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ベタなサスペンス・ドラマ

はじめに

この前の記事で、「ベタな恋愛小説」を書いてみた。

今回は「ベタなサスペンスドラマ」を書いてみようと思う。我ながら、ベタ過ぎるサスペンスになる予感がある。


短編 | 別れたい男・別れたくない女

(1)

 私たちは熱烈な恋愛の末に結ばれた。尊敬する父の反対を押しきって、私は和代と結婚することになった。
 当初は、まわりが羨むほどのおしどり夫婦として、順風満帆な生活をおくっていた。

(2)

 しかし、結婚して数年たった頃だったろうか?私は和代の異常な束縛に徐々に耐えきれなくなってきた。

「あらっ、英二郎さん、さっき携帯にかわいらしい女性から電話がありましたよ」

 私が風呂に入っているとき、たまたま新入社員の女の子から電話があったようだ。

「あぁ、新人研修のオリエンテーションのことだろう」私は正直に言った。

「あら、ほんとうかしら。新人の女の子があなたに、わざわざ電話してくるかしら」

「僕は断じて浮気なんかしてないよ」

「わたし、浮気がどうこうなんて言ってないわ。そんなことあなたから言われると、疑心暗鬼になっちゃうわ」

 こんな会話が最近毎日のようにつづいていた。

(3)

 私は和代を愛していた。ほんとうだ。だから、仕事が休みの日、和代と久しぶりにデートしようと思った。

「和代、今度、どこか行きたいところはあるかい?」

「そうね、ここから少し遠いけど、東尋坊なんてどうかしら。絶景らしいわよ。ついでに時間があったら永平寺にも行きたいわ」

「東尋坊か?あの崖は怖そうだな。でも一度くらい『柱状節理』を見ておきたいものだな。下から見上げる観光船もあると聞いたことがある」

(4)

 このようにして、私たちは、まだ少し冬の気配が残る春先に、東尋坊へドライブすることになった。

「いや~、この崖はすごいね。25mくらいはあるんじゃないか?なのに、柵1つない。落ちたら即死だね」

 後ろを振り向いた。和代は掃除でよく使いそうな、妙な棒のようなものを持っていた。

「和代、それはなんだい?」

「よくわからないけど、Matsui - Barと呼ばれてるらしいわ。これは、人を追い払うために使うらしいの」

「おいおい、こんなところでMatsui - Barを振り回したら危ないじゃないか」

(5)

「あなた、私と心中しませんか?」
和代はハッキリとそう言った。

「冗談じゃない。なんで死ななくちゃならないんだ?」

「私たちの愛を永遠のものにするためよ」

 ここで、脳裏に「マドンナたちのララバイ」が流れ始めた。

「俺は死にたくない。死にたくない」と叫んだ。

(6) 

 その時である。私は目覚めた。どうやら、仕事から帰ってきてそのまま寝込んでしまったようだ。

 目を開けるとそこには、「Matsui-Bar」を持った和代がニコニコしながら立っていた。

おしまい


 これも、ベタ過ぎるサスペンスになってしまった。サスペンスドラマと言えば、必ずと言っていいほど「崖」が登場する。東尋坊あるいは屏風ヶ浦を想起する。
 サスペンスというか、ホラーに近くなってしまった。


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