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喜びと苦しみの狭間で

ベッドに横になる。もうずっとこの場所とトイレを行き来している気がする。シャワーを浴びるのもしんどいし、お腹は空いているけれど気持ち悪いし食べたいものがない。

こんなに体調が悪いのに、少し喜びの感情が入り混じる。そんな矛盾する出来事が、この世には存在していた。

命を授かることによる代償。そう、つわりである。

つわりは病気ではない。そして、原因もはっきりと解明されていない。ゆえに特効薬はない。
妊娠をした多くの人がつわりに苦しんでいるというのに。

つわりの症状は十人十色だ。ほとんど症状がない人もいれば、水も飲めずに入院するほどひどい人もいる。
でもそれは比べるべきことではなく、全妊婦が文字通り体を張って小さな命を守っているのだから、みんな等しくゆっくり休む権利があるはずだ。

かくいう私も、妊娠しながら働いている諸先輩方を見てきたが、正直こんなに大変だと思わなかった。安定期に入る前の、お腹の膨らみも目立たず、あまりみんなに報告できない時期が一番辛いだなんて、知らなかった。

今回この記事では、私が妊娠初期に経験したつわりの症状と、個人的に助けられたアイテムや周りのサポートについて書き留めておく。もちろんつわりの症状はみんな違うから、これが絶対的な解決策ではない。
でも、今つわりに苦しんでいる妊婦さんたちや未来の妊婦さんたちが、少しでも共感して楽になったら嬉しい。

それに、社会はもっと妊婦のことを知るべきだと思う。過去の自分にも伝えたい。周りの大事な人が妊娠したとき、電車などでマタニティマークをつけた人と出会ったときなど、様々な人たちが少しでも関心を持ってもらえたら幸いだ。

(6000時超の大作になってしまい、「私大変だったでしょ!?」とアピールしているようだが、記憶の薄れぬうちになるべく全部記しておきたかったのでご承知おきいただきたい。
こんな読めないよ!という方は目次の最後「おわりに」だけでも読んでもらえたら嬉しい。)

胃腸・食系

嗚咽/嘔吐

つわりで一番イメージがつきやすいであろう、代表的なこの症状。
私の場合は、常に気持ち悪いというより、何かにつけえずく。これから記す様々な症状に誘発されて嗚咽をすることが多かった。

私は昔から、あまり体調の変化に気が付きづらいらしい。あるいは、自分の体調は気概でなんとかなると思っている。これくらい大丈夫だろうと、少し我慢をする癖がある。
だから、私の嘔吐は急に訪れる。

なんとなく気持ち悪い感じだが吐くほどではないと思っていても、トイレに行った途端に嘔吐したり、顔を洗ってたら嘔吐したりといった具合だ。

吐いたら楽になる人もいると思うが、私は吐くことが怖くて、なるべく我慢をしていた。なんだか、トイレで吐いている自分が惨めに思えたのだ。トイレに行くと反射的に吐いてしまいそうで、なんとか気を紛らわせようとした。

その甲斐もあってか(?)、ひどい時期で2〜3日に1回程度しか嘔吐はしていない。

〈対策〉
「つわりバンド」という吐き気を抑えるツボを刺激するものを買ったが、個人的にはあまり効果なし。
以下に記載する症状を改善することにより予防するしかない。

げっぷづわり

これは体調が落ち着いてきた今でもまだある。私のつわりのバロメーター的な症状だ。ちょっと頑張るとげっぷが増え、げっぷが出始めるのは体調が悪くなっていく前兆だったりする。
げっぷも、空気が体の中に溜まっている感じも、これが結構しんどい。

〈対策〉

  • 右側を下にして横になる。胃の形状的に胃の内容物が腸に流れやすくなるらしい。気休め程度だがなんとなく良くなる気がする。

においづわり

あらゆるにおいに敏感になった。キッチン、冷蔵庫、お風呂場や洗面所、掃除機。人工的なにおいもダメで、夫の使っているヘアワックスは何度も買い替えてもらった。そもそも夫のにおい自体がダメになって、一緒に寝ないどころかひどいときは近寄らないでほしいと懇願した。ごめん。

