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正義と善

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記事一覧

形而上学的な『正義と善』と政治的な『正義と善』

サンデルの仕事
それまでアメリカの中心的政治主義であったリベラリズムを批判
コミュニタリアニズム(共同体主義)や共和主義の重要性を主張

【これからの「正義」の話をしよう】
『正義と善』に関わる思想を大きく6つ提示

・功利主義(ベンサムなど)・リバタリアニズム(ロスバードなど)
・リベラリズム(ロールズなど)・コミュニタリアニズム(サンデルなど)

そこに追加してカントの道徳論、アリストテレスの

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トロッコ問題と古典功利主義

【トロッコ問題】
アリストテレスの倫理学専門、現在の徳倫理学の基礎を築いた一人
フィリッパ・フットが提唱した思考実験

5人を殺してしまうぐらいなら1人を犠牲にしてもかまわないのか
本来は死ななかったはずの1人を助けるために5人を犠牲にするのはかまわないのか

功利主義
『その決定の全ての利益を足し合わせ、全てのコストを差し引いたときに
その決定が他の決定よりも多くの幸福を生み出すならばその決定は

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幸福は数値で表せるのか

ベンサムの【総和主義】
人の快楽を量的に数値化できるという立場から
【量的快楽主義】と呼ばれることも

これに反論したのがイギリスの政治哲学者
ジョン・スチュアート・ミル
「快/苦には量には還元できない質的差異がある」

「満足した豚であるより、不満足な人間である方がよく
 満足した馬鹿であるより不満足なソクラテスである方がよい」

【質的快楽主義】…
単純な欲を満たすよりも
知的な好奇心や想像力

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リバタリアニズム(自由至上主義)

『他者の身体や、正当に所有された物質的・私的な財産を侵害しない限り
 各人が望む行動は基本的に自由である』

リバタリアニズムにおいては、社会全体の幸福ではなく
個人の自由を徹底的に重視
(それが最終的に社会全体の幸福に繋がる)

あくまでも自分の身体や所有物は自分自身に所有権があるため、
例えば自分の身体を国家が強制的に利用する徴兵制に反対する

徴税は私有財産権を侵害していると考えるため福祉国

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カント まとめ

批判=kritik
ギリシア語で「分ける」という意味
クリノーという言葉に由来

ヒュームの問題点
『ヒュームの警告こそが、独断のまどろみから私の目を覚まさせ、
 私の探求にまったく新しい方向を示してくれた』

理性は知識や経験が束になって作り出されたものに過ぎない
→なぜ人間同士で共通の認識を共有できるのか

人間の認識は確かに経験の束と言えるが
その経験や知識を受け取る方法には
先天的に特有の

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ロールズの正義論とリベラリズム

アメリカの政治哲学者
1971年【正義論】

前提として『多数決では真の平等は実現されない』と考える
各個人はそれぞれの利害・道徳観・宗教的信条・社会的地位を持っている
このような状況においてなされた契約——法律、憲法など——
それ自体が道徳になることはありえない

カントも同じように考えていた
ロックをはじめとする社会契約論者は『合法的な政府』を
『人々がどこかの段階で自分たちの生活を律する原理

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道徳的恣意性(努力は才能なのか)

サンデルは『契約が道徳的な圧力を有する条件』を
【自律性】と【互恵性】に求めた

互いが真に自分の意志で契約を結ぶ【自律性】
相手から得た利益に報いる義務である【互恵性】

この二つが満たされている場合、契約と道徳は一致する

しかし実際の契約のほとんどはこの二つの条件を有していない
自分が生きる国の憲法や法律に同意した覚えがないと考える人は多い
契約を結んだからといって、それが正当な条件を満たし

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アリストテレスの目的因

ロールズは正義を平等な世界に求めた
一方、アリストテレスは正義を平等なものだとは考えない

正しさを定義するためには、問題となる社会的営みの【目的因(本質)】を知らなければならない
また、正義は名誉にかかわるものなので、ある営みの目的因について考えることは
少なくとも部分的にはその営みが賞賛し報いを与える美徳とは何かを考えることであるとする

例)笛の分配
  良い笛があったとして、その笛は誰の手

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コミュニタリアニズム(共同体主義)

サンデルはロールズの『無知のヴェール』による仮想的契約に2つの批判点を見いだす

①正義と善の関係ロールズは善よりも正義を優位に置いていた
正義…『正しいこと』または『それぞれが合意したルールによって
   正しく問題解決されること』
善…『特定の個人や社会にとって、自己をより幸福にしてくれることや
  その状態』

ロールズはそれぞれの善は多様なのでそれを元に社会のルールや法を定めるべきではない

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