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私的:ドミニク・ミラー考察⑤『考察というかドミニク・ミラーに会ってきた』

はい。タイトル通りです。ドミニク・ミラーに会って来ました。

今までは勝手に個人的にドミニク・ミラーの音楽や人となりについて推察して書き散らしてきましたが、今回は5/18(木)にドイツはハンブルグ・KENT CLUBに実際に彼のライブを見に行ってきたのでライブレポと彼と話した会話が中心です。

会場は普段彼がよくやるパリのStudio de l'Ermitageやロンドンの606 Clubよりも大きかった気がします。その週は5日連続ヨーロッパでのライブだったのですが、この会場だけソールドアウトしていました。多分400~500人くらいは入っていたと思います。(ロンドンではキーボードのマイク・リンダップがゲストで参加)

着席で、皆お酒飲みながらだったのでライブ始まったら皆さんノリノリの反応で、ドミニクもメンバーもすっごい楽しそうでした。今回は1stと2ndと分けずにぶっとおしで合計1時間半から1時間40分くらい。最後の方はスタンディングオベーションで、多分1曲とかその場で増えたと思います。今回、セットリストはいい加減。こんな感じだったはず、です。(周りもあまり写真撮ったりスマホいじったりもなかったし、自分自身もライブに集中したかった為)

全体通しての演奏は新譜からの演奏が少なかったのは残念でしたが(2曲のみ)「Etude」がライブ用にかなりハード目のアレンジだったのが良かったのと、ドラムのジヴ・ラヴィッツは新譜「Vagabond」ではかなり静かなグルーヴを出してますが、曲によっては相当強烈なグルーヴを出してきて、やはりライブでは違っていて良かったです。とても上手くて素晴らしい。「Moroccan Roll」とかノリノリでした。彼のキックの音は本当に強烈。(4日前のパリでの演奏をどうぞ)

そしてピアノのヤコブ・カールソン。この人が加わったのは個人的には大正解と思います。ドミニクの盟友である、マイク・リンダップも良いんですが、ヤコブのピアノはクラシカルな部分とジャジーな部分が非常にバランス良くブレンドされており、音もとてもリリカルで美しいのでよりドミニクに合ってる気がします。でも即興はJAZZ寄りのアプローチで、かなりドミニクは彼に任せて自由に弾かせていましたね。でもまたそれがライブ感を増していて良かったです。彼はシンセもバリバリに使えるのでバンドに新風が吹いた感じがしました。(下の動画はスティングでは最早聞けない『Bring on the Night』)

ABBAの曲の時はなんか少しお笑いタイムみたいなノリもあり(そのノリいるか?という疑問もありますが)ジヴとヤコブ、ドミニクの妙な掛け合いが面白かったです。

後は特筆すべきは、ジェフ・ベックへのトリビュートとして演奏した「Diamond Dust」でしょうか。あの曲のエレキのサスティーンとか考えると、アコギで出来るの?って最初思ってましたが、ドミニクのヤイリ・アコギの美しいトーンで全然問題無かったです。ちゃんとあの世界観は成立していました。私は以前からドミニクのベックのカヴァーを聴きたかったので、感無量でした。

全体通してドミニクの音はいつもながら時にささやき、時にキラキラと煌めき、カラフルで、かつアルゼンチンの香りのする哀愁がやっぱりあって、本当に美しい音でした。

最後は完全にスタンディングオベーションだったので、ドミニクも何度も何度も嬉しそうに挨拶して去っていきました。

終わった後ドミニクとヤコブと話しました。ドミニクは東京から見に来たと言ったらとても驚き喜んでくれました。私が緊張してなかなか話せず、かつ持って来たメモが暗くて読めずにパニックになりかけていても、何も言わずに顔をずっと近くに寄せて「大丈夫?」って感じで待っていてくれました。(多分5分くらい待たせてた。)

