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父がマラソンに出た

父はたしか64歳くらい。

「会社でマラソン出ることになったんだって、無茶だよねえ」

そう言ったのは母だった。


父は軽い脳梗塞を2回やっており、母が心配する気持ちもわかる。
今は肉体労働をしているとはいえ、こんな寒い冬空の下10kmも走るのは私の年代だってきちんと準備しないと大変だ。


「倒れたらどうするの、危ない」

そう繰り返す母に私は苛立ちを覚えた。
父も「やかましいなあ、ちゃんと準備してるよ」「会社で走るんだからしょうがないだろ」とイライラしてきた。

「しょうがなくないわよ、いくつかわかってるの~…」


「うるさい」

「なんでお母さんは応援できないの?」
「心配する気持ちはわかるけど、お父さんは走るって決めたんだから"無理はしないでね"とかだけ言えばいいじゃん」
「なんで人が頑張ろうとしてるのにやる気なくさせるようなこと言うの?」
「やってみないとわかんないじゃん、それを無理だ無理だって、聞いてて嫌になる」


私は我慢できず矢継ぎ早に言葉を放った。

言いながら気づいた。

あぁ、父と自分を重ねているのだな。と。


「無理だ」までは言わないまでも、母は「心配」の言葉で気持ちを縛り付けてくることが多々あった。

「心配」と「信頼」は違う。

そう何度も言ったが「心配するのは当然」と返されるので、もう言葉で言っても無駄だなと思っていた。



そんな中の父親のマラソン。

頑張ってほしいと思った。心配せずとも、ちゃんとできるんだぞと母に示してほしかった。





そんなやり取りもすっかり忘れていた今日、家族LINEに通知が。

「今日は我が家の大黒柱お父さんが10km初参加しますよー♪」と母から。

父は寂しがり屋。でも、こんなとき4人も兄弟がいながら反応するのは姉と私くらいだ。

いつも通り姉と私が反応すると

「ゆっくり走るわ」と父から来た。



しばらくして父の通知

「がんばった」


姉と私が拍手のスタンプを返す。


1時間20分 △最低ライン
1時間15分 〇目標
1時間10分 ◎できたら結構すごい
だったので1時間1分は☆(✌)


と来た。目標どころか、自分にしてはかなりいいタイム!すごいでしょ!
という雰囲気の満足げな父が想像ついた。



ほら、大丈夫じゃん。

そう思って自然と笑みがこぼれた。

今回のことで、少しでも母が何か感じたらいいな。


お父さんお疲れさま。ありがとう。



※こんな話をするとよく勘違いされるのですが私は両親大好きで尊敬しています。母のこういう点は嫌だけど母は嫌ではありません。
たまにそこを勘違いして母自体を否定されることがあります。
1面が嫌だから全面嫌とか、私はないですので親の面ではなく全てを悪者のようにするのは嫌だと、ハッキリ書いておきます。

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