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「念のため」 ポルトガル語ワンポイントレッスン リリアン・トミヤマ 月刊ピンドラーマ2023年8月号

「Premeditatum malorum」とはラテン語で「ある行為に対して起こる可能性のある悪い事態を考えておく」という意味です。私がある決定を行った場合に起こりうる悪い事態の予測です。ブラジルではこういう考え方を好まない人が多いです。例えばこう言うブラジル人がいます。「ポジティブに考える方が好きなんだ」と。あるいは、「悪いことを考えると悪いことを呼び込む」と。

個人的には「Premeditatum malorum」が間違っていると私は思いません。つまり、悪い事態を考ておけば、それが起こるのを避けることができますね。例えばセ大聖堂に行きたいとします。でも、頭の中で起こりうる事態を予測することができます。行く価値はあるか、危険ではないか、強盗に遭うのではないか、等々。こうやって悪い事態を避けるのです。

この手の用心について考えていて、日本語の「念のため」という表現を思い出しました。

ポルトガル語でこれに当たる表現をご存知でしょうか?

Por via das dúvidas」という表現です。

例文を見てみましょう。

Eu não sei se vai chover hoje. Por via das dúvidas, eu vou levar meu guarda-chuva.
(今日は雨が降るかどうかわからない。念のため傘を持って行こう)

Eu acho que o João sabe da reunião de hoje às 15h. Por via das dúvidas, eu vou mandar uma mensagem no celular dele.
(ジョアンは今日15時の会議のことを知っていると思います。念のため彼の携帯にメッセージを送ります)

Por via das dúvidas, nós vamos reconfirmar.
(念のため再確認しましょう)

Parece que o trânsito está péssimo hoje. Por via das dúvidas, é melhor sair de casa um pouco mais cedo.
(今日は渋滞がひどくなりそうだよ。念のため少し早めに出かけた方がいいね)

今月もお読みいただきありがとうございました。用心についてですが、ブラジルのロマンティックな名曲「Espanhola」(GuarabyraとFlávio Venturiniの作品)のバックストーリーについて話そうと思います。当時グアラビーラはある女友だちに恋していましたが、彼女は彼と一緒にサンパウロに行きたくない、リオのほうがいいと言っていました。彼は冷静さを失って大酒を食らいました。ものすごく酔っ払ったため、今飲んでいるバーの近くに住んでいるフラヴィオ・ベントゥリーニの家に泊った方が安全だと思いつきました。フラヴィオの家に行き、二人は話し始めました。フラヴィオは自分の作った曲をギターで弾きました。すると、グアラビーラはその曲に詞をつけてもいいかと尋ねました。フラヴィオは同意し紙とペンを渡しました。翌朝、グアラビーラは去り、数日後フラヴィオが電話して言います、「おまえの詞すごくいいよ!」。「何の詞だよ?」グアラビーラは書いたことを覚えていません。フラヴィオが演奏し、グアラビーラが気に入って、ロマンティックで美しい歌「エスパニョーラ」が誕生しました。つまり、グアラビーラが用心して友人の家に泊まらなかったら、この美しい曲は存在していなかったのです!


リリアン・トミヤマ(LILIAN TOMYAMA)
USP(サンパウロ大学)卒、ポルトガル語学・言語学専攻、ナンシー大学(仏)卒、フランス語学・文学の専門家でもある。
lilidomi@uol.com.br
www.pogotogo.blogspot.com
www.facebook.com/liliansensei

月刊ピンドラーマ2023年8月号表紙

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