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現場の仮説検証を経て判断する

某貸しスペースビジネスの
責任者をされている、
私の親しい先輩との経営談義。

先輩の本業は学者(大学教授)なのだが、
縁あってそのビジネスを経営する立場と
なり、このコロナ禍で悪戦苦闘している。

とはいえ、話を伺っていると、
なんとも筋の良い打ち手を次々と打って
いるように感じられ、経営者としての
センスが元々あったのか、学者として
鍛えられたロジカルシンキングの汎用性
がなせる業なのか、いや、両者相まって
のことなのだろう、などと考えていた。

レストランにしても、カフェにしても、
あるいは貸し会議室、カラオケボックス、
こういった業態においては、限られた
スペースにおける「密」回避のために、
机・テーブルやいすなどを、間引きして
いるところがほとんどだろう。
私が良くお邪魔する、会社近辺のお店を
見回しても、1席ずつ空けるところや、
パーティションで区切るなど、必ずと
言っていいほど何らかの対策を採って
いるところばかり。

その先輩が経営しているところには
レストラン部門があり、この「密」
対策をどうするかに頭を悩ませたのだ
という。
ランチタイムにどれだけお客様が来て
くれるか、それが1回転で終わるのか、
2回転してくれるのか、といったことが
経営上極めて重要な結果をもたらす。
それゆえ、どの程度の「密」度合い
にするかを、試行錯誤したそうなのだ。

入口に立った時に、お客様の目線になり、
「密」な感じがするかしないか。
テーブルといすの配置を何度となく
やり直しさせながら、「密」を感じるか
否か、圧迫感があるか否かを検証して
いった。
そして、たとえ(ほぼ)同じ席数で
あっても、スッキリ解放感のある配置
にしたときの方が、ランチタイム行列
ができても行列に残ってくれる人が
明らかに多いという検証結果を得て、
配置を固定したのだという。

「密」な印象を与える方の配置だと、
行列に残る人が全然少なかったこと
から、お客様は店内をパッと見渡して
「密」度合いを瞬時に判断し、安心感が
あれば並ぶし、なければ列から離れる、
という仮説が検証されたのだ。

ネットマーケティングの世界の、
いわゆるA/Bテストである。
お客様の反応が、A案とB案でどちらが
より良いものを得られるか、
両方とも走らせてみて勝ち残りにする。
どんなに自分たちがA案の良さを信じて
いたとしても、お客様がB案を選ぶなら
正しいのはB案だ。
少なくともそのテストの時点では、
という限定を付す必要があるかも
しれないが、やはりお客様に選んで
もらえてナンボというのが基本。

万能感の強い経営者だと、お客様は当然
A(あるいはB)を選ぶはずだ、という
自分自身の思い込みを、テストもせずに
そのまま採用してしまう例が多い。
もちろん、何でもかんでもテストすれば
良いという訳ではな。
やたらとテストばかりするのは考え物。
今回のように、目標としている数値に
直接的に影響を及ぼすであろう内容と
あれば、やはりテストするのが正解だ
と考える。

先輩が、専門外だった経営の分野を
真摯に学ばれて、こういった地道な
「仮説検証からの正しい判断」を
下していらっしゃる話を伺い、
自分も常に初心に戻り、基本的な
スタンスを疎かにしないことが重要、
そう強く意識したのだった。

己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。