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【感情紀行記】良心と付和雷同

 ある一般教養の授業、番号を打つと出席になるシステムであった。授業の途中、一時間が経過したあたりで番号が提示される。

 授業開始から数週間、番号が提示されて、5分間の休憩となった時、窓際に陣取っていた数人が荷物をまとめて席を立った。数人が席を立ち、外へと出ていったのを見て、数人が同様に帰宅した。教授が熱心な生徒と会話しているのを良いことにどんどんと逃げるように帰宅していく。以前からこのような光景はあったものの、さすがにこのレベルでの退出は初めてであった。逃げるかの如く走り去り、周囲を巻き込んで退出していく。真面目そうな人も、元々は帰宅する気のなかった遠くにいた者も。

 教授の哀愁漂う目が悲しかった。彼らには、目先の利益と退屈から逃れることしか見えていない。昔から自分は、相手に思いを馳せすぎて苦しくなることが度々あった。特に年老いた人や、他の人から目を向けられていない人へはよく感じていた。年齢が上がるにつれて、少しずつ無視や、見て見ぬふりを覚えてしまった。しかし、そんな自分も、教授のあの目とそこから感じる感情を汲み取れたことが嬉しかった。教授は、なぜこのタイミングで退出し、帰っていくのか、原因も理由もわかっているのだ。そんな悲しいことはない。日本人は、周りを見てついていくことがよく習性として語られるが、よく考えて一度立ち止まってみるのも良いかもしれない。良心に語りかけ、大衆に騙されないようにしたい。

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