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『プリンセスと魔法のキス』の象徴的な黒人英語 #45

こんにちは!
アメリカで学部留学中のぴおりです。

早速ですが皆さんは、『プリンセスと魔法のキス』というディズニー映画をご存知ですか?

日本では2010年の3月に劇場公開されて、この作品の主人公であるプリンセス(仮)ティアナは、1998年公開の『ムーラン』以来のプリンセスの登場となりました。

この子がティアナ。

そう、彼女はディズニー初の黒人プリンセスなんですね!
白人至上主義さらば!!!

実はわたくし恥ずかしながら、つい最近までこの作品を観たことがありませんでした。
主人公ティアナが黒人ということや、王子がカエルなんでしょ、なんてことはなんとなく知っていましたが、観る機会がなく。
というか、肌感覚ですが日本ではあまり知られていないような??
それもそのはず、ディズニー作品にしては、興行成績が良くなかった作品の一つなんだそうです。(とはいえ、北米では初登場ランキング一位取ってますけどね!)

そんな『プリンセスと魔法のキス』、先日時間ができたので軽い気持ちで観たのですが、

めちゃくちゃ期待以上!!!
みんなにも観てほしい!!!

ということで、私独自の「黒人英語」という観点から、この映画を紹介していきたいと思います!



<注意>
タイトルに書いておいてなんだという話ですが、私は「黒人英語」いわゆる "Black English" という言い方があまり好きではありません。
黒人は皆同じ言語をしゃべるわけではないし、私の指している「英語」は、アメリカに住む黒人の英語限定の話です。

英語では African American English という適した表現があるのですが、日本語ではどうにもそういった表現はないようです。
この先「黒人英語」と書き進めますが、その意は、アメリカ(主に南部)に暮らすアフリカ系アメリカ人が一般的に使っている英語のことを指しますので、ご理解よろしくお願いします。


さて、本作『プリンセス魔法のキス』の舞台は、アメリカのニューオーリンズです。

ルイジアナ州ニューオーリンズ

見て分かる通り、ニューオーリンズはアメリカの南部に位置し、今でも黒人の多いジャズの街として知られています。
私も行きたい街の一つ!

舞台がアメリカ南部ということで、作中には多くの黒人キャラたちが登場し、映画を飾るのも特徴的なジャズの数々です。

このジャズが!いい!!
ディズニー作品でジャズってあまり使われてこなかったかと思うのですが、作品全体の雰囲気にとてもあっていて、より一層ニューオーリンズに行ってみたくなります。

黒人のキャラクターが多く登場するということですが、彼らのしゃべる英語はどことなく訛りが入っていて、いわゆる黒人英語の特徴を多く兼ね備えています。

私は実は先週あたりから、大学の授業で「黒人英語」について学んでいて、黒人英語の特徴を覚えたばかりです。学び深まる~~
作中ではそんな黒人英語の分かりやすい特徴が詰め込まれていたので、ストーリーの概要とともに少し紹介します!

おそらくストーリーのネタバレはなしです!!



まず、映画でとにかく多用されていたのが、"y'all" です。
アメリカ南部でめちゃくちゃ使われるという話は聞いていましたが、映画内でもわんさか出てきました。

Y'all というのは you all の略称で、「ヨー」みたいに発音します。
南部表現の定番として知られていて、複数人に呼びかけるときに頻繁に使われるそうです。

映画では例えば冒頭、
 (Neighbors) Hey, how you doing, Tiana?
 (Tiana) Hey, y'all.
なんて使われ方をしていました。
言い方はとってもナチュラル!男女問わず使える表現で、個人的には南部らしさが一番感じられました。



続いて、 "Ain't" という表現。
洋楽の歌詞には出てきたりしますが、黒人英語以外の日常会話ではなかなか使われません。

意味は、Am not や Is not, Be not とほぼ同等です。
三つ全てと置き換えることができます。
黒人英語では、日常会話でもラップ曲でも頻繁に出てきます。

映画の中では、ティアナの歌の中で
 ♪Ain't got time for messing around
と出てきました。
おそらく主語の'I'を省略し、「私には遊んでる暇はないわ」なんて意味でしょう。
ティアナの真面目さを表す素敵な歌でした。



お次は、Be動詞の脱落です。
Be動詞が脱落したら意味が通らないだろう!と思われるかもしれませんが、黒人英語ではBe動詞は欠落しがちなんだそうです。
日本の英語テストじゃ絶対バツなのにね!

例えばこちら
 (Louis) I want to meet this girl. Where she at?

その他にも
 (Ray) This going to be good!

私が入れ忘れてるわけじゃないですよー
この通り話すし、字幕にもこう書いてあるんです。

まあ確かにBe動詞がなくても意味は問題なく通ると思いませんか?
黒人英語の大きな特徴の一つがこれです。



ただ脱落するだけでなく、Be動詞が変更されることもあります。

それもアリなんかい!英文法の概念は破綻!

 (Mama Odie) Y'all ain't got the sense you was born with!

黒人英語の特徴全ミックスみたいになってますが、この人Mama Odieは、ものすごい黒人英語訛りの話し方をするキャラでした。
字幕がないと追いつけないくらい。

そんな彼女のBe動詞は、いわゆる教科書英語からはかけ離れています。
ですがこれも、黒人英語では大正解!
黒人英語ではYou wasとか We was なんて言いますが、変換しないで勢いでしゃべってるって感じがします。



Gonna Gotta Wanna の多用。

これらの使用は黒人英語に限った話ではないのですが、黒人英語では、異常に使われます。

ちなみにGonnaはgoing to
Gottaはgot to
Wannaはwant to    の省略形ですね。

省略できるなら全部しよう、とでも言うような勢いで出てきます。

作中では私の大好きな曲、When We're Humanで見かけられました。
 (Louis) I'm gonna blow this horn till the cows come home
あ、韻踏んでますね!

