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2023北海道大学/国語/第二問/解答速報

【2023北海道大学/国語/第二問/解答速報】

出典は加藤周一「E.M.フォースターとヒューマニズム」(1959)

問一「彼は政治とか文明とか公的な問題に関して『愛』の原理をもち出すのは、見当ちがいだということを強調し」(傍線部A)とあるが、なぜか。傍線部の後の引用部分に即して40字以内で説明せよ。

〈GV解答例〉
「愛」は私的生活における重大な原理であり、公的な場面に適用するのは不合理だから。(40)

〈参考 S台解答例〉
愛は私的領域のものであり、見も知らぬ人間を含む社会では感傷主義の危険を招くから。(40)

〈参考 K塾解答例〉
寛容を要する国家同士の間柄などに、個人的な愛で対処するのは不合理だと考えたから。(40)

〈参考 Yゼミ解答例〉
人は個人的に知っている人間しか愛せず、不特定多数に愛を適用させられないから。(38)


問二「この考え方」(傍線部B)を40字以内で説明せよ。

〈GV解答例〉
知りも好みもしない他者と、民主主義的原理に基づき社会的共存を目指す寛容の考え方。(40)

〈参考 S台解答例〉
好まない人間を愛する努力ではなく、我慢する寛容さが民主主義では重要だということ。(40)

〈参考 K塾解答例〉
嫌いな人間を愛すより、我慢しようとする民主主義的な寛容が将来に資するという考え。(40)

〈参考 Yゼミ解答例〉
好まない人間を排除せず、無理に愛しもせず、寛容をもって我慢すべきだという考え方。(40)


問三「私は信念なるものを信じない。」(傍線部C)とあるが、なぜか。40字以内で説明せよ。

〈GV解答例〉
自由と寛容を尊重し公正な判断をする上で、絶対的思想を支える信念は相容れないから。(40)

〈参考 S台解答例〉
信念は思想の絶対化を導き、良識に基づく自由な個人の公正な判断を妨げるから。(37)

〈参考 K塾解答例〉
公正を重んじ良識のみを公的基準とすれば、絶対的思想を支える信念は否定されるから。(40)

〈参考 Yゼミ解答例〉
信念は思想の絶対的根源であるため、多様性を尊重した社会思想の基礎にならないから。(40)


問四「もう一つの信念をもって対しなければ、抜け道があるまい」(傍線部D)とはどういうことか。50字以内で説明せよ。

〈GV解答例〉
絶対的思想を支える信念は寛容の精神を前提としない以上、原理的に他の信念により競うしかないということ。(50)

〈参考 S台解答例〉
絶対化された信念に基づく暴力に対抗しうるのは、民主主義を支える良識ではなく別の信念だということ。(48)

〈参考 K塾解答例〉
民主主義的社会であるならば、特定の信条に基づく暴力は、別の信条によって対処しないと解決できないこと。(50)

〈参考 Yゼミ解答例〉
信念にもとづいて行使される暴力への態度を決定するには、その決定の根拠となる信念が不可欠だということ。(50)


問五「第二の限界」(傍線部E)について、80字以内で説明せよ。

〈GV解答例〉
フォースターのヒューマニズムは、その核となる寛容の原理も社会的場面に限られる上、広く見て欧州の中産階級を前提に構成された思想なので、その外部には通用しないこと。(80)

〈参考 S台解答例〉
民主主義という理想の実現に必要な信念を芸術領域に限定し、公正な判断と良識や寛容を重視するフォースターの思想は、ヨーロッパの中産階級にしか通用しないということ。(79)

〈参考 K塾解答例〉
フォースターの思想は、個人と社会を区別する二元論に基づき、状況次第では矛盾を露呈し得る上に、社会一般ではなく、ヨーロッパの中産階級にのみ通用するということ。(78)

〈参考 Yゼミ解答例〉
寛容をもって公的な問題に対処する原理が最終的に個人的な愛や信念に敗北するだけでなく、生活全体を最優先する原理じたいが特定の階級内部でしか通用しないということ。(79)

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