彼に話した事は私自身は別にお世辞のつもりは全くなく、嘘偽りのない本心で彼の音楽や彼に対して思っている事を話したのですが、こちらが恐縮するくらい喜んでくれました。その中でもどうも彼のツボにハマった感じだったのがこの辺でした。

①あなたを最初に見たのは30年前にスティングで。聴いたらすぐにあなたの音楽に夢中になった。スティングとヴィニーを見に行った筈なのに、あなたに完全に「ロック」されてしまった。
→「えええ?嘘?ほんとに?」みたいに驚いてました。
まぁ、なんだかんだ普段はスティング大先生を立てているドミニクですが、ハッキリと「スティングよりあなたの方が好きだった、30年前から」って言われて嬉しくないはずは無かったようで、驚いてはいたけどとても嬉しそうでした。でも私に言わせりゃドミニク・ミラーの若かりし頃とか、本当に「容姿端麗」でかっこよかったからね。ラテン系の色気もダダ漏れで、スティングよりあなたの方がずっとイケメンだったじゃん!って言いたいですけどね。そんな風に言われた事なんかいくらでもあるはずでしょ!嘘つくなよ!ってちょっと思いましたが😅

この頃ドミニク50歳。いやいや、文句なしにイケメンだって。もてまくっただろうに!!!

②だけど、好きすぎて他の音楽聞けなくなったからしばらく避けてたけど、ECMから出した作品が素晴らし過ぎて私の人生にとってあなたの音楽は必要な物だと認識した。結局あなたの所に戻って来た。
→信じられないような話だ、本当にうれしい。みたいな感じでした。

③あなたの音楽は本当に私を救ってくれている。人生には沢山の辛い事や悲しい事があるけど、私はあなたの音楽を思い浮かべれば「私はもう大丈夫だ」と思えます。
→マジにそんな事言ってくれるの?まるで夢のようだ・・・。

④私はあなたを単なるギタリストやミュージシャンではなく、真に創造することのできる芸術家として見ています。
→嬉しい。そんなに嬉しい事を言ってくれるなんて。ファンタスティックだ。信じられない。

⑤あなたはいつも前作よりもいい作品をを作ります。
→本当にそんなふうに言ってくれるの?信じられない。夢のようだ!

これに関しては、常に新譜では前の作品とは違う事にチャレンジする事に拘ってきたドミニクはかなり嬉しかったのかな、と思いました。
彼は2014年の『Adhoc』を出す時にこの様に語っていました。

【ミュージシャンとして、私たちは進化しています。進歩するためにやることをやらなければならない。そのためには、リスナーに合わない方向に行くこともある。もし、私たちがいつもリスナーに合った音楽を作ったり、リスナーが望むようなアルバムを作ったりしていたら、それは正しいことなのでしょうか?それだと、どこか予測しやすいというか、安全策をとっているような気がしませんか?確かにそれは考える材料にはなりますが。(中略)
私は、潜在的なコストやリスクを承知でチャンスをつかむ人が好きだし、尊敬している。実際、私はそれを好む。
どんなアーティストが何をしようと、私がとやかく言う筋合いはない。もし、あなたが作ったものを1つでも気に入ったなら、それ以降、あなたが何をやっても絶対に受け入れるでしょう。気に入らなければいけないということではありませんが、捨てることはないでしょう。
(中略)最初の曲「Tisane」からの反応には、本当に励まされました。私の現在の創作の軌跡を「認めてくれている」ということなのでしょう。】

ドミニク・ミラーは「沈黙と静寂を好む」とか「音楽を説明しても仕方がない」という割には、結構語りたがりです😅。場があればしゃべりますし書きます。説明し出すと意外に長いです😅
昔本当にネット黎明期のころは自分でサイトを管理して、掲示板も開いてファンとも交流して自分から企画もしていましたが、今は逆にSNS時代になり、ちゃんとした交流ができないというか、ちょっとしたショートメッセージしかお互いに出せなくなっているのが結構残念に感じていると以前言っていました。

⑥あなたは本当に音楽で「高い所」を目指しているのがよくわかる。そこへの道のりはとても厳しいもので、なかなかチャレンジする人はいないけど、あなたはもうずっと探求してる。私はあなた自身が信じる道を突き進みながらその「高み」を目指す事を期待してます。私たちはあなたの事を応援し続けるし、ずっと見ていますよ。
→本当にうれしい。幸せだよ。ありがとう!

