🍓場面緘黙症と黒い魔女とアイドル

「いつから？」と問われたら、「記憶がないくらい幼少期くらいから」と答えるしかない、昔々、大昔からの私の面倒くさいアレのお話。

私は子どものころから、大きな音や声が苦手だった。
それは同居していた父方の祖父の影響が強いと思われる。

そのあたりを書いたのはこちら↓
いまだにずーっと読まれてるので、同じような人が多いのかな……と思っている。

それはそれとして、私自身が大きな声を出すのも苦手だったし、いまでも苦手である。
できるだけ前に出たくないし、写真を撮られるのもイヤすぎるし、街中で声をかけてくるとかもほんとうにやめてほしい。

大人になって「場面緘黙症（選択制緘黙）」というものを知った。
いろいろ文献を調べてみたものの、ちゃんと書くと難しくなるので、ざっくり説明すると、

▶︎家族やきょうだいの前では喋れるけれども学校とか会社では無理、とか、ある一定の場面や場所で喋れなくなる
▶︎入学・転校したてが原因とかではなくずっと無理
▶︎吃音症などでからかわれたくないから喋りたくないとか、発達障害や統合失調症などの精神疾患系ではない
▶︎外国とかで言葉が分からないので黙ってるとかそういうわけではない

とかそんな感じ。

おー、なるほどー、と思った。
けれども、ここまでではないかなー、とも思ったりもする。
とはいえ、「とにかくここでは！　喋りたく！！　ない！！！」みたいなのは昔からあったように思うので、50％くらいこれだったんだろうなーと思うし、いまとなっては25％くらいはまだこれが残っている気がする。

診断されたわけじゃないし専門家でもないし論文読みまくったわけでもないからぼんやりとしか書けないけれども。

そして、この現象について話をすることで、そこそこ同じような人に遭遇できたのは、私にとって生きやすくなったというか、安心材料のひとつとなった。
同じような人と情報共有できる場があるのは良いな、と思う。
私も含め、このことで一番困っているのは、「そういった場面で喋らなきゃならないこと」よりも、「喋らないのは逃げ！」とか「もっと自信もって！」とか「せっかく目立てる場面なのに下がっちゃうなんてもったいない！」とかそういう人が迷惑、ということ。
いやほんとそれなのよ。
私たちはもうそこそこ大人になったので、ただただ議事録読み上げるだけの会議とかで喋らなきゃいけないときなどに「イヤだけどしゃーないか」とか思えるようになってはきたし、こちらが気にしてるほど周囲も気にしていないということがわかってきたので「その場だけ乗り切る」とかができるようになってきたけれども、せっかく「なんとか乗り切った〜」と思ったところに、それ以上のダメージ投げてくる人はほんとうに敵でしかない。
そっとしておいてほしい。

そんな私だけれども、高校のときに１年間生徒会役員をやっていたことがある。
そのときの会長が、私にとってすばらしい人だった。

前に出る仕事は全部やってくれる……というより、積極的に前に出たい感じ。
それでいて、私たちには強要しない。
行事の挨拶文の代筆をしたりしたけれども、まったく苦じゃなかったし、むしろそういう裏仕事に感謝をしてくれた。
改善の余地のあるしきたりなどについて執行部内で意見を出したときも、資料をまとめさえすれば表に立って交渉したり発表したりしてくれた。
私は手柄がほしかったわけではなく、ちまちまとした裏作業がしたいだけだったし、会長はちまちました裏作業よりも、皆にわかりやすくどーんとしたことをやりたかった。
仕事をするうえで私と相性が良い人はこういう人だろうな、と、高校生のときに気づけたのは良かったと思う。

決して表に立つことはないので周りからは気づかれにくいけれども、裏側で支える。
生徒会の仕事だって、いろいろあった功績は、当時の会長のものだと思っていた人はいると思う。
でも私はそれでもかまわない。
そんなふうに「ついていきたい」と思えるボスだった。