あたたかいごはんもにおいが強く、冷たいものを食べることが多くなった。寒いときにほかほかのごはんが食べられないのは、身も心も冷え切ってしまうようだった。
食べ物でいちばんダメだったのはにんにく。体調が比較的良いときでも、ちょっとでもにんにくが入っていたら嘔吐してしまった。

〈対策〉

  • 家事をなるべくやらない。料理は本当に無理なので、夫に買ってきてもらうかコンビニやUberに頼る。Uberは利用頻度がかなり上がったので、配送料が無料になるUber Oneに登録した。こんなときこそ文明の力を頼ろう。

  • ごはんは冷ましてから食べる。

  • マスク必須

  • 無香料のものor自然香料のものに変える。パートナーなど近くの人にもなるべく変えてもらう。

食べづわり

空腹になると気持ち悪い。満腹になりすぎても気持ち悪い。故にこまめに胃を満たさなければならない。
最初の方は、「チキンラーメン食べたい!」「コンビニの梅おにぎりがこんなに美味しいなんて…」と自分の変化に楽しめる余裕もあった。一時的に特定の食品ブームが来ることもある。

食べたいものがあるうちはまだいい。だが、徐々に食べたいものがなくなっていく。食べたいものを届けてもらったのに、いざ食べるときにはもう食べたくないときもある。
それに、妊娠中は食べれらるものが限られてくる。生ものは食中毒に気をつければならないので控えるし、生ハムや生肉、ナチュラルチーズはNG、うなぎやマグロ、昆布の量に注意して……。
好きなものを何も気にせずに「美味しい」と食べられることがどれだけ幸せなことか、身に染みて実感した。

ちなみに妊娠初期はまだ胎盤が完成していないので、私の食べたものの栄養が赤ちゃんに影響を及ぼすことは少ない(上記に挙げたような一部の食品やアルコールを除く)。なのでこの時期はバランス云々は考えず、食べられるものを食べられるだけ食べれば良い。

〈対策〉

  • すぐに食べられるものを枕元に置いたりかばんに入れたりして常備する。私がずっとお供にしていたのは、ピュレグミの梅味とレモン味、発酵バターのビスコ。

  • 食べたいものがわからないときは、いろいろな種類のものを買ってきてもらう。「食べられるもの当てゲーム」のような感じで夫が明るく振る舞ってくれたし、私が食べられなかったら嫌な顔をせず食べてくれたので、本当にありがたかった。

  • 食べられそうなものを少しストックしておく。ゼリーやいちごなどのフルーツはだいたい冷蔵庫に入っているように買ってきてもらっていた。ただ、大量ストックは禁物。ブームは一時的なものであることが多い。

  • パートナーの方は、妊娠初期はあまり栄養バランスを真剣に考えず、「食べたほうがいいんじゃない?」と押し付けず、食べたいものをすぐに食べられる環境を作ってあげてほしい。そして、たとえリクエストされたものが食べられなくても「せっかく買ってきたのに」と思わないでほしい。

よだれづわり

常によだれが出て口の中が不快。飲み込むと空気も一緒に飲んでしまい、空気が溜まってげっぷづわりに繋がる悪循環。
よだれのせいなのかわからないけれど、なんとなく口の中がずっと苦い気もする。

そのせいか、水をあまり飲みたいと思わなくなってしまった。味がついていないと美味しくない。

〈対策〉

  • グミやキャンディーで紛らわせる。小梅キャンディーが私のお気に入り。梅味のものに救われることが多かった。

  • 水分補給は大事なので、水が飲めないなら他の飲み物で代用を。炭酸が飲みたいこともあったがげっぷづわりがひどかったため、私はりんごジュース(特にTropicana)を愛飲していた。

