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#33 またいつか、同じ世界で逢う日まで

ねえ、聴こえてる?

太陽が明るい昼間のうちは
眩しすぎて見えないだけで、
月明かりになら照らされて
ほんとは一瞬視えるのよ

リボン結びが得意になって
なんでも結んでいるようだけど
背中のリボンはまだまだね。
エプロンが斜めに傾いている。

オムライスはね、卵を3つ
ふわふわとろとろに包むには
2つじゃちょっと足りないの

ねえ、届いてる?

風はからだを吹き抜けるけど
ちゃんと干渉しているの
カーテンを揺らしたのはわたし
ちゃんと見てくれていたかしら

テレビを見ながら笑っているのに
ソファの隣を見るのはやめて
そこには誰もいないのよ

冷蔵庫のプリン、
食べて良いっていったのに
賞味期限はとっくに切れてしまってる
だから早く捨てましょう

ねえ、気づいてる?

あなたの隣に
もういられないってこと
今更気がついたことだけど
世界は悲しくも残酷で
真っ二つに別れてしまう

面倒だった掃除も料理も洗濯も
あなたのお世話もなにもかも
こちらの世界の片隅で
見つめることしかできないの
今はただ、ただ焦がれるしかない
あちら側

手と手を合わせ触れ合えることが
どれほどの
これ以上ない望みでしょうか

ねえ、覚えていてね。

一緒に歩いた帰り道
静かな夜の寝息とか
鼻をくすぐるいい匂い

花瓶の花はあなたの好きな色にして
食べたいご飯を食べていい
あなたの行きたい場所に行き
あなたの選びたいものを選んでね

あなたの記憶に残れたことが
この上のない喜びだから

ねえ、あなたの未来をわたしに見せて

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