見出し画像

#1 スーツの美咲

私は30代会社員の美咲。
「30代」というのはとても曖昧で相手任せな表現だけど、みんながそれぞれに思い描く私でOKよ。○○歳って特定された情報より自由でしょ。
今日は月曜日だというのに仕事帰りに駅ビルのショッピングモールに立ち寄った。というのも今日から急に暑くなったから、スーツに合わせる夏用のトップスをまだ買ってなかったことに気付いて。何でもいいからとりあえず一枚買っておくことにしたの。
私が歩く度にカツカツという音が建物内に反響していたわ。だからふと立ち止まって駅ビルのガラスに映った自分を見たの。ネイビーのパンツスーツにヒール、といっても3センチ、髪を後ろでひとつに結んで、手にはコンパクトなハンドバック、別にハイブランドとかじゃない、ファッション系のお店で買ったものよ。

なかなか会社員やってるな、私。
これはこれで仕事を続けようというモチベーションに繋がっているのかもしれない。でも明日にはまた心が折れそうになるんだろうな。

どう、イメージどおりだったかしら。

何件がお店を回った甲斐あって、
何とか着れそうな半袖のトップスを見つけたわ。
レジで対応してくれたのは若い女の子だった。
元気があって愛想が良くて、
明るい茶髪でショートヘアをアレンジもして。
おそらく20代だろうな、と思ったの。
「今日はトップスをお探しだったんですか」
「そうそう、今日急に暑くなったから半袖のトップスが欲しくなって」
30代ともなると店員との世間話もお手のもの。
「お仕事はお洋服の決まりがあるんですか」
「そうですね、あまり派手なのは着れないというか、気が引けるというか」
「えー!エグいですね!」
「・・・ほ?笑」

この後、会計が終わってから商品を包んでもらってる間に分かったわ。「エグい」っていわゆる「やばい」ってことね。場合によっては「すごい」「ひどい」とかそういうことよね。言葉のニュアンスを受け取れるまでの時間差がエグい。

20代とは思ったけど、20歳とか21歳とか極めて10代に近い学生さんでしょうね。もしかしたら18歳とか、昨日まで高校生でした、みたいな。
20代、なんてざっくりした見方してたら度肝を抜かれたわ、ごめんなさい。
日常でこのくらいの年代の子と関わることがないから、とても刺激的だった。
家に帰ってきてからすぐに「若者言葉 2023」ってググったから。知らない、聞いたこともない言葉ばかりで、時代が言葉を造って、言葉が時代を造っていることを感じたわね。

20代、30代って表現が抱かせるイメージはほんと相手任せ。でも代わりにとても自由、それぞれの私、それぞれのあなた、正解はないの。

私は好きよ、30代も30代の私も。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?