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夫がある日、立てなくなった④プロポーズは待ってくれない


2018年、6月。
約半月の入院が終わり、ようやく家に帰れる日が決まった。
日々、色んな点滴をされたおかげで、CK(筋肉を壊す数値)も
だいぶ改善されたようだ。
少ししんどそうではあったが、何より退院できることが嬉しかった。

退院してすぐの週末、どうしても予定を空けて欲しいと言われた。
入院中お世話になったお礼に、手作りのご飯をもてなしたい!
と言ってくれたのだ!

彼の家に行ってみると、玄関から
お花(100均だけど)でデコレーションしてあったり、
コース仕立てで手作り料理を振舞ってくれて
すっっごく感動した。

こんなイタレリツクセリしてもらったことない。
めちゃくちゃダサい部屋着で
スーパーリラックスモードのわたしに、
ガッチガチの彼が近づいてくる。

手には花束と指輪。

「結婚してください。」

ベタ中のベタやん。
ベッタベタやん。

嬉しい。
乙女なら誰しも夢見るシチュエーションや。

けれど一瞬、
まじでええのか、わたし。と
覚悟が揺らぐ。

実は、付き合い出す時、彼から結婚の条件を聞かれた。
わたしは、 健康な人。 と答えた。

もちろん、彼の病気がわかる前だ。
今振り返ると、何と酷な返事だっただろうか。

私の母は、リウマチで身体障害者だった。
兄は、骨肉腫でいつ死んでもおかしくないと言われてきた。

いつもいつも、家族の誰かが急にいなくなるかもしれない
という恐怖心と生きてきた。

もう、そういう思いとは
別の世界で生きたかった。

ふと彼を見ると、
筋肉が弱って膝立ちができなくて
一生懸命、膝立ちに近い姿をとっていた。

何だかその姿がたまならく愛おしく思えて

はい

と返事をした。


後から聞いた話だと、何と入院中にプロポーズを決め
私の知らない間に、主治医に頼み、
一時外出許可をとって指輪を買いに行ったらしい。

入院申込書の保証人の続柄が
「婚約者」になり、
その6ヶ月後、
「妻」
になった。

なんだかんだ、わたしたちの近くで
いちばん変化を見届けたのは、
主治医かもしれない。笑

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