で、最後に英語がそんなに得意じゃないので手紙に色々詳細書いたからよかったら読んでね、と言ったら「絶対に、必ず読みます。約束します。」と何度も言って何度も何度もしっかりとハグしてくれました。
プレゼントも「フラジャイルかも!」って言ったら「大丈夫、絶対に粗雑になんか扱わないから」ってわざわざ言ってくれるような人でした。

気を良くしたのか頼んだ訳ではないのですが、名前と『With Best Wishes』のコメント入りでサインもくれました。
これ、自慢するわけでは全くないんですが、なんかInstagramに上がってるドミニクを見てみたのですが、サイン貰っている人は当然結構いるんですが、その写真を見た所、殆ど自分のサインのみで、たまーに○○さんへ、と名前入りはありますが、こういうコメント入れてもらってるのは皆無でした。まぁ、自分のライブの為にあまり英語も得意でもないのにドイツまで来た人間は流石に珍しかったという事なんでしょう、きっと。

ドミニクは結構な至近距離で話をするので、こっちは心臓の動悸が止まらず大変でしたが、彼は本当に想像以上に紳士でした。ピアノのヤコブとは事前に話をしていましたが、彼もまた非常に気さくで優しい紳士でした。(ヤコブは残りのドイツ滞在を気にして、わざわざ後でメッセージをくれました。)

最近のドミニクは(ヤコブもですが)結構コワモテで近寄りがたい印象の写真が多く出ていますが、ハッキリ言って全く本人とは違いますね。めちゃくちゃ笑顔が素敵な気さくな人です。60過ぎですが背も高くて足は細くてシュッとしてて姿勢もいいので立ってるととても絵になります。彼は結構腰の位置が高くてスタイルが実はいい。他の人と比べるとよくわかります。ただ、本人は足は細すぎてそばかすも多いから恥ずかしい、みたいに言ってましたけどね😅

最後に、年末にまたコットンクラブに来れたらいいな、と彼は3月の来日時に言ってたので聞いてみましたが、まだ日程などは決まって無いそうです。HPやFacebookをよくチェックしててね!って言ってました。
是非犬の散歩は奥様に任せて(家にいる間はドミニクが係らしい)来てください!楽しみですね!

【追記:信じられない裏側が判明】
実は今日、どうしても聞きたい事がありピアノのヤコブ・カールソンに連絡をしました。すると、このハンブルグのライブ後の実際の状況を教えてくれ、私は彼らに受けたあの時の優しさと歓待に、改めて感動で心がいっぱいになり、号泣してしまいました。

実際の状況をヤコブがこう説明してくれました。
「ライブの後は自分もそうですが、どうしても心が乱れてしまう事があったり、シャッターを閉じてしまいたくなる時があります。そしてあの日、私たちは演奏後すぐにホテルに戻らなければならず、少しストレスを感じていました。」

あの週はなんと連続5日間ライブがありました。すごいハードスケジュールだな、と思って私は心配していました。だけど、ドミニクもヤコブもそんな風にホテルに早く戻らなきゃいけなくて、急いでいたりストレスがある状況だったなんて、1ミリも私に感じさせませんでした。

上にも書いた様にドミニクは遠方から来ている事がわかっている事もあるのでしょうが、私がモタモタしてパニック起こして何も喋れない無言の時間を、急かすこともなく立ち去る事もなく、かなりの長い時間ずっと横でにこにこしながら待っていてくれました。話した時間もそれなりに長くかかったと思います。しかし、全く嫌な顔もせず、本当に優しく接してくれました。なんかもうあまりにも優しい人達すぎて信じられません。

私はもうやはり彼らに一生付いていきます。









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