分でも驚くほどの決断と行動の速さだ。逆に言うと当時の生活に本当に飽き飽きしていたのかもしれない。おそらくアルバイトとして生活していて失うものが何もないと言う状況もいい意味で働いただろう。

その友達とはシンガポールでも本当に仲が良くて信頼していた。そんな彼に誘われ、住む場所も提供してくれると言うので不安もほとんどなかった。

唯一あるとすれば中国語ができないことくらいだろう。だけど謎の自信に満ち溢れていた。

なんとかなるだろう。行こう台湾。


台湾に行って僕は悩んだ。

中国語が全くできないからだ。

中国語もできなければ、友達もいない。当然の如く仕事もない。

辛い生活を送っていた僕のもとに突然見知らぬ人からFacebookで連絡がきた。

「発音に関するYoutubeの動画を観ました。すごくいい内容でしたね」

まだ、こんなの観てる人いるんだ。半分冷めた気持ちでメッセージを観た。

「今シンガポールにお済みなんですか?」その方は聞いた。

自分のFacebookのプロフィールはシンガポール在住にしたままだった。

「今は台湾に住んでますよ」そう答えた。

すると急に相手は食いついてきた「え?台湾?!台湾のどこですか」

なんだこの人?そう思いながら返事をした。

「桃園です」

すると何かに囚われてるのかと言う感じの返事がきた。

「桃園!!!!??????」

「はい」やはり冷めた気分で僕は回答した。なんなら相手がちょっと怖い。

「もしよかったら日本語学校で働きませんか?私の働いている塾を紹介します」

「え?????」彼の一言で今度は自分が一気に取り乱してしまった。変な相手だと思っていたら急に自分に仕事をくれるだなんて。

こちらとしては仕事の当てもなかったので願ったり叶ったりだ。しかもまさかの日本語学校で日本語教師。僕の大学の選考だ。


そうして僕は台湾で日本語教師としてデビューした。

デビューは散々たる結果であれほど恥ずかしい思いも、悔しい思いもしたのは最初で最後かもしれない。

それでも僕は日本語教師としてデビューをした。

まさか大学生活を楽しむために行った選考の日本語教育に自分が助けられるとは。

人生とは想像できないことの連続だ。

自分でも今でも不思議に思う。

自分が人に教えていいものなのか。

自分が役に立てているのだろうか。

自分の授業で満足してもらえているのだろうか。


「先生!」

そんな考えを頭の中で張り巡らせている時、急にこの言葉聞こえた。

そして無意識のうちに自分は反応していた。

そうだ、自分は「先生」なんだ。

いつもありがとうございます。僕は夢や目標に向かって努力する方をサポートしたいと考えています。皆様からの支援はレベルアップするための学習資金として使わせていただきたいと考えています。是非よろしくお願いいたします!!