胃痛

何も食べたくないときにたまに訪れる。しかもかなり痛い。

〈対策〉

  • 胃が痛いときは柑橘類を避ける。一時期グレープフルーツゼリーやオレンジジュースにはまっていたことがあり、なんとか胃を満たすために摂取したが、余計痛くなったことがある。りんごジュースやももゼリーに替えたらいい感じだったので、それからは私の必須アイテムだ。

  • 胃が空っぽだと余計酷くなりそうで、消化の良さそうなものを選んで胃を満たすなどした。

メンタル系

無気力

いろんなことが積み重なっての結果だとは思うが、ホルモンバランス的に陥りやすい人は多いようだ。個人的に一番辛かったかもしれない。あぁ、こうやって鬱になっていくのかと思った。

ベッドに横になり、手元にはスマホ。漫画アプリを眺めていたけれど、もう見る元気がない。何もしたくない。本を読む気力も、映画を見る体力もない。
誰とも話したくない。連絡が取れない。たった一通のLINEやメール、一本の電話ができない。

インスピレーションが湧かなすぎて仕事にならない。(このとき私は起業準備中)

がんばろうとしても何もできないし、人間らしいまともな生活を送れず、世間から取り残されたような気分になる。

〈対策〉
なし。時が過ぎるのを待つしかないと思う。

疲れやすさ

PCの前に座って少し作業しただけで息が荒くなる。
オンラインmtgを1時間しようものなら、ぐったりして眠くもないのに横になるしかない。
ちょっと長い時間散歩をしたら息切れして嘔吐。シャワーを浴びるだけで具合が悪くなる。

〈対策〉

  • 無理をしない。疲れたら横になる。

  • スケジュールを入れるときは余裕を持つ。仕事がある場合は、一緒にやっているメンバーに妊娠や体調のことを伝えておく。

  • シャワーを毎日浴びなくても死なない!シャワーもお風呂も入れるときだけ入る。私は2日に1回くらいに減らしていた。お風呂は久しく入っていない。(シャワーを浴びなさ過ぎるとにおいや痒みがひどくなるので私はこれくらいだったが、1週間くらい入らない方もいるようだ)

  • 出先で急に具合が悪くなるのが怖いので、外出時はなるべくパートナーと一緒に。私は電車よりもパートナーの運転する車の方が安心だった。

不眠

いつでもどこでも寝られる私が、2〜3時間単位でしか寝られなくなった。ひどいと1時間おきに起きる。妊娠初期は頻尿になることが多いためトイレなどで起きることもあるが、理由もなく寝られないことも多い。
目が覚めたときにまだ暗いと絶望。朝が来るのが本当に待ち遠しかった。

〈対策〉

  • 寝れるときに寝る。昼寝をしてもしなくても夜は寝れないことが多いので、いつでも寝られるなら寝る。たまに意識が飛んだようにいつの間にか寝ていることもあった。

  • 夫と別々に寝る。においがダメになったこともあるが、いびきなど諸々の刺激が気になってしまうし、自分が寝られなくてもぞもぞしたり起き上がったりするのに気を遣ってしまう。布団を新たに買い、私は夜中の空腹に耐えられず小腹を満たすことも多いのでリビングで寝た。

  • Kindle端末を利用する。スマホを見てしまうこともあるが、やっぱりブルーライトは逆に覚醒されてしまう気がするのでなるべく避けたい。紙の本は暗い中だと難しい。Kindleであれば紙のような質感の上に色調調整ライトがついているし、横になりながらでも読みやすかった。私は気力的に簡単なエッセイや短編を読むことが多かった。

クリスマスに買ってもらったKindlePaperwhiteが大活躍

情緒不安定

無気力になり、眠れなくなり、自分に価値がないと自暴自棄になって涙を流した。
1時間おきに目が覚めてしまった時は、夢と現実の狭間でストレス度がMAXになり、お酒を飲んでぱーっとしたい!でも飲めない!!と号泣した。
無性にものを投げたくなったり壊したくなったりすることもあった。