さらにさかのぼって、保育園のころのお話。

「人前に出たくない」というのは生まれたときからとっくに始まっていたので、「とびばこ」とか「プール」とかもすごく嫌だった。
外遊びの時間は園庭のすみっこにいたし、室内のときはやっぱりすみっこで絵本を読んでいた。
そんな子どもだった。
だから「はっぴょうかい」はほんとうに最悪のイベントだった。

私が通っていた保育園は人数が多く、同学年２クラスあった。
「ダンス」と「劇」をすることになっていたのだが、どちらも練習のときから苦痛だった。

とくに、劇。
２クラスあったため、前半と後半で入れ替える、つまり、同じ役が２人ずついるという配役だった。
配役を決めるとき、私はできるだけ目立ちたくないので、すみっこで説明をするナレーターや、「たいへんだにゃー」とかそういう感じの賑やかしネコとか動物とかをやりたかったのに、先生が勝手に決めて発表した。
私は魔女の役だった。

ぜっっっっっっっっっっっったいめだつじゃんそんなのむり！！！！！！！

と思ったけれども、そもそもそういう場面で発言ができない子どもが何か言えるわけもなく。
そしてさらに最悪だったのが、なぜか魔女だけ前半も後半も出る、と決まっていたこと。

意味がわからないのですが？？？？？？？？？？

人数が足りないとかならわかる。
けど、そもそも２クラスもあって、園児はいっぱいいる。

おゆうぎかいまでの時間、練習の時間が多くとられたのだが、私だけクラス移動をしなければならなかった。

同じ園内にいても、隣のクラスの子とはそんなに喋ったこともなく、見知らぬ人たちのなかで本読みをしなければならないのは相当のストレスだった。
よく登園拒否にならなかったな、と思うのだが、「休む」というのも目立つ気がして選択できなかった。

そうして私は黒い魔女になった。

SNSとかない時代でよかった、と思う。

私の周囲にも子どもの写真をアップしている人は結構いるけれども、顔がわかる状態で親が勝手にアップしてるのって恐怖すぎると思う。
私がそれをされていたら、一生部屋から出なかったかもしれないし、カメラというカメラを破壊して回っていたかもしれない。

あと最近インスタの勝手におすすめしてくるリールでみちゃったんだけど、
「うちの子みつけられない〜どこ〜〜」
ってキャプションつけて、よその子たちがわちゃわちゃしてる幼稚園の運動会様子を動画撮影してアップしてる人……。
自分の顔も、自分の子どもも載せず、ひたすら他の園児を垂れ流し、それをまったく無関係の私が見ているという構図……。
ホラーかな……。

ちょっと話飛ぶけど、女としては比較的背の高い私に対して、155cm未満女子からよく「うらやましい〜」と言われるのだけれども、そういう子たちって集合写真撮るとき後ろに来たがるのなんでなんだろうね？？
「えっ、前のほうが大きく見えるから前に行ったほうがいいよ！　大きくなりたいんだよね？　前に行きなよ！」
って言って押し出すけど。

さて、ちょっと進んで中学生のころのお話。
それはそれは中学生らしく、私は某アイドルにハマった。
男の子だけのグループも女の子だけのグループも好きで、あんなふうにかわいい衣装を着てキラキラ歌ったり踊ったりできれば楽しいだろうな、と思った。

ただ、私がそんなことできるわけもなく。

もっぱら「テレビや雑誌で見る専門」だったのだが、初めて行ったコンサートで、私は私の役割というものに気づくことができた。

会場いっぱいの人、人、人。
キラキラ光るペンライト。
観客の一人としてそこにいることは、一緒にステージを作っていると言っても良いのでは、と思った。

前に出ることこそが正しいみたいなことを言う人もいるけれども、まあ、そう、出たい人は勝手に出ればいいけれども、「前に出る」ということはその他大勢もいるわけで、というお話。

私をうまく使いこなせる人と使いこなせない人ってはっきり分かれるなあ、と思ったりしている秋の夜。

https://www.youtube.com/watch?v=O4Bl0ehLQic