すまほといっしょ

目が覚めると知らない駅についていた。先ほどまで溢れていた乗客はすっかり消えて、一人だけ。俺が間抜けに寝過ごしているのみだった。

ハッとして立ち上がる。遅刻だ。連絡をいれなくては。いや、すでに無数の着信履歴があるに違いない。慌てて鞄を探るが、一向に携帯が見つからない。

鞄の中身をひっくり返そうとしたところで、「にゃー」と鳴き声が聞こえた。

見れば、向かいのシートに猫が座っていた。木製の名札を首からぶら下げており、そこには「すまほ」と書かれている。

あぁ、俺の携帯、猫になっちゃったのか・・・。

そう思うと、なんかどうでもよくなってしまった。自然とちからがぬけて、お尻がシートにぽすんと落ちた。
相変わらず猫はこちらを見ている。「すまほー」と呼んでみると、「にゃ」と小さく鳴いてこちらにやってきた。

隣に座ったそいつを撫でていると、また電車が動きはじめた。
まぁ、どこにでもいけばいいか。そう思った。