〈対策〉
パートナーに話を聞いてもらうくらいだろうか。

身体の変化

乳房痛

これに関しては、かなり甘く見ていた。妊娠により胸が張って痛くなることは知っていたが、大したことないと思っていた。
実際は、痛みで起きてしまうほどだった。「イタタタ」と声を度々出していた。特に、つわりの症状軽減のために横向きで寝ることが多くなったから、胸が圧迫されて痛みが出る。

胸自体も大きくなるので、今までのブラがとても窮屈になりつけられなくなった。

〈対策〉

  • ワイヤーのブラはしない。常にナイトブラをする。マタニティ用の下着も販売されているので、私も現在購入を検討しているところだ。とにかく、締め付けのない下着を選ぶのがいい。

肌の乾燥

普段から乾燥肌だが、とにかくひどい。いくら保湿しても乾燥して痒い。
特にひどかったのが、頭皮と唇。いつも頭が痒くフケが出て、唇はガサガサだった。

〈対策〉

妊娠線の画像はちょっと閲覧注意なので、気になる方は調べてみて。

おまけ 妊娠超初期の症状

この2つの症状は妊娠がわかる少し前からあり、妊娠生活に慣れるまでの前半だけ苦しんだ。

貧血

妊娠が発覚したきっかけの症状だ。なんとなく気持ち悪いと思ってはいたが、空腹のせいと思って駅に着いたら何を食べようかと考えていたときだった。
食べるものを電車の中でスマホで検索するうちに、どうしようもなく気持ち悪くなり、頭がくらくらしてきた。

なんとか電車を降りたはいいものの、ベンチが見つからない。
もう無理だとホームに座り込み、冷や汗と手の震え、荒い息が鎮まるのを待った。

こんなに顕著な症状はこの1回だけだが、くらくらしたり足がむずむずすることがたまにあった。(※むずむず脚症候群は、貧血が原因で起こることがある)

〈対策〉

  • 鉄のサプリを追加したり、プルーンなど鉄分の多い食品を摂るようにした。

熱っぽさ

妊娠がわかるかわからないかぐらいのときからずっと、常に微熱のような感じで体が熱くだるかった。もちろん実際に体温も高く37℃くらい。

〈対策〉

  • 首など太い血管が通っているところをなるべく冷やすようにした。私の場合は手が冷たいので、自分の手で体を冷やしていた。笑


おわりに

気がついたら14項目も挙げていた。随分と長いnoteになってしまったが、読んでくださった方ありがとう。

これだけ書き連ねたが、おそらく私のつわりは、人と比べると飛び抜けて重い方ではないのだと思う。
そして、とても恵まれた環境にいることには感謝をしている。

仕事をしていない時期だったのでいつでも休めるし、夫も一緒にいるときはノンアルコールにしてくれたり、妊娠や出産について学んで理解をしようとしてくれる。
実家も近くにあり、2週間ほどお世話になったときは毎日栄養満点の食事も用意してくれたため、多くの妊婦が悩まされる便秘にもほとんど悩まされなかった。

だから、周りにも大丈夫だと思われるし、自分自身もそう振る舞ってしまうことがある。
悩みだって、上記に挙げていないことだと旅に行けないとか、大好きなお酒が飲めないとか、毎月行っていた美容院に3ヶ月も行けないとか、贅沢な悩みだと思われるだろうこともある。

だけどつらいのだ。入院するほどではないとしても、私は私なりにつらさを感じている。つらさを比較されるのが、つらい。

タイトルには「喜びと苦しみの狭間で」と書いたが、正直苦しみの方が圧倒的に上回っている。
つわりが苦しいのはもちろん、症状が軽い日はお腹の子の命が無事なのか心配になる。
授かりたくても授かれない方もいる中申し訳ないけれど、早く妊婦をやめたいと何度思ったことか。

冒頭でも述べたが、全妊婦が文字通り体を張って小さな命を守っているのだから、みんな等しくゆっくり休む権利があるはずだ。

妊婦に対する理解がもっと広まる社会になるように、切に願う。

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