オシャレな良い歌なのでぜひ聴いてみてください。



まだまだあります。
続いては文中のbeenの使い方です。
これもまた黒人英語で頻繁に使われる表現として有名です。

beenの発音も「ビン」のように短く発音するし、使い方も過去形のようです。

 (Mama Odie) Now which of you naughty children been messing with the Shadow Man?

不思議な使い方にお気づきですか?
一般的な英語だったら、wasやhad beenが適切かと思いますが、黒人英語ではこのように使われます。

beenはとてもよく使われる表現なので、ラップ曲でも頻繁に耳にします。お好きなヒップホップの歌詞を見てみると、なかなか面白いかもしれません!



さらに、自身selfの使い方にも特徴があります。

説明が難しいので、例文からいきます。

 (確かLouis) You just kissed yourself a princess.

英文法を真面目に勉強してきた人なら、は??となるはずです。
これは一般的な英語から直訳すると、
「君は君自身にキスをした プリンセス」
となり、これでは意味が通りません。
Youの直後にYourselfがくれば、「君はプリンセスにキスをした」となりますが、例文の語順だとおかしなことになります。

しかし、黒人英語では、強調のselfは文中のどこに置いても良いということになっています。
上記の文では、yourselfは目的語のようですが、強調の意を取っています。お分かりですか?

文法は苦手なので、説明がわかりにくかったらすみません!!



最後は、黒人英語あらため、アメリカ南部の特殊な単語をまとめてご紹介します!

まずは、Voodoo
本作のヴィランであるドクター・ファシリエは、Voodoo(ブードゥー)と呼ばれています。

では一体ブードゥーとは何か。

ブードゥーとはブードゥー教という宗教の一つで、西アフリカやハイチ、そしてアメリカ南部ニューオーリンズで主に信仰されています。
ブードゥー教の信者は、様々な精霊を信仰しており、呪術や人形などを礼拝に使用するようです。

ドクター・ファシリエは魔術を得意とし、とても不気味に描かれていますが、実際は音楽と共に踊って信仰するなど、とても明るい宗教でもあるようです!
なかなか聞き馴染みがない宗教かと思いますが、恐るべからず!!


続いて、主人公ティアナの得意料理であるGumbo(ガンボ)。
これは、バイト先のカフェで以前提供していたので、個人的には「お!ガンボだ!」と思いましたが、日本ではなかなか食べる機会がないですよね。

ガンボスープは、ニューオーリンズ発祥のクレオール料理の代表格です。
トマトベースのスープに、オクラやチョリソー、そして様々な野菜を入れた、少しスパイシーなスープです。(バイトで言い慣れてる)
映画では、ティアナがタバスコを入れていて、それが定番なのかと驚きました!

簡単なようで奥が深いガンボ、とっても美味しいのでぜひ味わって欲しいです!
日本では、私のバ先で食べられます!他では見たことありません!


お次はBayou(バイユー)。
ディズニーオタクの皆様!!!
こちら、あのブルーバイユーのバイユーです!!
(知らない方はググってください。私が一生に一度は行きたいと思っているレストランです)

バイユーというのは、川・湖・沼・入り江などを表す、アメリカ南部の特殊な表現です。
ティアナたちは、映画の中盤、ずっとバイユーを行き、バイユーの歌を歌っていましたね。

ちなみに、あのレストランの名がなぜ「ブルーバイユー」と言うのかというと、東京ディズニーランドのアドベンチャーランドの一角は、ニューオーリンズをイメージされています。
「ブルーバイユー」は、カリブの海賊よりも、ニューオーリンズに合わせたレストランだったんですね!
これは驚きの気づきでした!


そしてCajan(ケイジャン)です。
ケイジャンチキンのケイジャンと同じです!

オスホタルのレイは、自らがケイジャンであることを早々に告げていましたね!

ケイジャンというのは、フランス人の血が通った、ルイジアナ州の主にニューオーリンズに移住してきた人々を指します。
彼らの話す言葉は黒人英語に近いですが、更に訛りのある英語を話します。レイもかなりクセのある英語を話していて、登場してすぐに、「そのアクセント何?」と聞かれていました。



さて、長々と紹介してまいりましたが、いかがだったでしょうか!

日本にいると、黒人英語を聞く機会がないどころか、黒人英語というものの存在さえ知ることも少ないのではないでしょうか。

この記事が、黒人英語を少しでも知るきっかけになると嬉しいです!


最後に、「プリンセスと魔法のキス」の楽しい鑑賞方法をお伝えします。

それは、吹替版ではなく字幕版で観ましょう

さんざん黒人英語について語ってきましたが、吹替版では、全くその傾向は見られませんでした。とっても残念!!

というのも、この作品、声優さんにかなり多くの黒人キャストが起用されているんですね。
これはディズニー作品ではとても珍しい!この作品で黒人英語が忠実に再現されている理由の一つは、ここにあると思います。
ディズニーさん力入ってる!

そんなわけで、ぜひ字幕版で、黒人英語の世界を覗いてもらえたらと思います!

きっとあなたもルイジアナに行ってみたくなりますよ!
私はめちゃくちゃ行きたくなった!!


長くなりましたが、今回は以上です。
プリンセスと魔法のキス、日本でも人気が出てくると嬉しいです!

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