リバタリアニズム(自由至上主義)

『他者の身体や、正当に所有された物質的・私的な財産を侵害しない限り
 各人が望む行動は基本的に自由である』

リバタリアニズムにおいては、社会全体の幸福ではなく
個人の自由を徹底的に重視
(それが最終的に社会全体の幸福に繋がる)

あくまでも自分の身体や所有物は自分自身に所有権があるため、
例えば自分の身体を国家が強制的に利用する徴兵制に反対する

徴税は私有財産権を侵害していると考えるため福祉国家にも否定的

サンデル『リバタリアンは人間の自由という名において制約のない市場を支持し、政府規制に反対する』

リバタリアン的思想にはジョン・ロックが提唱した
自己所有権と労働所有権の原理が根付いている

1,この世界にある全てのものは全ての人の所有物である
2,ただし、自分自身は自分の所有物である
3,さらに、自分自身の労働によって生産されたものは
  その人の所有物である

このことからリバタリアンは自傷的行為を行うものを保護する法律に反対
サンデル『パターナリズム(父親的温情主義)の拒否』

第三者に危害が及ばない限り、
また自分で医療費を払える限りにおいては
国家にそれを制限する権限はない

道徳的法律も拒否
多数派の持つ美徳の概念で自由を制限するのは不当
例えばトランスジェンダーにおける婚姻の問題などには
国家が不当に介入してはいけない
売春などを取り締まる規制に関しても
それが当人同士の合意を含む行為であれば
それを阻む法律は正当なものとはなり得ない

サンデルはリバタリアンの政治的立ち位置について
『リバタリアンの哲学は政治勢力図の上に
きちんとした位置を持っていない』と表現

しかし、アメリカでリバタリアン党を創設したデイヴィッド・ノーランは
リバタリアニズムの立ち位置をノーランチャートとして提示

リバタリアニズムでは経済的にも個人的にも自由を重視
『経済的自由』…市場における国家の介入の度合い
リバタリアニズムにおいては自由放任主義(レッセフェール)の思想のもと
市場への政府の介入を一切否定
自由競争こそが市場の向上に繋がり、
ひいては社会全体の利益に結びつくと考えており
市場で起こる諸問題は政府の介入や規制が引き起こしているとも指摘

一般に【リベラリズム】も自由主義と認識されるが
リベラリズムにおいては市場への国家の介入を認める
つまり市場の自由は軽視される傾向にある

このことからリベラリズム(自由主義)と混同しないために
リバタリアニズムを【自由至上主義】と呼称される

リバタリアニズム批判

政府の介入を認めないということは、社会的弱者を切り捨てるということに
自己責任論を盾に、社会的弱者は自分自身に問題があるとして
社会全体で助け合うことを放棄しても良いのか

道徳の観点からの問題
リバタリアニズムの思想に則ると
当人同士が合意した臓器売買、自殺幇助、合意による食人など
これらの行為が合意したもの以外の自由を侵害しない場合
第三者がそれを禁止することは自由の侵害であると主張できてしまう

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