随想


絵を見たり、写真を見たり、もちろん、弾いたり。親友からもらったTシャツを着て詩を書いたり、写真を撮ってみたり、夏から秋は色んなことをまずは試みる期間にあるみたいだった。
つらいこともあったりして、塞ぎ込んで何もできない状態から起き上がって、余計なお酒を飲んだり、眠るために走ったり、ついつい手が伸びる体に悪いもののお世話にもなった。けれども、そうしているうちに、思いがけない出会いが不思議な刺激を与えて、私を舞台に立たせ、時にワイヤー入りのブラジャーを着けさせたり、花の香りを嗅いだり、毛足の長い犬を撫でさせたりする。そうしているうちに冬も深まってしまったのだった。

外は雪景色。
何か生み出そうとするとき、強くなっているとか、頑張っているとか、必死であるとか、そういうはげしいものではなくて、もっと静かでなめらかで、ただ良い気分を手に入れているような、そんなような時が調子の良いときであるらしい。
だから世の中の不安定さ、自分の機嫌、気圧の変化、都会の喧騒、電車の中の温さ、悪夢に張り付くキャミソール、悴む指先、誰かとのキス、そのほか気になること全部を同じ空間の中に抱きしめておきたい。いやなことがあるとすれば、その時は潔く頭から食べてしまう。それらに当てはまらないような、行き場のない、得体の知れない不安はどうしよう。だいたいそういう不安は足が早いので、何か生み出すことにサッサと使ってしまおうか。
本当につらいことは大事に包んでおく。少しして、そっと包みを開いてはまた封をする。もう少ししたらまた開いて、ちょっと舐めてみて顔を顰める。そういうこと繰り返していると、その苦味が段々クセになってきてそれが好きになると思う。

22年1月12日

この記事が参加している募集

#眠れない夜に

69,218件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?