創作ホラー①『これがくるんよ』

これは私が最近よく見る不思議な内容の夢を忘れないうちに書き留めたメモを元に書き起こした不思議な記憶の話です。

心地よく揺られながら目を覚ますと、そこは現実で見た覚えのない路線の車内だった。
時折通過する駅のホームを見る限り、どこか近未来的だが埃っぽい。詳細は知らないがハリーポッターが乗っている機関車みたいだ。

隣に座っているのは母で、落ち着かない様子で周囲の様子を伺っている。
周囲にいる人々は少し言い方が悪いがホームレスか日雇い労働者のような薄汚れた格好の人ばかりだ。例に漏れず、私と母の服装も薄汚れている。

状況は全く理解できなかったが、母に今この場で一から説明させるにはまずい状況だということは空気で理解できていた。
そうこう考えるうちに目的のホームに車両が到着し、乗客が一斉に降りた。
大きめのホームの改札を抜けると、古風な民家が立ち並び遠くには山が見えていた。

駅から出てすぐにバス停があり、私たちは列を作って並んでいる。前にいるのは「栗田」と書かれたヘルメットを被って薄ら髭を生やした小太りの男。

後ろにいるのは小柄だが目鼻立ちがくっきりしていて程よく日焼けした肌から色気を醸し出すハンサムな男。どちらの男も同じような作業服を着ている。ハンサムな方は工具を入れたカバンに「沢村」とネームタグがついている。

周囲の人々を観察しているうちに前方からバスが来た。そしてふと後方に目をやるとこれまでなかったはずの物(?)があり目を疑うことになる。

バス停には道路に面して腰より少し高いくらいの塀があるのだが、その物体は塀の上にあった。
全身を包帯に巻かれた体長2.5m〜3mほどの人型の物体である。両目だけがほつれた包帯の隙間から見えており、煤に汚れて白目だけがギラギラと輝いていた。

周囲の人々の様子から察するに先ほどまでなかったそれは誰かが今しがた運んできたようだ。珍しいことではなく、日常的なことのようだ。

バスが到着し、自動でドアが開き、列を成していた人々が順番に乗り込む。バスの内部を見ると送迎バスのようなタイプだった。私と母は栗田の後ろの席に座り、その後方には沢村が座った。空席はポツポツとあるものの、それなりの混み具合である。列の最後尾の乗客が乗り込んだあと、バタバタと駆け込みで乗り込んでくる者がいた。

白いタンクトップ1枚で目がギョロッとして、異様に肌が黒く、枝のように細い手足を下3人組の男が例の包帯を巻いた人型物体を抱えて乗り込んできたのである。だがそこで運転士は

「お客さん、満席です。今日はそれは乗せられません。」
割と前の席で補助席を広げてしまっていたこともあり、タンクトップの男たちが座る場所はあっても物体を寝かせるスペースはなかった。
タンクトップの男たちは顔を見合わせてからもぞもぞと聞き取れない言葉を吐き捨て、物体を持って降りていった。男たちは少なくとも日本人ではなさそうだ。

乗客たちの様子を伺うと、悟られないようにはしていたが車内には安堵の空気が立ち込めていた。

後方に座っていた沢村と私の目が合った。
「油断してたらこれがくるんよ」
私たちがこれから向かおうとしている場所と関係があるのだろうか。バスの後方に目をやるともう謎の物体を抱えた3人組の姿はなかった。

その後バスの走行中に窓の外に目をやったときに気づいたのだが、3人組はバスの外側から天井部分に張り付いていた。

ここで夢の記憶は途切れている。

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