名画とセットで。架空のストーリーと共に送るエモいアクセサリー
桜は人生だ
あれは確か、息子のハルキが4歳の時だった。
満開の桜の木が並ぶ、とても広い公園で、
息子は楽しそうに落ちてくる花びらを両手を広げて見上げながら
追っかけたり拾ったり。
青い空に、光に透けるピンクの花びら。
柔らかそうで、その細かな繊維までも見えてくる透け感。
本当にきれいだ。
そんな光景を、綺麗だなぁ・・・と眺めていた私に
ベンチの隣に座っていたご老人がこう言った。
「桜ってほんとにすごいよね。
綺麗に満開になったと思ったら、すぐに散っていっちゃうでしょ?
それなのにさ、こんなに僕たちに毎年感動させてくれるんだよな。」
ベンチに座る彼は、80代後半といったところだろうか。
上下イギリス紳士みたいな素敵なセットアップを着て、
オシャレな杖を手にしながら、青空に花開く綺麗な桜を見上げていた。
彼は続けた。
「私もね、毎年、この桜を見に来るのが楽しみなんだ。
仕事を辞めてだいぶ経つけどね、悩んでた時にも苦しい時にも、
この桜の木に励まされたものだよ。」
「桜ってさ、1年に1回の一瞬の花のために
ず~っと栄養をためて、地味に成長をして、準備してるんだよね。
みんな、花の咲いていないときの桜の木なんて、気にもしてないでしょう?
だけどね、毎日見てるとわかるんだよ。
どんどん緑の葉を出してきてね、枝も伸びて幹も太くなる。
しっかり成長してるんだよ。」
「そして、可愛いつぼみを付けて。
みんなが注目し始めると、どんどんつぼみを膨らませて
一気に花開くんだ・・・。
見事だよね~。この満開の桜。」
ご老人は、そういって私の顔を見ながらこう言った。
「桜って、人生と一緒なんだよ。」
「いつか花開くために、じっと準備をしているんだ。
そして、いつか満開に花開く。
みんなに感動を与えてね。」
なるほど。
と思った。
本当にその通りだ。
「桜って人生」
「あなたもね、あんな可愛い息子さんがいて、子育てで色々あるだろうけど、あなたのすることは必ずいつか花開くんだよ。
だからね、子育て、頑張ってね。子供は世界の宝だからね。」
そういうと、ご老人は、杖を使って立ち上がり、
後ろを向くと、手を振りながら帰っていった。
嬉しかった。
当時、わたしは育児で手いっぱいで、
思うように家事もままならず、
ましてや、社会復帰などできるのだろうか??
と焦りと不安でいっぱいだった。
子どもが大好きでかわいいけど
育児と仕事の両立、自分自身のやりたいこととのバランスが難しく
悶々としていた。
だけど、
全ては準備期間。
綺麗な花を咲かせるための準備期間。
そう思うと、スッと心が軽く、明るくなった。
今でも手に取るように、
あの感覚を思い出す。
それからは、桜を見るのがもっと好きになり
子どもにも、気持ちのゆとりを持って接することが出来るようになった。
今でもまだ、満開の桜にはたどり着いていないかもだけれど、
それでも、あの時のように辛く感じることもなくなった。
だって、人生は桜の木と一緒。
いつかじっくり進めてきた準備が花開き、
人に喜んでもらえる時がくる。
報われる時が来る。
そう思えば、いつも前向きに、笑顔でいられる。
毎年、桜を見るたびに、私はこれを思い出して、決意を新たにするのだった。
素敵な絵画と共に架空のストーリーを付けご紹介する
エモいアクセサリー
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