#3 旅する明里
どこからかやってくる気まぐれな風が
忽然と季節の節目を知らせる
ああ もう秋か
歓喜でも哀愁でもない「もう」というこのたった2文字に
積み重ねた日々をぎゅっと重ね合わせる
充実した日々で埋め尽くされた「もう」
忙しくて通り過ぎてしまった「もう」
何かと別れ区切りがついた瞬間を思い起こした「もう」
でもそれは何か新しいことが始まった瞬間でもあった「もう」
それぞれが見つめ返した日々は
刹那に、はっきりとした色と温度を帯びて、深く、優しく、
今日という今に溶け込んでいく
季節をささやいた風はもうどこかへ行ってしまった
忘れたころにまた次の知らせを乗せて巡ってくるだろう
それまで私もまたひとつ季節を今を重ねよう
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