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へたくそなトランペット
私は中学テニス部だったのに、高校で吹奏楽部に入った。
理由は色々ある。
まず、小学校の金管バンドで兄弟上2人がきちんとやっていたからなのか、目立ちたくないのに目立つポディションにされたり帰りたい子と帰れなかったり。なんて甘い理由で1年でとっととやめてしまった。
そして中学で見学に行くと「先輩の妹だ」とはじめましてなのに勝手に期待とか謎の好意とか感じて、耐えられなかった。
でも高校は、姉と同じ高校だったけど、だったからこそ、その学校の吹奏楽部の雰囲気が好きだった。姉に「この高校なら吹奏楽部に入った方がいいよ」と言われ、素直にそうだろうなと思ったので入部した。
しかしピアノ習ったことない、楽器の特徴も知らない私は、何の楽器を希望したらいいかもわからず、大抵は人気なのに、その年は人が足りなかったトランペットを持つことになった。
名前がわかるからという理由で選んだなんて誰にも言えないまま、あまりに上達しないから好きにもなれずに3年間吹いていた。
譜面も読めない所からのスタート。長い子で6年楽器を吹いている中、明らかにスタート地点が違いすぎて、足を引っ張っているのはわかった。
誰でも簡単にわかることだけど、吹奏楽はチーム戦だ。
それも単純なチーム戦じゃなく、1音1音の重なりあいが何重にも重なって複雑なハーモニーを奏でるのだから、1人の汚い音は、全てをダメにする。
例えるなら透明な水にみんなの色をいい塩梅で混ぜないと汚くなってしまうのだけど、1滴でも泥が混ざると、仮に目立たなくても水じゃなくて泥水になる。
もちろん、わかる人しかわからない程度のものだったりもするけど。
トランペットは『金管楽器の王様』なんて言われたりもするくらい、花形で目立つ、バンドで言えば圧倒的ボーカル。
目立ちたくなくて幼い頃から授業参観も手を挙げない私には、なかなか存在が重たかった。なんなら、人より小指が短いのでトランペットに小指を引っ掛ける部分があるけど引っ掛けられなかったので、物理的にも重かった(どうでもいいけど)。
それでも部活で出逢った先輩も友達も好きで、足を引っ張りたくなくて1分でも早く部活に行けるように毎朝チャリンコは全速力だった。
いつしか私が学校の正門を開けていた。6時くらいだったかな?約30分チャリ通だから、5時前には起きていたはず。いつも朝は青暗かった。
誰よりも才能がないことを感じていたから、せめて努力はしたと、堂々としたくて、たぶん認められたくて、朝練は車に引かれた日すらペダルをカゴに入れて漕いで、無遅刻無欠席を通した。(通常練習は土日もあって皮膚科通うときとかに休んだので、せめて。)
いや本当は、トランペットは好きだった。
でも、重荷で仲良くなれなかった。
どれだけ練習してもトランペットで1番求められる高音が苦手で。
高音が出なければ、トランペットの価値はないって言ってもいいくらいなのに。(プロは知らんけど、自分の高校では必要だった)
後輩ができても私が1番へたくそで。
人それぞれ音色があるから一概には言えないけど、少なくとも私はへたくそだと3年間思ってて。経験年数が下だから仕方ないと言えば仕方ないけど。
年数が足りないなら時間だけはと、帰りも最後まで残る毎日だった。
やってもやっても埋まらないみたいなものが、心までいつも穴を開けていた。
高校は大好き、部活も大好き、部活の友達もすんごく大好き。
好きだからみんなと一緒に頑張りたいのにへたくそでへたくそで、肺を鍛えるために走るといいとか言われて部活前に新聞配達したときまであって。
一瞬吹いた他の楽器の方が明らかに貢献できるとわかるくらい、トランペットの才能がなかったのに、楽器変更制度なんてなくて、吹奏楽はバランスだから、人数を合わせないといけないから、3年間向き合わないといけない。
ダメな自分を毎日突き付けられてた気分だったのかな。
それだけ頑張れば、卒業のときに顧問に「努力の人」と書いてもらえるくらい認められて(今じゃ信じられんw)そこだけは自他共に認めるで嬉しかったけど、やっぱり才能ってあるなって思う。
3年部活して後悔はないし、私が足を引っ張っていたとはいえ、辞めてもきっと賞を取れたとは思わないから、とにかく頑張る経験とか青春とか友達とか、得たものしかない。やってよかったことしかない。
でも、才能がないことであんなに頑張るのはもういいやって思う。
あまりにも伴わないし、何よりも自分を好きになれない。
「頑張ってる自分」はせめてもの支え程度で、好きではなかった。
頑張らないで力を抜こうとする今の自分の方がよっぽど好き(笑)
本当はそうやって、力を抜いて出せる音と音を重ねて、奏でることができたら最高に心地よい音楽になるのかもしれないな、なんて思う。
そういう世界が広がるよう、私は肩の力を抜いていたいな。
追記
こんだけ才能がないと言っていながら、受け止めきれず、ずっとトランペットを諦めきれなかった私がいた。縁があり社会人になってからも触る機会があったりして、上手くなりたい気持ちを捨てきれなかった。
でも、最後にと思って、定期演奏会のOB演奏に卒業から8年後、参加した。
結果はやっぱり、へたくそだった。
明らかに才能がないことをやっと心の底から受け止められて、それ以来トランペットに触るのは辞めた。
やっぱり気が合わなかったか、私たち。
トランペットも私も、きっと別の相手の方が幸せだな。
って微笑みながら、まるで恋人のようにさよならしたのだった。
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