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無題


誕生日に友人から貰ったワインのラベルには猫がいる。黒い毛皮に大きな瞳がじっと見つめてくるのだ。
あまり強くないから普段は飲まないようにしているのだけれど、明日や今日のお風呂とかのわずらわしいことを全部考えずに、ワインやら美味しいビールやら、こってりしたオリーブを美味しい美味しいと好きなだけ口に入れたい。
なのに、いざそうしたら自分を制限できない自分への悲しみに似た怒りがふつふつと湧き上がってくる。
酔っ払うと自分とかけ離れたような感じのする女の顔が鏡に映る。気の置けない女に泣きついたり、好きでもない男に甘えたり、普段青い顔が真っ赤になって、どろりと澱んだ目であははと笑ったりするのが嫌だ。

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