人と世界の循環とスケール、自分がやっていることと人がしていること
僕の思考方法と観測方法を紹介するシリーズ3部作、2つ目は人と世界の循環です。
大学2年生が終わる頃、特別に仲良くなった友達がいました。その友達のLINEのアイコンは人ではなく、ペットでもなく、風景でもなく、なんと図でした。500人くらいいる友だちの中で何かの図をアイコンにしている人はこの友人だけなので、相当変わったやつなんだと思います。
気になったので調べてみると、僕は衝撃を受けました。
MIT Media Lab の方の講演で度々登場しているようなのでおそらくこの研究所内で作られた図なのですが、初めてこの図を見た時、僕の脳には快感が走り抜けました。
図の名前は『Krebs Cycle of Creativity』。人が世界に対して価値ある行動をするための循環を説明しています。簡単に言うと、
自然を認識することはサイエンス
自然を生産することはエンジニアリング
文化を生産することはデザイン
文化を認識することはアート
ということです。とはいうものの、これだけだと単語の広義な理解が必要で意味するところがまだ曖昧だと思いますので、もう少し説明してみます。
前回のnoteで話した抽象化の思考で繋げると、図の上に向かうことが抽象化(Why)で、自然に問いかけるか、文化に問いかけるかでサイエンスとアートに分かれていきます。図の下に向かうことが具象化(How)で、自然に対して実装するか、文化に対して実装するかでエンジニアリングとデザインに分かれていきます。
もう少し人間の持つ機能に沿って言ってみると、新たな情報を認識し観測するために知恵を絞ることがサイエンスで、創作することがアートです。利便性を追求したモノ・コトを生みだすために知恵を絞ることがエンジニアリングで、創作することがデザインです。
だいたい図の感じがつかめてきましたでしょうか。
この図は人が世界に対してどう業をするか、その性質をまとめたものだと思います。上下方向に抽象化のベクトルがある通り、それぞれの斜め成分は違うものに観えても繋がっていて、この円を循環するように人の業はアップデートしていくことが理解できると思います。
またこの図は人が個人であっても集団であっても当てはまることだと思います。
僕はこの図を見た時、物理学や数学が好きなサイエンティストな自分と、宇宙電波望遠鏡を作ったり演算装置を作ることが好きなエンジニアな自分と、好きな宇宙を人に伝えるためのプレゼン資料やポスターを作るデザイナーな自分と、ピアノを弾くことが好きなアーティストな自分が、全部繋がって自分が拡がっているのだと感じました。
次に、もう少し拡張して理解していこうと思います。この図は機能と環境がある場でその出力の内向性と外向性を二次元の四象限に落とし込んでいるとみることができます。つまり人の場合は機能として観測することと行動することがありますが、場とそこで何か作用を持つ要素を考えられるのならばこの図は人に限らないものとして見い出せそうです。(ここらへんの物理学的な思考方法はきっと次のnoteで紹介します。)
ですがここは、たしかに植物に当てはめて動物との関わりを見直してみたり、大地やこの地球に当てはめてガイア理論を説いてみたりすることも面白そうですが、人に寄っていこうと思います。
人の職業を対応させて考えてみるとどうなるでしょうか。サイエンティスト、エンジニア、デザイナー、アーティスト、それぞれ分かりやすいですが、世の中にはもっといろいろな仕事がありますよね。それぞれが使うツールのためのエンジニアリングだとか、認識を増やしていくためのアーティファクトだとか、それぞれ段階はあるかもしれませんが、どれも人が世界に対して行う方向に向いています。
人が人に対して行う職業を考えてみるとこの図にどうあてはまるでしょうか。この図は世界がハードウェアで人がソフトウェアとしたときの表現になっているとみることができると思います。そこで、人を外殻、ハードウェアとして捉えたときどうなるでしょうか。人が人に対してやる仕事を思い浮かべてみてください。
人が知恵を得るための内向的な働きかけ・・・勉強?
人の外向的な機能、身体や脳に働きかける・・・医療?
人の文化的な機能、言動や思想に働きかける・・・司法?
人が感動を得るための内向的な働きかけ・・・鑑賞?
勉強は教育や広報以外にも人が学びとする場ならば項目的にはもっと多く挙げられると思います。同じように、鑑賞は作品を受け取る場以外にもエンタメとなりえるイベントやコンテンツだったり味覚に働きかける料理も関わりがありそうです。医療も幅広く捉えれば福祉や防災も含まれそうです。司法は人というフレームに言動や思想の自由をデザインしているとしたら、宗教も含まれそうです。
日常的にこの図を意識することがある場面というのは、人のやっていることを理解しようとする時が多いです。自分がやっていることは人に説明しやすいですし、どうしてやっているかも分かりやすいです。まあ実時間上で常にそれを認識できていることはもしかしたら少ないかもしれませんが、それでも、他人がやっていることやそのやっている理由が分からないことの方が全然多いと思います。
僕は、人と人が完璧に分かり合えるとはやはり思っていませんが、分かろうとすることはとても重要だと思ってます。
またこの図は、自分がやってきたことややろうとしていることを見直してみたいときに助けになるかもしれません。特に進学や就職を考えている人にとって漠然と考えてみるよりは、自分にとってのエンジニアリングやアートが何にあたるのか考えてみると、自分のスケールに繋がるかもしれません。
物理が好きな人にはなぜ楽器を演奏することが好きな人が多いのか、そういう関係も見えると思います。
この図は他にもいろいろな理解を助けてくれることがあります。例えば、この図は人が関わる世界をフレームにしていますが、今人そのものをフレームにしたように、このフレームを自分の仕事の分野にしてみたり、子どもにしてみると自分が考えたい現場に当てはめた理解を深められるかもしれません。因みに要素としては人でずっと考えてきましたが、フレームを宇宙にすると要素が人だけだととてもつまらなくなって、要素を増やすと考えることが一気に増える感じがして個人的に面白いです。
時間的な発展を理解することも上手く対応が効く気がして面白いです。例えば人を要素としたときの人類史を辿ってみるとこの循環がじっさいにどんな順番でスケールしやすいか見えてきます。そしてそれは個人にとっても同じかもしれません。人を生態系に、自然史に、人を宇宙に、宇宙史に、いろいろな循環とスケールが見えてくると自分のアクションのヒントになるかもしれません。
職業を対応させて考えてみましたが、まだ出ていない職もありますよね。第一次産業やインフラ、銀行、コンサルなどはこの循環を全体をスケールさせるためのものとして考えられるかもしれません。つまり、時間やお金や教養など、リソースの変化による循環を考えることでやってきたことややるべきことが分かりやすくなるかもしれません。
この図の外側が世界で、円の中心が人だとしたら。前回のnoteのゴールデン・サークルのように考えて、円の中心から外側に向かうベクトルがどんな方角に向いていても、同じエネルギーを持っているとしたら。
そのエネルギーってなんでしょうか。
もしかしてそれが愛?
サポートしてくれている方々、ありがとうございます。 余裕がなかったり、落ち込んでいる時でも人に支えられて生きていることを忘れませんように。支え合い続けられますように。