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エッセイ | たいした秘密じゃない!

 自分ではトップ・シークレットだと思っていても、他人にとってはどうでもいい秘密というものがある。例えば、あなたの恋愛遍歴とか、今、誰が好きなのかとか。

「オレ、○○ちゃんのこと、スキかもしれない」
「アタシ、○○くんのこと、すごく気になってるの」

 こんなこと言われたって「はぁ、そうですかぁ~」とか「誰が誰を好きなっても、そりゃあ、自由ですわな」としか思わない。けれども、「どうでもいいんだけど」とはなかなか言えず、まったく興味がないのに、あたかも興味があるようなフリをしなくちゃいけないのはつらい。

「え~、うっそー、マジかぁ~」
「お似合いのカップルになると思うよ」
「そういうタイプが好みなんだね」

 なんかこういう、歯が浮いたようなセリフは言いたくない。
 ここはやはり、自分の気持ちに正直に、あまり興味がないことを仄かに匂わせつつ、相手を傷つけないような言い回しをしたいものだ。

「へぇ~、そうなんだ」
「ふふふ」
「ごちそう様でした」


 本当に面白い恋愛というものは、秘密にしようと思ったって秘密にできないような恋愛だ。

 理性的には破滅しかないと分かっていても止められないないような恋。
 家族を破壊するような不倫、全財産を失うような身を焦がす恋。
 まわりからどんなに迫害を受けても、迫害されるほどにハマっていくような恋。

 私にはそのような思いがあるから、私の好む小説は、ハッピーエンドとは言えないエンディングの小説ばかり。

 書き方がうまいな、と思いつつ、ジェーン・オースティンの小説を私は好まない。
 好きな恋愛小説は、「椿姫」「マノン・レスコー」「ジェーン・エア」「女の一生」「白痴」「テス」「居酒屋」のような、不幸な女性が登場する物語。

 不幸を望んでいるわけではないし、他人の不幸を喜ぶわけではないけれども、不幸が人生に輝きを与えることは多い。

 夜空に輝く星も、闇があるから輝くことができる。燦然と輝く星ほど、そのまわりは深い闇に覆われている。


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