2022北大国語/第二問/解答速報
【2022北大国語/第二問/解答速報】
出典は小森陽一「吾輩は猫である」(『漱石深読』)。
問一「読者自身が選びとっての虚構世界への参入」(傍線部A)はなぜ起こるのか。本文中から35字以内で抜き出して答えよ。
〈答〉
この一文を読み切った瞬間、読者は猫の言葉を理解する者になってしまうから(35)
問二「『吾輩』は『I』と『we』に分裂している」(傍線部B)とはどのようなことをいうのか。45字以内で説明せよ。
〈GV解答例〉
日本語の「吾輩」は、英語に翻訳した場合の一人称複数形と一人称単数形を、両方含むということ。(45)
〈参考 S台解答例〉
「吾輩」という語は一人称複数の代名詞でありながら、同時に尊大な自称として用いられるということ。(47 ※字数オーバー)
問三「尊大な一人称が可能であるかのように幻想をさせる言説のあり方そのものをパロディ化している」(傍線部C)とあるが、どのようなことによってパロディ化したというのか。50字以内で説明せよ。
〈GV解答例〉
言葉を話せるはずのない猫が、「吾輩」という語で猫族を代表するかのように人間の読者に語ることによって。(50)
〈参考 S台解答例〉
全体を「代表」する「我輩」という自称を、「猫族を代表」できない語り手に使用されることによって。(47)
問四 猫の「『無名性』に対する、対立するかのような二つの立場」(傍線部D)を、「…とする立場と…とする立場」のように、40字以内で挙げよ。
〈GV解答例〉
社会に帰属しない自由な主体とする立場と、社会に埋没している匿名の存在とする立場。(40)
〈参考 S台解答例〉
帰属が曖昧で自由だとする立場とどこにも帰属しない取るに足りない存在だとする立場。(40)
問五「『吾輩』という一人称的言葉を使用して、自らのことを言語化することができるのは、明治の日本語という言語システムの奴隷となることによってはじめて可能になる」(傍線部E)というのはなぜか。90字以内で説明せよ。
〈GV解答例〉
「吾輩」という語で尊大さを装いながら読者を虚構の世界に招き入れることに成功した漱石の小説世界は、文明開化と富国強兵を煽りたてる明治期の翻訳語調の語り口に依拠して成立するものだから。(90)
〈参考 S台解答例〉
複数形の自称を尊大な自称へと転用した「吾輩」を使用し国家に従属することで、「演説」に表象されるような明治的言説空間に身を置き、全体を「代表」する立場から語ることが可能になるから。(89)
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