イノシシから畑を守る方法 猪垣をつくる
一番下の畑を、もう一度、耕し始めました。
ざっくりと耕した後、今度は裏返った草を一つ一つ手に取って、根っこの土を払い、よけていきます。草は肥料にします。
こちらはものすごく時間がかかる作業ですが、コツコツと耕します。
まるでミヒャエル・エンデ氏の童話「モモ」に登場してくるベッポじいさんみたい。ベッポじいさんは、道路の掃除夫で、一呼吸ごとに道を箒ではいていくお仕事です。
畑を耕しながら、肥料やタネのことについて詳しく勉強していきます。
この地では、淡路市ではイノシシ、洲本市から南あわじ市にかけては鹿に田畑を荒らされてしまうお話をよく聞きます。
実際に私は昨年、イノシシを追い払う係をつとめました。
夜中にイノシシがやってくると、近くの牧場の犬が吠えます。(吠えるだけです)
そうしたら私の出番。
窓から外の樹に繋がった太いロープをグッと引っ張って、パッと離すと、そのロープが仕掛けに当たって、ドラム缶で作ったカネが鳴る仕組み。
ビレッジの住人が作ってくれたのですが、イノシシが来るのは大抵、夜11時から夜中2時頃。犬が吠えたら飛び起きてカネを鳴らすのですが、実際には、あまり効果がなくて、私と犬とは、しょんぼりする日々が続き、とうとう、夜中、どこもかしこもラジオをつけっぱなしにする、という都会以上にウルサい日々が続きました。
そんなわけで、もっと専門的に調べようと図書館でいろいろな本を探して、実践をすることにしました。
まず参考にさせていただいたのは、イノシシの専門家・江口祐輔氏の著書「イノシシから田畑を守る」です。
【日本人とイノシシとの闘い】
日本人と野生動物との闘いの歴史は長く、新田開発が盛んだった江戸時代前半は、鉄砲が開墾に必要な道具とされたそうです。
ところが、五代将軍綱吉の鉄砲改により、強制的な追い払いが難しくなると、野生動物たちの逆襲が始まり、先祖の皆さんは「猪垣」(ししがき)を作って対抗。
ただ、柵だけでは完全に防ぎきれず、寝ずの番、イノシシが食べない作物への転換など、様々な対策が凝らされました。
そんな中、寛永二年、八戸藩領内(いまの青森県八戸市周辺)でイノシシのために一万五千石の被害が発生し3千人以上が餓死したそうです。
これが起きた背景には大消費地・江戸の周辺農村で進む商品作物生産の余波があったとされ、江戸近辺で雑穀栽培をしていた農家が養蚕など収益の上がる作目に転換するに伴って、基本食料であるダイズ、雑穀の供給が細るようになり、これを担おうとしたのが水田が少なく畑作が中心だった八戸周辺の農村。
ここで、焼き畑で栽培したために、この問題は起きたのではないかと言う専門家の話が紹介されていました。
焼き畑は、2、3作作ると休耕し、その間、畑は放置されるためにヤブ化し、クズやワラビが侵入する。これらの根がイノシシの好物だというのです。
この状況は現在の中山間地にもよく似ており、耕地の放棄が常態化している中でヤブが増え、イノシシの餌場となり、作物を襲う隠れ場所となっています。
特に1970年代以降、減反政策が本格化してからは、イノシシ被害が増加し、これが決定打となったという意見は多いそうです。
【山のイノシシと里のイノシシ】
私は「山に食べ物がないから里に降りてくる」という話をよく聞いていたのですが、実は山にいるイノシシと里のイノシシとは違っていて、里に降りてきたイノシシは、簡単に食べ物が手に入るから食べにきた不良イノシシ(笑)なんだそう。
今、人間の領分と自然領分とを分けてきた先祖のやり方を見直す時だと著者は語られています。
お手本は江戸時代に作られた猪垣。
イノシシの生活領域と人の領域とを区切る境界線となるもの。現在、知られる最大の猪垣は小豆島にあり、島全体に伸びた猪垣は、120キロにも達するのだそうです。
【イノシシの生態】
イノシシは、犬に匹敵する嗅覚、視力も良く、イノシシを見たらサルと思え、というくらいに学習能力、観察能力も高く、臆病、夜行性だけれど、安全が確認できると大胆な行動にでて障害物に関係なく押し入るのだそう。
また、跳ねる、這う、くぐり抜ける!
高さ70センチまでは楽々、最高記録は120センチを跳び越え、20センチのスキマをくぐり抜け、低い障害物はほふく前進、剛毛は電氣も平気。
匂いや光、音にも最初は臆病だが、すぐに慣れるのだそう。
【イノシシ対策】
・餌場としての魅力を下げる(野菜クズ、果物などを放置しない)
・隠す、見せなくする
・集落への侵入を邪魔する
・ケモノ道を人間が歩いたり、辺りを刈り払う
・田畑を囲う猪垣をつくる
勉強しながら、アートビレッジの周辺を見回り、猪垣の設計をしはじめました。
まず、電氣柵がぐるりとビレッジ周辺に張り巡らせてありますが、張り方が、イノシシの身体の仕組みに対応していないことが分かりました。
それから、イノシシの大好物の「クズ」がビレッジをぐるりと取り囲んでいます。
これじゃまるで、イノシシ農園!!
そこで、クズを刈り取って生かす方法を沢山考えました。
次にコンポストなどの設置場所にも注意が必要です。
イノシシが通る道は昨年から沢山、調べていたので、その道を散歩道にして、こども達のスタンプラリーみたいにしてみても楽しいかな。
人間の匂いがつくと、イノシシは来なくなるそう。
こちらが、サルとイノシシに強い柵の例。
猿落君(えんらくくん)という柵を参考に作れます。これは奈良県果樹振興センターのサルチームが開発した猿害防止柵なんだそうです。
イノシシ退治とかは、男の子たちが大好きそうなテーマだから、子どもたちに任せるとして、私は畑仕事用の服をみつくろいました。
右側は夏用の部屋着にしていましたが、色褪せて来たけど、大好きなカタチなので畑用に。
そして、左側は、偶然に見つけたワンピース。
綿じゃなくて、防水加工された生地のため、土も払えばすぐに落ちるし、ひっつき虫がつかない!
以前はオーバーオールで作業をしていたのですが、いがいとスカート、楽ちんなんですよ。
畑仕事のあとは、しっかりと土を払って、着替えをします。
今回、ご紹介した本はコチラ!
こんなに素晴らしい研究を広めて頂き、ありがとうございます。
イノシシから田畑を守る おもしろ生態とかしこい防ぎ方
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?